魔法と魔術
魔法の練習って言ったけど、私が使えるようになったのは、『魔術』の初歩の初歩だ。
魔法も魔術もいっしょじゃないの?て思うでしょ?
確かに、やってることを簡単に言えば、どちらも魔力っていう不思議なエネルギーを使って、不思議な事象をおこすってかんじだから、同じといえば同じだ。けれど、技術としては、全く別物なんだ。
まずは『魔法』。
こっちは、かなり才能に左右される。前提として、適性がないとそもそも使えない。適性があったとしても、保有魔力量や適性属性によってかなりばらつきがある。
保有魔力量は、ゲームでいうMP。多ければ多いほど、より強力な魔法をより多くつかえる。
適性属性っていうのは、火とか水みたいなやつ。たいていの人の、適性属性は一つ。属性が多い人ほど、希少になっていく。
使い方としては、まあ、念じるだけ。後は詠唱したりかな?簡単でしょ?
次に『魔術』
これは、魔法にくらべてそこまで才能に左右されない。
基本的には、努力がものをいう。
魔法みたいに適性や魔力がないと使えない、なんてこともない。まあ、あった方がいいのは確かだけどね。
使い形は、多種多様。魔法陣や詠唱はもちろん。舞いや儀式なんかもする。けっこう難しい。あ、魔法陣は魔術陣ていうんだった。
これが最低限度の、魔法と魔術の知識だ。
それじゃあ私の、保有魔力量と適性属性はどんなものかというと。まずは保有魔力量。調べた感じだと、かなりのもののはず。専用の道具を使うんだけど、魔力の強さはその道具がどれくらい光るかでわかる。私は、なんかマグネシウムを燃やした時みたいな強烈な光が発せられた。びっくりしたよほんと。
次に適性属性なんだけど、これはよくわからないんだよね。あるにはあるんだけど、よくわからなかったんだ。
調べるにはまず、火、水、風、土、光、闇、空間という7つの属性のうち、どれに適性があるかを調べる道具を使う。このうち、火、水、風、土は四大属性とよばれ、最も数が多い。そのため、基本属性とも呼ばれるらしい。そして光、闇、空間は、基本属性を2つ以上持ってるより珍しいらしい。そのため、希少属性、または上位属性なんて呼ばれる。この7つは、七大属性や基本七属性とも呼ばれるらしい。私はこのうち、空間に適性があった。これはけっこう嬉しかったね。だってかっこよさそうじゃん?瞬間移動とかできそうで。
次に、その7属性以外の適性を調べたら…なんと二つ反応があった。
こういう七大属性以外の属性を、特異属性と呼ぶ。さらに、その適性の持主が一人しかいなければ、固有属性とも呼ばれる。これも嬉しかったね。私の時代が来た!なんて思ったりもした。
ただこの特異属性、情報がほとんど無い上に、どんな魔法か手っ取り早く知る術が無い。持ってる人が上位属性より少なく、さらに種類がたくさんある。特異属性のほとんどが固有属性らしいし。つまりたいていの場合、手探りになるわけだ。これを知った時は、かなりげんなりしたね。まあでも、使えば使うほど、その魔法の本質がなんとなくわかってくるらしいから、頑張ろう。
ちなみに空間魔法の方は、かなり難しい魔法みたいで、もう少し魔力になれてからにしようと思ってる。瞬間移動して、壁の中にいる、なんて嫌だからね。だから今は、保有魔力量を増加させるトレーニングや、魔力操作のトレーニングをしたり。無属性魔法っていう、魔力があれば誰でも使える魔法を練習してる。
そして魔術だけど、これは今のところ、火を着けたり水を出したりはできるようになった。出した水を凍らせて、今の私そっくりの氷像を作ったりしたよ!
魔術は極めれば、ほんとに色んなことができる。
やり方も、たくさんあるしね。
私が使えるのは、今のところ魔術陣だけだね。他のはやり方をまだ知らないから。
それじゃあ、大魔導師(てきとうに考えた)目指して頑張ろう!
私がこの世界にきてから、300年が過ぎた。
この300年の間に、私は一つ、大きく変わった。
うまく言えないけど、本当の意味で人間をやめた。
それまでは、あくまで私は人間のつもりだった。人形の体も、どこか自分の体じゃないような気がしてね。うまく言えないけど、受け入れた、てかんじかな?
その第一歩として、まずは名前を変えた。
人間の田村亜子から、人形のレイズ=アドラに。
レイズ=アドラっていうのは、私の体のもとになった人形の名前。私が、人形みたいに可愛くなりたいって思って作った人形だから、讚美という意味のPraiseと、憧憬という意味のadorationからとったんだ。
それじゃあ改めて。
私は、レイズ=アドラ。元人間の、美少女自動人形だよ!
