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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
追憶の中に
33/115

出発、問い


 旅支度を終えたレオンとリンネ、ララ、そしてベルはシンピに出立の挨拶をしていた。


「長い旅になる。気をつけろよ……特にベルをちゃんと守るようにな」


「はい。ベルが危険な目に遭わないよう気をつけます」


「私自身も充分気をつけるようにします。皆さん、ご迷惑をおかけしますがどうぞよろしくお願いします」


 ベルが頭を下げる。

 良い鍋と包丁が欲しいからついていかせてくれと頼まれた時はレオン達も驚いたものだが、この様子なら心配はいらないのかもしれない。

 ちなみに、ギルドを通した正式な依頼であるため、達成すればパーティーの実績にもなる。

 正に一石二鳥だ。


「それじゃあ、いってきます」


 そう告げて、レオン達は歩き出す。


「……まだみたいだな」


 終始リンネの方を気にしていた様子のレオンに、シンピは半ば呆れてため息をついた。


「頼むぞ、レオン」




「……なに?」


「え? ああ、いや……なんでもない」


 道中、レオンがチラチラと自分を気にしていることに、リンネは気づいていた。


――なんなのよ、こいつ


 「なんでもない」なんて言った矢先にまたリンネを見てくるレオンは、正直うざったい。

 気にしなければそれまでなのだが、地獄までついて行くと決めた相手だ。

 どうしても気になるに決まってる。


――戦闘中とは大違いね


 これ見よがしにため息をついてやると、レオンの表情は心配気なものに変わる。

 恐らく自分のせいだとは思っていないのだろう。


「レオンさん! レオンさんは何がいいですか? 晩ごはん。私、はりきっちゃいますよ~!」


「あー、晩ごはんか。そうだな……」


「私はステーキがいい。レオンもそうだよね?」


「す、ステーキはちょっと厳しいかな……? あ、でもでも~……」


 そんな二人を見かねたのか否か。

 さっきまでララと話していたベルが、レオンを会話に巻き込む。

 リンネは安心したような、だけどどこか残念なような、なんとも形容しがたい感情に襲われた。




 その日の夜は干し肉だった。

 ステーキとはまた違うが、ベルが上手く焼いてくれたおかげで、旅の途中とは思えないほどの食事ができた。

 簡単な天幕を張り、ベル以外の三人は一人ずつ順番に休息をとることにした。


「それじゃあララ、時間になったら声をかけるから」


「うん、お願い。遠慮なく起こしてね」


「わかった。ベルは明日に備えてしっかり寝てくれ」


「ありがとうございます。なんだか、私だけ申し訳ないですね」


「気にするな。ちゃんと報酬ももらうし、美味しいご飯だって作ってくれた。見張りは俺たちの仕事だ」


 レオンの「美味しい」という言葉に、ベルは嬉しそうに笑った。


「へへ……わかりました。それじゃあ、おやすみなさい。レオンさん」


「ああ、おやすみ」


 告げて、レオンは出入口の布を下ろす。

 振り返ると、リンネは木の根元で上を見上げていた。

 それは幼い頃、寝物語に聞いていた美しいエルフの姿そのもので、レオンはしばし見とれてしまった。


「……なにを見てるんだ?」


「星よ。星の位置で方角を確かめてるの」


「そうか」


 それきり、暫しの静寂二人を包む。

 聞きたいことはある。

 だけど、この静寂がどこかもどかしくて、心地よくて。

 なんとなく、黙り込んでしまっていた。


「……ねぇ」


 先に口を開いたのは、リンネだった。


「いいかげん話して。なにか言いたいことがあるんでしょう?」


「……! 驚いた……なんでもお見通しだったか」


「あれだけ見られたら誰でも気づくわよ。ばか」


「あー……そうか。すまん」


「それで? 何の用かしら」


「いや、その……」


 レオンは、本当に訊ねるべきか迷っていた。

 聞いてしまえば後には戻れない、そんな予感がして。

 だけど、シンピの憂うような顔が、どこか不安げな声色が、どうしても頭から離れない。


――だからやっぱり、聞くべきなんだろう


「なぁ、リンネ」


 レオンが真っ直ぐに、リンネの瞳を、その深い青を見つめる。

 シンピがレオンに、そうしたように。

 リンネもただ、真剣な眼差しで応えていた。


「……なんでそこまでしてくれるんだ?」


「え……?」


「リンネが俺の復讐に付き合うメリットはない……そうだろ? 無理しなくていいんだ。今からだってパーティーを抜けても……」


 そこまで言ったところで、鋭い音と痛みがレオンを襲った。

 はたかれたのだ。

 リンネに。


「……ごめん。だけど、それ以上言わないで」


 そう言うリンネの声からは悲しみの感情が伺えて、レオンは己の言葉に、小さくない後悔を覚えた。


「わかった……すまない」


「……あるの、理由」


 暗闇に落とすように、リンネはポツリと呟いた。

 レオンはただ、それを黙って聞いていた。


「私ね、家族がいないの」


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