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旅立ちと初戦闘

 それにしても、たくさん本を読んだと思うよ。

 なんせ20万冊を越えてたからね。まあそれでも、3年ぐらいで全部読めたんだけどさ。あ、隠し部屋のは目に改造を施してからだから、全部読めたのは80年くらいかな?

 本当に色んなことをやったなぁ。色々、感慨深いものがあるよ。

 あの元家主の骸骨さんは、土の部屋に埋めてある。毎日墓参りをしたよ。三日でやめたけど。

 色んなことを学んで、色んな挑戦をして、色んな発見をした。その過程で死にかけたのは、ご愛嬌。

 人形だったころの、何倍もの時間をここですごしてきた。

 でも、そろそろお別れかな。

 もう私が、ここだけでできることは少ない。そろそろ、外に行くべきだろう。怖くないかと言われれば、嘘になる。けども、私はもっと色んな世界を見てみたくなった。それにせっかく異世界転移なんてのをしたんだ。私は、この世界に招かれたんだと思ってる。なら、その世界をちゃんと見てあげなくちゃ。

 大丈夫。300年も努力したんだ。魔法や魔術だって、かなりのものだと思う。


 それじゃあ荷造りをしよう。

 持って行くものは、この空間にあるもの全部。あ、さすがに土や骨は持って行かないけどね。

 どうやってそんな大荷物を持って行くかというと、時空魔法で亜空間を作って、そこに収納する。アイテムボックスとか、インベントリみたいな魔法だね。この魔法、亜空間を作るのはたいへんだけど、維持はそこまでじゃないから、かなり便利。

 すっきりしたなぁ。


 私が今いるのは、広間にある開かずの扉の前。ここから出る。

 埋まってて開かないんじゃなかったのかって?実は違ったんだなぁ。

 この空間、地殻変動で地中深くに埋まってるもんだと思ってたけど、少し違った。ダンジョンに取り込まれてたんだ。

 ダンジョンていうのは、まあ魔物がいっぱいいて、でも宝物がいっぱいあるっていうあれだ。

 中はほとんど別世界。山の中に入ったはずなのに、広大な海があったり。地面に潜ってたら空に出たなんてざらにある。

 古いダンジョンほど広大で、摩訶不思議な事象がおきやすい傾向にある。その理由は、長い年月の間に魔素、まあつまり空気中に漂っている魔力を蓄えているからと考えられている。ダンジョンには謎が多いらしく、本にも考察や推察などがほとんどで、確実な情報は少なかった。

 まあつまり、ここはそんなダンジョンの中だったわけ。しかもここ、どうやらそのダンジョンの最深部らしい。ダンジョンにとって最も重要な、核がある場所。ダンジョンにとって核とは、脳と心臓が一緒になったものと言えばわかりやすいかな。これを壊したり、持ち去ったりすると、ダンジョンはゆっくりと死んでいく。

 ダンジョンの核周辺は、最も魔素が濃い。それゆえ、最も不思議なことが起こり安いと考えられている。

 もしそれが本当なら、私がここに呼ばれたのも、人形になったのも、少なからずその摩訶不思議に後押しされた結果なのかもしれないね。


 その核は、広間の祭壇の水の中にあった。

 それは直径15センチくらいの、赤い玉。

 確かに、すごい量の魔力を蓄えている。魔力を視ることができる私の目には、とても強い輝きを放っているように見える。

 ダンジョンの核は、錬金術の素材としても、魔道具の素材としてもとても優秀で、貴重だ。けれど、私はこれをどうこうするつもりはない。別にこのダンジョンに愛着がわいたからというわけじゃない。ダンジョンは貴重な素材の宝庫だ。今この核に手を出せば、これから手に入るであろう素材が手に入らなくなるかもしれない。それはいただけない。だから、今はまだ手を出さない。いつか、どうしても必要な時に取りにくる。


 さて、それじゃあ行きますか。この開かずの扉、開かないんじゃない。両開きなんだけど、引かなきゃ開かない。しかもこっち側には持てるような突起もなく、さらに重く頑丈。普通なら、こっち側から開けるのはほぼ不可能。

 しかし、私には魔法がある。

『時空魔法裂空破斬』この魔法は、どんなものも空間ごと切り裂く魔法。つまり、どんなに頑丈なものでも切り裂くことができる。


 ズガアアアアアアンンンン!!!!