この300年で変わったことは、もちろん心だけじゃない。色んな経験をして、できることが増えた。
まず、私の二つの特異属性がどんなのかがわかった。
一つは時空属性。これはけっこうすんなりわかった。過去に同じ属性を持ってる人がいたっていうのが、本に書いてあったのもよかったのかも。空間属性持ってるならもしかして、と思って色々試してみたら、時間も操ることができた。
そのときに、直感というか本能というか、自然と自分の属性は時空だってわかったんだよね。不思議な感覚だったなぁ。
この時空魔法、最初こそ物の時間を少し加速したり、空間を固定して足場を作ったりなんていう、ちょっと便利くらいの魔法だった。それを頑張って練習したり、できそうなことを試行錯誤したんだ。
それで今では、広範囲の空間や時間を精確に認識できるようになって、瞬間移動はお手の物。時間の加速も、一瞬だけなら40億倍にまで加速できる。過去は約3ヶ月、未来は二日までなら見ることができる。時間を飛ぶのはまだ無理だね。それから空間固定も、ものすごく強固になった。
そして、なんと重力まで操れるようになったよ!重力っていうのは、空間の歪みだからね。できると思って頑張ったら、ほんとにできるようになって驚いたよ。
そしてもう一個の方なんだけど、こっちはなかなかわからなかったんだよね。でも五年ぐらいたったあるとき、ちょっと失敗をしちゃってね。左腕と胴の半分ぐらいがふっとんじゃったんだ。
痛覚はないからいたくはなかったんだけど、あのときは死ぬかと思ったね。でもそのおかげで、もう一つの属性を知ることができた。それは簡単に言えば、保護と再生を司る属性。私はこれを、『不朽属性』と名付けたよ!
これはかなりすごい魔法だよ!壊れた物を直すのはもちろん。守るということにも長けている。この魔法で体を守ると、例の事故をもう一度おこしても、大きく凹む程度の被害に抑えられた。修復も、5分かからなかったしね。え?試したのかって?当たり前じゃん!死なないって分かってるからね!。安全?なことが分かってるなら、それを活用しないと。魔法の性能を確かめるのは、重要だよ?
え?ああ分かってるよ?人間としてはおかしいってこと。でも、私がレイズだって心から思うようになってから、そういうところは人形っぽくなったんだよね。合理的になったというか?
私は、いいことだと思うよ。少なくとも、死ぬつもりもないし。それに私が危ないことをすることで、嫌な思いにさせる人はいないからね。
もちろんこの魔法もたくさん練習したよ。時空魔法みたいに色々できるわけじゃ無いけれど、守る力も、直す力も格段に上がった。常に発動できるようになったから、今じゃそうそう傷つくことはないし、どんなに壊れても、1分以内には直る。
後、この体の急所は、胸にある核だということもわかった。ルビーみたいに綺麗な、赤くて丸い石。これがぶじなら、頭を割られようが真っ二つにされようが死なないし、放っておけば直る。まあ、核が割れても、自然と直るんだけどね。…急所とは?
しかもこれ、魔法じゃなくて、この体の特性みたいなものなんだよ。つまり、素でもほぼ不死身。
そんな、もともと不死に限りなく近い体なのに、この不朽魔法でさらに死ににくくなった。やったね!
…生きてるの?という質問は受け付けない。
次に魔術だけど、こっちもなかなかのもの。
本に書かれてる魔術は、ほとんどできるようになった。話せないから、詠唱や歌がいる魔術は無理かと思ってたけど、無属性魔法で空気を振動させればいけた。
でもまあ、私が一番好きなのは、やっぱり魔術陣だね。他の魔術はだいたいこれで模倣できるし。何より私には、完全記憶に超高速思考、抜群の器用さがあるからね!魔力で魔術陣を書けば発動できる魔術陣は、私とすごく相性がいい。
それから、本に載ってる魔術だけじゃなくて、自分で魔術を作ったりしてみた。魔術陣て、プログラミングみたいにちゃんとした法則があるんだ。だからその法則をつかむことができれば、自由に魔術がつくれる。
ほんと色々作ったよ~。マイクロ波を使った電子レンジ魔法や、エックス線を使った透視魔法。超音波振動を使った切断魔法。電磁誘導を使ったレールガン魔法。調子に乗って色々やったよ。調子に乗りすぎて失敗して、普通なら死ぬような怪我をしたんだよね。水素爆発と、水蒸気爆発をなめてたよ。一緒にやるもんじゃないね、あれは。まあそのおかげで、適性属性がわかったわけだから、良しとしよう。
後、本に載ってた魔術陣は、全部平面で作ってたんだよね。だから、それを立体にしてみた。ほら、よくラノベの主人公がやってるじゃん?それで私もやってみたわけだね。これがなかなか難しくて、すごく時間がかかった。でも途中でコツをつかんだら、あとはそこまで難しくなかった。それでも全部やるのに20年もかかったよ。
いや~、たいへんだった。