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膨大な魔力を持つ俺は、魔法の才能が無い  作者: そら
魔剣覚醒と闘技大会
37/37

暗躍と思惑

大変お待たせ致しました。

ごゆっくりお楽しみください(っ´ω`c)


 ―観客席・遮断フィールド内―


 闘技場の上空にとてつもなく大きな氷の塊が浮いている。


「な、なんだよ……あんな魔法、見たこともねえぞ。とんでもねぇ魔力だ……」


 まるで犬歯のように発達した八重歯を覗かせながら、クレスタが驚く。

 その疑問に答えるように、白髪の男が答える。


「あれは古代魔法……その中でも現代では使える者が殆どいないとされている超級古代魔法だよ。」


「ア?超級?」


 クレスタが怪訝な顔で白髪の男を睨みつける。


超級古代魔法(アルティムスペル)崩氷隆星(グランシャリオ)】……私が知る限り、氷属性最強の魔法ですよ……」


 男がモノクルを指で摘み、クイ、と上げる。


「……()()()()()()()、ですけどね」


 ニッコリと笑って、再び視線を戻す。


「……っ!!」


(こいつ、マジで何者だ……)


 クレスタが男へ警戒を強める中、イリーガル・ストレーが何が起こっているのか全く理解できないといった様子で、二人の顔色を窺う。つい先ほどまで、目の前の男によって眠らされ、記憶を覗かれていたのだが、目が覚めると、目の前の闘技場の中が見えなくなっていた。


「お前ら、いったい何を言い合っているんだ?アルティムスペル?それに、闘技場の中が全く見えないぞ!?どうなっていやがる……!」


「あぁ、()()()()()()()()()んだね」


 その言葉に、二人が反応し、ストレーが疑問をぶつける。


「選ばれる?どういう意味だ?」


「今、あの闘技場の中は、この【遮断フィールド】と似た結界に包まれている。彼らのは魔剣の力を発揮したもので、【完全固有結界(アスタライド)】と言うんだ。僕のこの結界は――まぁ、ちょっと違うんだけどね。視認できるのは、その戦いについて行けると、魔剣が選んだ者のみなのさ。要は、君の実力不足さ。このレベルで戦う資格が、貰えなかったという事だよ」


 言われて、ストレーは苛立ちを覚えた。目の前の見ず知らずの男に『お前は弱い』と否定された事に。そして、その説明に納得してしまった自分に。現に、自分以外には見えているのだ。自分と同じく、ヴェルト・ダンツァーと戦い、敗れたこの男(クレスタ)にも。


「……その資格とやらは、努力でどうにかなるものなのか?」


「うーん、どうかな。努力はもちろん大事だけれど、才能や適性なんかも重要だからね。一つだけ言うなら、君なら資格を有する所までは行けるんじゃないかなぁ?ふふ、まあ君次第、という事で」

「さあ、そろそろ決着のようだ。ふふ、どっちが勝つのか、楽しみだなぁ……!!」


 男は笑みを浮かべて、ヴェルトに視線を移す。チッ!と舌打ちをしながらも、クレスタもまた、戦いの行方を見つめるのだった。


 ―闘技場・完全固有結界内―


 血を吐いて崩れ落ちる二人。何が起きたのか理解する間もなく、次から次へとダメージを負っていく。

 グレドラードが発動した【崩氷隆星(グランシャリオ)】は、今も尚、ザクスを攻撃しており、反撃する余裕などありはしなかった。


(ならば、我に攻撃を加えている正体は一体……?)


