分断
太陽は暗雲に隠れ、木々はやけに鬱蒼と茂っている。
まるで、森そのものがレオン達を拒んでいるようであった。
「この先です……行きましょう」
ごくりと生唾を飲み込み、シュンランが森に一歩を踏み込む。
レオン達もそれに続いた。
シュンランは木々の間をすり抜け、森の中でも特に整備の行き届いていない奥へと進んでいく。
元狩人のレオンとエルフのリンネ、そして半魔獣のララであったから問題はなかったが、通常の見習い冒険者であればついていくことすら難しかっただろう。
「たしか襲われたのはこの辺りです」
苔に覆われた崖の近くで歩みを止める。
その時、シュンラン以外の三人は崖の上に何者かの気配を感じた。
「シュンラン!」
一番近くにいたレオンがシュンランに覆い被さるようにして降ってきた大きななにかを避ける。
「だ、大丈夫ですかレオンさん!」
「ああ、俺は大丈夫……これは!?」
振り返ると、そこにあったのは一つの巨大な岩であった。
「ララ、リンネ! 無事か!?」
姿が見えない二人の名前を呼ぶと、岩の向こう側から返事が聞こえてきた。
「こっちは大丈夫よ!」
「それより上! アンデッドだよ!」
ララの声に上を向くと、そこには人型アンデッド兵の姿があり、レオン達に向かってさらに岩を落とそうとしていた。
「このままここにいるのはまずい! ひとまず二手に分かれて逃げるぞ! 森の入り口で合流しよう!」
レオンが叫ぶと、アンデッド達が岩を落としてくる。
「シュンラン、早くこっちに!」
「は、はい!」
シュンランの手を取り、崖から離れた場所へ向かっていると、遠くからリンネの応答が聞こえてきた。
「了解! 絶対無傷で戻ってきなさいよ~!」
「わかってる! そっちもな!!」
叫び、レオンは森の木々に紛れた。
「さて、ここまで来ればいったんは撒けただろ……シュンラン、怪我はないか?」
「はい、おかげさまで……ありがとうございます。その、ところで手が……」
「手?」
言われて目線を下げると、レオンはシュンランの手を握ったままだった。
「ああ、すまない。嫌だったか」
急いで手を離す。
レオンとそう年は変わらないのだろうが、シュンランと妹の顔がどこか似ているせいだろう。
なんとなく距離感が近くなってしまっていた。
――性格は全然似てないんだけどな
「あ、その、嫌ではないんですが……すいません。私、男の人に慣れてなくって」
「そういえば、女冒険者のパーティーって話だったもんな」
「はい。みんな本当のお姉ちゃんみたいに優しくしてくれて……だから、絶対助けたいんです」
――重ねるべきは妹じゃなくて自分の方だったか
「……そうだな。助けよう、絶対」




