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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
崩壊、そして
1/115

運命の日〈序〉

 森の中に、狩人がひとり。

 闇よりも黒い髪をなびかせる彼、レオンは、静かに矢をつがえる。

 狙う先は一匹の野兎。

 意識を集中させるため、静かに、されど大きく息を吸い込んだ。瞬間――


「――ああっ!」


 気配を感じ取ったのか、野兎は怯えるように逃げ出してしまった。

 思わず、大きなため息が洩れる。


「ばれてないと思ったんだけどな……」


 レオンが天を仰ぐと、それは既に赤みがかっていた。


「仕方ない。そろそろ帰るか……」



 ブレンダム山地の辺境にある小さな町、テディーレ。そこがレオンの住む町だ。

 レオンは幼い頃、妹とともに教会に捨てられた。だから、親のことはあまり憶えていない。


「よお、レオン! 狩りの帰りか? お疲れさん」


「はは……ありがとうございます」


 だけど、こうして気さくに接してくれる町のみんなのおかげで、さみしさはあまり感じなかった。

 だからこそ、レオンはテディーレの町が大好きだった。

 そして、そんな町のそのまた外れにある小さな教会の横。

 そこにレオン達の家はあった。



「ただいま……」


「おっ、兄ちゃんおかえり! ……家を出た時と同じ荷物ってことは今日も収穫なし?」


 帰ってきたレオンを出迎えたのは、レオンと同じ黒髪の少女、メル。

 彼女がレオンにとって唯一の肉親であり、なにより大事な妹だ。


「ま、まあな……だめな兄でごめんな、メル」


「ううん、気にしないで。兄ちゃんの分までアタシが狩るからさ!」


 そういってメルは胸を張る。

 それに対しレオンは「そうか、ありがとう」と返す他なかった。


 実際、メルが大口をたたいているというわけではまったくない。

 彼女はその並外れた身体能力を武器に、いつも好きな数の獲物をしとめてみせる。

 それに対してレオンは、獲物を狩ったことが一度もなかった。

 もちろん努力はしている。

 弓の腕や身体能力も、メルほどではないが優秀な部類だ。

 しかし、なぜかいつも獲物に逃げられてしまうのだ。


「……なんでかなあ」


「おや? レオン、どうかしましたか」


 ミスト神父が心配そうにレオンの顔を覗き込む。

 捨てられていたレオンとメルを拾い、育ててくれた恩人が彼だ。

 レオンもメルも、ミスト神父のことは父親のように慕っている。


「ああ、いや、なんでもありませんよ。それより、なんだか外が騒がしくありませんか?」


 レオンはふと、風に乗って聞こえてくる、叫び声のような音に気づいた。


「え? ああ、言われてみればなんだか騒がしいような……喧嘩でもしているのでしょうか。少し様子を見てきます」


 そう言って、ミスト神父がドアノブに手をかける。


「あのっ、俺も一緒に行きます」


 レオンはなんとなく嫌な予感がして、声をかける。

 だけどミスト神父は微笑んで、それを断った。


「ありがとう。だけど、大丈夫。少し様子を見てくるだけです。二人は、夕食の準備を進めておいてください」


 そう言い残して、ミスト神父はうす暗い外へと出ていった。

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