 よし、大きな穴が空いたよ!

 その穴を潜ると、広間よりさらに広い空間がひろがっていて、そこには…


「ギギャアアアアアア!!!!」


 いましたよ。ファンタジーの最強生物。ドラゴンが。東洋の細長い龍じゃなくて、西洋の大きな蜥蜴みたいな竜。しかも、全長40メートル程の、巨大な白竜だ。白い鱗が綺麗でかっこいい。

 ダンジョンていうのは、たいていこうした魔物がいる。古いダンジョンほど強い魔物が出やすく、さらに核に近いほど魔物が強くなることが多い。そしてこのドラゴンは、最低でも300年は存在しているダンジョンの、核を守る最後の砦。弱いわけがない。

 …実際、私は今右腕を折られてるわけだしね。

 実は扉をこじ開ける前から、このドラゴンの存在は知っていた。だからこそ、300年も引きこもってたわけだけど。いやぁ予想以上だわ。

 開幕裂空破斬ブッパでいけると思ったんだけど、このドラゴン右前足と翼一つ犠牲にして避けたんだよ。そのままその勢いでこっちに突っ込んで来て、左前足の爪で思いっきり切り裂こうとしてきた。咄嗟に耐久上げてガードしたけど、右腕折られちゃったよ。まあこのくらいなら、すぐに直るからいいんだけどさぁ。

 あ、あのドラゴンも、もう血が止まってる。

 あっちも、再生こそしないものの、けっこう優秀な回復能力があるね。

 さてどうしようか。にらみ合いの中で考える。まず死なない私の方が、いつかは勝てるだろうけど、油断はしないようにしよう。

 先に動いたのは、白竜。口から白い光を吐いてきた。ドラゴンの代名詞、吐息(ブレス)攻撃だ。

 それに対して私は、裂空破斬を放つ。

 おおすごい。てっきり裂空破斬がブレスごと切り裂いて終わりだと思ってた。でもブレスと衝突した瞬間、ブレスが弾けて目眩ましに。そしてその一瞬で距離を詰めた白竜が、至近距離でブレスを放ってきた。けど私の目は、その白竜を捉えていた。実は私の目、眩しさにくらむことがないんだ。

 そのため、白竜の上に瞬間移動して、裂空破斬で首を落として終了。

 ふう、最初少し危なかったけど、勝てて良かったよ。

 油断はしちゃいけないね。常に最悪を考えて動くぐらいじゃないと。


 さて、まずは剥ぎ取りしようか。

 竜の素材は、とても貴重だからね。ここで手に入れられたのは、大きい。あ、解体の仕方は本に載ってあった。後はその通りにやればいい。まあそれは、私が超絶器用だから言えることなんだけどね。

 とりあえず、この後使うぶんくらいの剥ぎ取りはできた。他のところは、今は使う必要ないから、解体しない。

 剥ぎ取りが済んだ後の残りは、亜空間に収納しておけばいい。時間が止まってるから、劣化することもない。必要なときに、必要な分だけ剥ぎ取ることができる。


 さて、それじゃあお待ちかね、体の改造をしていきましょう。

 今まで、私の体に合う素材が無かったけど、この白竜の素材なら申し分ない。

 まずは目から改造していく。自分の目を、一個取り外して、水晶体と合成する。その後、術式を書き直す。もう片方も同じようにする。うん思ったとおり。今までより鮮明に、遠くが見える。まあ、微妙な違いだけどね。

 そして次に、体のパーツに取りかかる。それぞれのパーツに、対応する骨を合成していく。右腕なら右前足。左足なら左後ろ足。指の数が同じで助かった。胴体は肋骨と背骨、それから骨盤も。首は首。最後に頭は頭蓋骨と。

 鏡の魔術で見てみると、もともと白かったのが、さらに白さに磨きがかかった。瞳も輝きが増して、宝石みたい。そのせいでなんか、髪や服が浮いてる感じがする。んー、まあ今は仕方ない。素材が手に入るまで待とう。


 さて、それじゃあ先へ進もうか。




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