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どこよここ

「・・・」

 人間、驚きすぎると声が出なくなるって、ほんとなんだね。勉強になったよ。

 いやいやいや、ほんとどうなってんの!?私、さっきまでお店の中で座ってたよね!?アンティーク風な、自分で言うのもなんだけど、オシャレなお店にいたんだよ!?なんでいきなり、どこの遺跡ですか?みたいなところにいなきゃいけないの!?てゆうか誰だ!こんなところにつれてきた奴!


「…ふぅー」


 よし、とりあえず、落ち着こう。

 まずは現状確認しないと。私は、さっきまで、確かに自分のお店にいた。なのにいきなり、見知らぬ場所にいる。特に居眠りとかは、していないはず。何より意識がはっきりしすぎているし、ちょっと唇を噛んでみたら、普通に痛い。つまり夢の可能性は無さそう。

 次に私の状態。名前は田村亜子。歳は43。職業は人形作家。他にも色々思い出してみたけど、たぶん記憶の欠落は無い。そして私は相変わらず、あの人形を着てる。そして、今私が座ってるこの椅子。これは間違いなく、私がお店の中で使ってたやつだ。

 最後にこの場所。いや、ほんとどこの遺跡よ。見た感じ、石造りの建造物の中。床や天井に、奇妙な紋様が描かれている。

 光源は、なんというか、色々だ。床や壁の紋様の一部だったり、へんてこなオブジェ?だったり。ランプ?みたいなやつだったり。ほんと色々。まあ、そんななかでも一番目立つのは、卵形の石?みたいなやつ。なんか魔方陣ぽいのの上の、豪華な台座にのせられてて、不気味に光輝いている。

 他には、大きな机に、椅子が一つ。そこらじゅうに、用途不明の器具が転がってる。

 なんてゆうか、そう。一言で言うなら、ファンタジーな実験室。錬金術師的な人が使ってそうな。

 …まさか。ほんとにまさかだけど、あれじゃないよね?最近ラノベで流行りのあれ。そう、異世界転移。

 でもなぁ。信じがたいけど、一番それが説明つくんだよなぁ。神様に会ったわけでも、王様に魔王倒せと言われたわけでもないんだけどね。そういやぁ、私はチート貰えてたりするんだろうか?

 まあ、たとえもらえてたとしても、どんなチートかわからないから、確かめようがないんだけどね。

 あ、そうだ。あれ、言って見ればわかるかな?

 でもなぁ、違ってたら恥ずかしいよなぁ。まあ、他に人がいるわけでもないし、やってみるか。


「ステータス」


 ・・・


 …うん、何も起こらないね。

 いや、わかってたよ?わかってたんだよ?でも、ほんの少しでも可能性があるなら、試してみるべきでしよ?だから何も恥ずかしがることはない!

 …誰に何を言い訳してるんだろう?


 まあいいや。それより、ここがどこなのか調べないと。できれば日本、いや、せめて地球であってほしい!


 そう思って、部屋の出入口を探すと…あった。扉もなんもなく、普通に開いてたわ。

 まずは顔だけ出して、確認。うん、石造りの通路だ。そして部屋と違って、暗い。うーん。ちょっと怖い。懐中電灯があれば良かったけど、そんなものは持ってない。部屋の道具の中から、明るいものを持ってきてもいいけど、用途不明な道具には、できれば触りたくない。よし、女は度胸!暗くても、壁を伝っていけばきっと大丈夫!

 そう思って、壁に手をつきながら、通路に一歩踏み出した瞬間。踏み出した足元の床から、魔方陣が浮かび上がるり、それが空気に溶けるように消えたと思ったら、通路に光の珠が浮かんだ。…わー明るくなったなぁ。

 ・・・

 どうやらさっそく、ここが異世界である証拠を見つけてしまったらしい。

 私の、ここが地球であってほしいという願いは、早くも叶わないことが、ほとんど確定してしまった。

 …はぁ。









 まあ、落ち込んでいても仕方ない。ということで、探索再開!

 こうなったらとにかく、情報を集めないと。たぶん、というかほぼ間違いなく、ここは異世界。それも、魔法とかファンタジーが実在してるとみて、間違いない。そんなところで、私みたいなのが一人で生きていけるとは、とうてい思えない。どうにか協力者を得たいところだけど、そもそも言葉が通じるかも怪しい。となると…どうすればいいんだ?