 ザクスの背中を光の柱が僅かにかすめる。


「ぐあ、グウウゥ!!?」

『ぬぅ!!』


 すると、グレドラードもまた、背中に熱と強い痛みを感じる。


『ッ!!』


 ザクスの頭部に氷の塊が直撃すると、グレドラードもまた、その頭部から血を流す。


『チイィッ!』


 たまらず、グレドラードはグランシャリオの発動を停止させると、二人共にその場へ倒れ込んだ。


『ぐ、かふっ!……ザ、ザクス・クレイル、貴様、一体何をした?!』


 うつ伏せに倒れ込んだまま、問いかける。


「な、なにをしたか、か。フ……フフ、身を持って体感しただろう?」

「俺が受けたダメージを、そのままキサマにも与えたまでだ!!」


 フラフラと、立ち上がろうとするも、膝に力が入らずに再び倒れ込むザクス。その間も倒れ続けているグレドラード。


「【名も無き墓場(ロストロード)】の能力が、ま、魔力の流れを……阻害するだけだと思ったか?」


 頭から流れる血を拭いながら、ザクスが立ち上がる。身体能力の差が出ているのか、ヴェルトの身体を使っているグレドラードは一切起き上がる事が出来ないでいた。


「結界を破壊したことで、アスタライドの支配力が僅かに戻った。貴様の左足に刺さった剣の能力は魔力阻害、右足に刺さった槍の能力は、()()だ」


『グ、な、なるほど、な。手痛いしっぺ返しを、く、喰らった訳だ……』


 限界が近い。二人が作りだした完全固有結界が元の闘技場へと戻っていく。

 観客たちがざわつき始める。魔剣に認められ、且つ、素質が有る者にしか立ち入ることが許されない世界。会場の殆どの人間は、急に消えた二人が気が付けば瀕死の状態で現れ、困惑しているのだ。


「と、とは言え……まさかこの時代で【超級古代魔法(アルティム・スペル)】をあれだけの威力で放たれるとは、正直考えても見なかったぞ。フ、フフ、腐っても魔王という事か」


 よろけながらも、その歩みはグレドラードへと向けられる。


「いくらその身体の魔力量が膨大でも、この時代の枯渇した純魔力(マナ)で、あの威力は不可能だ。どうやったのか説明……は、無理そうだな」


 ヴェルトの身体が耐え切れず、遂に意識が途絶える。


「えー、しょ、勝者、<剣聖>ザクス・クレイル!!!!」


 戸惑いながら、実況が宣言する。全く状況が掴めていない観客たちは、無言で勝者を見送った。



 ―闘技場・観客席―


 決着を見届け、アメリアとランドルフは赤黒いフードの三人組を牽制する。


「さて、シスターちゃん。この後はどうする予定だ?茶でもしばくかい?」


「それも悪くないですわね。でも、残念ながらあちらの方の動きが気になるんですの」


「くっくっく。気の多いシスターだな。だそうだ!そちらのお返事はどーだい?」


 投げかけられた言葉に、中央の女――蘭が答える。


「うふふ、せっかくのお誘いだけれど、今日の所は遠慮しておくわぁ。どうぞ、お二人でごゆっくり、ね?」


「えーっ?少しくらい遊んでいこうよー!」

「そーだよ!あんなに楽しそうな試合を見せられて、私達、よっきゅーふまんだよー?」


 声や背格好からして、恐らく十歳程だろうか。女の両脇にいた子供達がキャッキャとはしゃぐ。

そして、とても十歳やそこらの子供が発するような物ではない魔力と殺気が跳ね上がる。


「ダメよ。帰りに玩具を見繕ってあげるから、それで我慢しなさい?いい子だから」


 蘭の一言で、二人は殺気を解除する。


「う……わかったよ」


 渋々、と言うよりは、恐れおののいた様子で、魔力を静めていく。


「オイオイ、今、そのガキ共を本気で殺すつもりだったな?」


「うふふ、私、聞き分けの無い子供は大嫌いなのよ。反抗されると特に、ね!!」


「ッ!!?待て!!」


 ランドルフが制止するも、とても間に合う距離ではなく、子供の首元に短刀が下ろされる。


 ギィィィン!!

