ブレンダム防衛作戦〈その2〉
「リンネさん!」
ベルは群衆の中を搔き分け搔き分け、リンネのもとへと進んでくる。
先程まで不安でいっぱいだった彼女の表情には、いくらか安堵の色が浮かんでいた。
「ベル! よかった。無事だったのね」
「はい、なんとか。いったい何が起こってるんですか? レオンさん達は……」
ベルがそこまで話したところで、視界の端の巨大ゴーレムが急にその動きを変える。
見れば、その体の上には人型の影が見えた。
「レオンならあそこでゴーレムと戦ってるわ。ララとビーディーも、それぞれ敵と戦ってる」
ララは目を見開く。
自分のいない十数分の間にそんなことが起こっていようとは思いもよらなかったのだ。
「なっ、なんでそんなことに……!?」
「わからない。敵の狙いもまだ……ただ、ブレンダムの町を壊そうとしてるのは間違いないわ。それで、私はゴーレムの術者を探してる。術者さえ倒せばゴーレムは止まるはずだから……」
「お嬢ちゃんら!」
二人が話してると、知った声で呼ばれる。
声のした方を見ると、思った通り。
そこにはビーディーの鍛冶場まで案内してくれた老ドワーフ、ドグマが数人の男たちを引き連れていた。
「ドグマさん!」
「おう。それでお前さん、なんか知ってんのか」
先程までの話が少し聞こえていたのか、ドグマはあくまで冷静にリンネに尋ねる。
「はい。ブレンダムの町は今、正体不明の敵から襲撃を受けています」
リンネの答えを聞いて、ドグマの弟子らしき男達の間にどよめきが拡がる。
「静かにせぇ!!!」
口々に不安を漏らしていた男達に対し、ドグマが一喝する。
すると、動揺の波紋は瞬時に収束した。
ドグマの人望あってこそ為せる業に、リンネとベルは感心を覚えた。
「わかった。それで、わしらに出来ることはなんかねぇか?」
「は、はい。それなら、この集会所に町の皆さんを誘導してくださ……」
そこまで言って、リンネは違和感を覚える。
“奴”による計画された襲撃にも関わらず、集会所の辺りだけが安全。
それは、あまりにも――
――おかしい
「逃げて!!!」
「え?」
リンネの叫びとほぼ同時に、ほど近い崖が崩れ落ちる。
周囲に拡がった砂埃が晴れた時、そこに見えたのは数体の魔獣であった。
「ベル、町の人たちと一緒に今すぐここから逃げて」
「リンネさんは!?」
「決まってるでしょ」
半ば悲鳴のようなベルの問いに、リンネは軽く笑ってみせる。
その笑顔は美しく、どこか残酷で。
ベルは背筋が凍るような感覚を覚えた。
「殺すのよ。一匹残らず、ね」




