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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
ブレンダムにて
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ブレンダム防衛作戦〈その4〉

 リンネが数体の魔獣を一掃した頃、ブレンダムの上空ではレオンが巨大ゴーレムを相手に戦っていた。

 壁のように反り立つゴーレムの胸部をレオンが駆ける。

 己の体を駆けずる蠅を押しつぶさんと迫りくる平手に対し、レオンは短剣でそれを迎え撃つ。

 一見すると既に決しているようにも思えるこの勝負が意外にも五分の様相を呈しているのは、この短剣に理由があった。

 短剣がゴーレムの手にぶつかるその瞬間、刃の先端が光り、爆ぜる。

 ゴーレムの手の一部が瓦礫のように崩れ、その中からレオンが顔を出す。

 妨害によって勢いをなくしたレオンは蜘蛛のように胸部に張り付き、肩まで登って態勢を整える。

 その間にゴーレムも散らばった瓦礫を魔力によって集め、一度破壊された手を修復していた。

 先ほどからレオンとゴーレムはこの一進一退を繰り返している。

 レオンがコアに向かい、ゴーレムがそれを妨害。

 このままいけば先に体力が尽きるのは人間であるレオンの方なのは明白であった。

 足を破壊し体勢を崩す手も試したが、なかなかどうしてゴーレムの修復速度が早くコアを壊すには至らない。

 万事休すにも思えるこの状況下であったが、レオンは一切の希望を捨てていなかった。

 リンネが術者を対処してくれることを信じて疑っていないからだ。

 であれば、レオンはそれまでの間、ゴーレムを釘付けにすることで被害を最小限に抑えればいい。

 仲間を心から信頼しているからこそ、レオンは『狂戦士化(バーサーク)』を切らすこともなかった。


――頼んだぞ、リンネ


 レオンがコアに向かって再度突撃を仕掛ける。

 その瞳に、一切の曇りはなかった。




 一方その頃、ドグマ達と共に避難していたベルは、町民たちを一度安全な場所に誘導していた。


「落ち着いてください! 走らないで!」


 騒乱の中、逃げ惑う人々。

 その人ごみの最中に一点、ベルはなにか違和感を覚えた。

 再度周囲を見渡すと、思い思いに喚き惑う人々の中に一人、巨大なゴーレムを凝視し続けるドワーフが一人。

 最初はゴーレムが恐ろしくて見ているのかと思ったが、どうにも様子がおかしい。

 あまり身なりが整っているとは言えないそのドワーフは、ゴーレムの動きに合わせるようになにかブツブツと呟いているようだった。

 その時、ベルの脳裏にリンネの言葉が思い起こされる。


『ゴーレムの術者を探してる。術者さえ倒せばゴーレムは止まるはずだから……』


――ゴーレムの術者


 ベルがもう一度、件のドワーフを見やる。

 彼の口の動きはまるでゴーレムに指示を出すように、なにやら呪文を唱えているように見えた。

 恐らくは、間違いない。

 確信を得たベルは、ドワーフに悟られないよう人波に紛れて近づく。

 一歩、一歩近づくごとにベルの心臓の鼓動が早まる。

 ブレンダムの町のためにも、仲間のためにも失敗は許されない。

 ベルがドワーフの背後に立つ。

 ドワーフの意識はゴーレムに集中していて、ベルにはまるで気がついていないようだった。

 ベルの耳に呪文が聞こえてくる。

 まごうことなき現行犯だ。

 勇気を振り絞り、ベルは術者の肩に手を置いた。


()()やめてもらっていいですか」


 ドワーフは振り返りベルの姿を認めると目を見開き、ベルの腕を慌てて振り払った。


「わっ!」


 いくらハーフドワーフとはいえ、純血であるドワーフの力には敵わない。

 ベルは突き飛ばされ、地面に尻餅を着く。

 周囲の視線が二人に集中した。


「あ、う……く、くそっ!」


 ドワーフは明らかに狼狽し、その場から逃げようと駆け出す。

 しかしその逃亡も虚しく、術者はいとも簡単に御用となる。

 ドグマとその弟子たちが即座、退路に立ちはだかったのだ。


「お前……ギギルだな? 前に弟子入りして逃げ出しやがった……まだブレンダムに居やがったか」


 なにやら知り合いだったようで、ドグマが術者に話しかける。

 ギギルと呼ばれたそのドワーフは忌まわしそうにドグマを睨みつけた。


「う、うるさい! 僕がこんな町にいつまでもいるわけないだろ。帰ってきたんだよ! あのお方と一緒に町を壊すために!」


「なに……?」


「低能なお前らと違って、あのお方は僕の才能を認めてくれた! あのお方に生涯を捧げると誓ったんだ僕は!」


 このギギルという男は狂ったようにまくし立てる。

 その眼は明らかに焦点が合っていなかった。


「何を言う。わしはお前に才能があったからこそ……」


「黙れ黙れ黙れ!! もう遅い! 終わりなんだよ、なにもかも……」


「まずいっ!」


 底知れない恐ろしさを察知したベルが急ぎ立ち上がると、ギギルに飛びかかる。


――間に合え!


 ベルの思いも虚しく、無情にもギギルの口は最後の呪文を、たしかに紡いだ。


「みんな死ねばいい……『核崩壊(コア・ブレイク)』」


 ギギルが唱えた瞬間、ゴーレムの胸部から発せられた紫の光がブレンダムの町全体を包み込んだ。


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