 鈍い金属音が響く。


「っ!!……ふぅん」


 とっさの所で、蘭の短刀が弾き飛ばされた。


「まさか、ここで出てくるとは思ってなかったわよ?烙印番号(ナンバー)〇〇三七、ミーナ・ファレン!!」


「相変わらずね、蘭。変わってなくて安心したわ。心置きなくあんたを殺せるんだからっ!!」



 ―闘技場・遮断フィールド―


「やはり、現時点では<剣聖>が勝ちますか。さて……【現】」


 男が唱えると、赤い玉が現れる。


「く、オイ!!何をする気だ!?」


 ストレーが叫ぶ。


「ああ、もう君には用は無いんだ。もう帰っていいよ」


 男がストレーの方へ手を翳し、【解】と唱えると、ストレーの周りが遮断フィールドから元の客席へと戻っていった。


「……さて、クレスタ・グローリィ君。少しだけ、君の記憶を覗かせてもら――っっ!!」


 斬撃の気配を捉え、男が咄嗟に飛びのく。


「まさか、本当にここに結界が張ってあったなんてね」

「ふ、いい格好だな、『天裂蒼牙』のルーキー」


「……!!テメェらは!」


「おやおや、邪魔が入ってしまいましたか。さすがに二対一では分が悪いですね」


「安心しろ、俺一人で戦ってやるぞ?」


「君ほどの人物と刃を交えることが出来るのは光栄だけど、今回は引くことにするよ、シャルール・レオニス」


「クレスタ君、少し動かないでくれ……フッ!!」


 クレスタを縛っていた黒い霧が、退魔の剣(シューレ)によって無効化される。


「よぉ、逃がすと思ってんのか?」


 シャルール、フィンラル、クレスタが男を取り囲む。少し後ろで、観客を避難させ終わったストレーが剣を構えた。

 シャルールが一歩前に出て男に問いかける。


「貴様は何者だ?目的はなんだ?」


「全く、君たちは質問が多いなあ。ま、いいさ。名乗っておくよ」

「僕の名前はハルファス。目的はそうだなぁ……元魔王と元勇者について調べていた、って所かなぁ」


 ハルファスと言う名前を聞いて、フィンラルとシャルールが警戒を強めた。


「……貴方が、あの錬金術師、ハルファス……?」

「事実なら、尚更捨て置けんな。貴様の『興味』に、何人の犠牲者が出ていると思っている?」


「……いいかい?そして僕にとって、無知とは罪だ。探求心無くして人類の発展は無いのだよ」


 フィンラルが握る剣に力を込める。


「そんな理由が他者を弄んで良い理由にはならない!!」


 そんな中、クレスタだけが、別の言葉に反応していた。


「オイ、テメェ。今、元魔王と元勇者、って言ったか?」

「元魔王ってのは、ヴェルト(あいつ)の事なんだろ?あんだけの爆発的な魔力だ。容易に想像がつくし、俺も一度戦った身だ。驚かねーよ。だが、()()()ってのは、いったい誰のことだ?」


 全員の視線が、ハルファスへと向く。


「ははは、近いうちにわかるさ。ええと、そこの<抹消>さん」


 ハルファスがフィンラルを向く。


「<抹消>?」


「あー、うん。君はここで僕なんかに構っていて良いのかな?」


「……どういう意味だい?」


「君のお友達、反対側で何やら揉めているようだよ。なんて言ったっけ……?ミーア」


「――っ!!ミーナ!?」


 フィンラルが観客席の反対側の異変に気が付き、全速力で駆ける。


「ああ、そうそう、ミーナ・ファレン……って、凄い速さだなぁ」


 クレスタとシャルールが詰め寄った。


「俺の質問に、答えろ――よッ!!」


 クレスタの魔剣『獣爪風切(ダインスレイフ)』を振るうと、空気の刃がハルファスを目掛けて飛んでいく。


「【現】」


 ハルファスが唱えると、白い玉と黄色い玉が現れ、白い玉を地面に投げつけた。そのまま玉が割れるとハルファスの周りを防御障壁が包み込み、空気の刃が弾かれる。

 すかさずシャルールが背後から回り込み、剣撃を数回打ち込むと、障壁が破壊された。


「シイッ!!」

「シャアァ!!」


 二人掛かりで同時に切り込む。瞬間、ハルファスがクレスタへと一歩踏み込む。


「ハッ!俺の方が勝機があるとでも思ったか?」


 クレスタの方が速さでは圧倒的に上であり、ハルファスの動きを見てから一瞬で横へステップを踏みこむ。


「オラアッ!!寝とけぇ!!」


 クレスタの爪が振り下ろされる。が、その爪が捉えたものは、ハルファスではなく、黄色の玉であった。


 ズゴォォ!!と一気に煙幕が上がった。


「ぐっ!!なんだっ!?」


「先ほども言ったが、今回はここで引かせてもらうよ。今ここで君たちと戦っても、メリットは少ないのでね」


「チイッ!!」


 シャルールが【爆発(フレアー)】を唱えるも、不発に終わる。


「……魔力を遮る煙幕、か」


「クソッ!!待ちやがれぇっ!」


「待て!深追いは危険だ。それよりも……」


 シャルールが、客席の反対側を見る。どうやら、大きな動きも無いようだった。


「……何が起こっていると言うのだ」


「チ、面白くねぇ!!クソ!」


 悪態をつきながら、クレスタは闘技場内で気を失って運ばれているヴェルトに視線を送っていた。

更新ペースが下がってしまい、申し訳ありません。

いよいよ第一章も終盤です。

第一章でキャラクター出しすぎたなぁ、と少し後悔してます(;^ω^)

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