表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
ブレンダムにて
42/115

交換条件

 ビーディーの鍛冶場は外観通りの悲惨な有り様だった。

 辺りには酒樽が散乱し、壁の塗装はところどころ剝がれてしまっていた。


「それじゃあワシはそろそろ帰るよ」


 そう言って老ドワーフは中に入らなかった。

 ビーディーはそれをからかうようにニヤリと笑った。


「なんだよじじい、せっかくならゆっくりしていってもいいんだぜ?」


「こんな汚ねぇとこに居られるかって言ってんだよ馬鹿が」


 それに対して老ドワーフが悪態をついてみせる。

 きっと二人は仲が良いんだなとリンネは思った。

 だけどそれを言えばこの人たちはきっと認めないだろうから、余計なことはなにも言わないことにした。


「ふふ」


「? リンネ、なんで笑ってるの?」


「ううん。なんでもないわよ」


 リンネがなにも教えてくれなかったので、ララは首をかしげるより他なかった。


「そうだ、あんたらにまだ名乗ってなかったな」


 思い出したように老ドワーフがレオン達に向き直る。

 たしかに、まだ名前を聞いてはいなかった。


「ワシはドグマ。今は引退しているが、これでも元鍛冶職人じゃ。ブレンダムの入り口近くにあるドグマ工房という店におる。なにかあれば気軽に来るといい。シンピの弟子ってんなら、ちっとくらいまけてやるからよ」


「ドグマさん! 何から何までありがとうございます!」


「なに、礼には及ばんさ。まあその馬鹿にフラれたら来な。うちの弟子に頑張ってもらうからよ!」


 ガハハと豪快に笑って、ドグマはその場を去っていった。




「それで、シンピの奴は元気か」


 適当に置かれた台にどっかりと座るや否や、ビーディーがそう尋ねる。

 あまりにも堂々と股を開いて座るので、レオンは少し目のやり場に困った。


「はい、元気ですよ」


「そうか」


 聞いてきた割に素っ気ない反応をして、ビーディーは懐から取り出した葉巻に火をつける。

 葉巻なんて高級品を嗜んでいる辺り、意外と金持ちなのかもしれないな、とベルは一人でに推察していた。


「んで、そのシンピの弟子があたしになんの用だ。あいつが寄越すからには大した用なんだろうなぁ?」


 レオンは一つ頷くと、古びた短剣を取り出した。

 ネクロマンサー討伐の際に報酬としてもらった、あの短剣だ。


「これを、打ち直して欲しいんです」


 ビーディーはそれを手に取ると、様々な角度から眺める。

 恐らくは値踏みしているのだろう。


「随分劣化が酷いが、こいつは……なるほどな。たしかにこいつはあたしにしか治せねぇかもしれねぇ」


「そ、それと、自分もいいですか?」


 おずおずとベルが手を挙げる。

 話し出す機を伺っていたようだ。


「その、もしよければ鍋と包丁を打っていただきたいんです。なるべくいいものを」


「お前、料理人か」


 ベルが頷く。

 するとビーディーは少しだけ考え込んでから立ち上がった。


「いいかお前ら。あたしが好きなものは五つある。金、男、酒、力、飯だ」


 そう言ってビーディーは、前に突き出した五つの指を一つずつ折っていく。


「依頼を受ける上で金を受け取るのは当然だ……だがそれだけじゃあ面白くない」


 ビーディーがニヤリと口角を上げる。

 それは、幼い見た目とは心底相反する怪しい笑みだった。


「あたしの欲を満たせ。それが依頼を受ける条件だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