 ああ!もう!わかんないことだらけ!こういうときスマホがあれば調べられるのに!まあ、たとえあったとしても、電波が届かないんじゃだめなんだけど。


 と、そんなことを考えながら、さっきの部屋から見えた、入口めがけて歩いていると、その入口から、人型の何かが出てきた。


「ひぇっ」


 それはよく見ると、木でできた人形だった。見た目は、デッサン人形が近いかな?顔とかもないし。動いてるけど。

 その動くデッサン人形は、箒持っていて、それで床を掃きながら、こっちに向かってくる。

 えっと、どうすればいいんだろう?

 え、これが、第1村人発見!てやつ?異世界の人間て、デッサン人形なの!?

 と、とりあえず話しかけてみよう。


「あ、あの~」


 話しかけてみたものの、デッサン人形は、全く反応を示さない。ひょっとして、聞こえてない?


「あのお!」


 今度はもう少し大きな声で。さらに手をふりながら。しかも私とデッサン人形の距離は10メートルもない。今度こそ!と思ったけど、結果はさっきと同じ。デッサン人形は、たんたんと掃き掃除してる。

 もしかして、これはあれかな?ゴーレム。魔法使いとかがよく、雑用を任せてるイメージのある、あれ。そうだとしたら、納得かな?

 そうだ、もしかするとここに、デッサン人形の持主がいるかもしれない。魔法使いなら、私の言葉をわかってくれるかもしれないし。よし、希望が出てきたぞ!

 デッサン人形の横を通り抜けて、デッサン人形が出てきた部屋に入る。そこには、大量の本が、いくつもの棚につまっていた。どうやらここは書庫らしい。デッサン人形は、さっきの一体だけかと思ってたけど、もう一体書庫の掃除をしてる奴がいた。他にもいるのかな?


 通路に戻って、他の部屋を目指す。次の部屋は、居住空間だった。テーブルと、ベットがあるだけの、殺風景な部屋。広さも、さっきの二つに比べれば狭い。それでも25メートルぷーるくらいはあるけど。

 ベットでは、誰かが寝てるみたい。たぶん、あの人がここの家主だと思う。ちょっと緊張するけど、まずは話しかけてみないとね!

 近づいてみると、その人の顔が見えてきた。


「ああー、まじかぁ。」


 骨だった。そう骨だったんだよ!

 骸骨が、ベットで寝てた。

 たぶん、死んでる。そういう生き物?である可能性もなくはないけどね。アンデットとかそんな奴。でもたぶん、死んでるだろうなぁ。だって、骨と骨が繋がってるなんてこともないし、布団を捲ったり、肋骨を持ち上げたりしても、起きないからね。後、そうとうな年月が経ってるんじゃないかな?


「はぁ~。どうしたもんなぁ。」


 ここの家主が死んでるってことは、おそらくこの建物の中に、生きた人間はいない、と思う。いたとしても、少なくとも骸骨を布団に寝かしたままの奴と仲良くできるとは思えない。あのデッサン人形達は、家主が生きてたころの命令を守ってるだけだろうし。

 まあ、仕方ない。まだ見てない部屋もあるし、探索しよう。

 次に入った部屋は、通路の突き当たりにある広大な広間だった。知らないけど、東京ドームぐらいはあるんじゃないかな?。ちなみに、最初の実験室?は学校の体育館ぐらい。書庫はその倍ぐらい。

 今のところ、この広間が一番広い。四角い形で、通路から見て左側の壁には大きな扉が。右の壁には祭壇みたいなのがある。

 あっ


「水だ!」


 その水は、祭壇みたいなのの、上の方から湧いてきている。壁際に掘られた水路を通って、左の壁に消えていく。

 よし、水があれば、しばらくは大丈夫そう。

 水を確保できたところで、来た道を戻る。ここは行き止まりだからね。え、大きな扉?開けようとしたけど無理だったよ。押してもだめ。引くためのドアノブなんかもない。スライドもしない。どれだけ力を込めても、うんともすんとも言わない。全く開く気配がなかったよ。

 ここはもういいかな?


 というわけで、反対側の突き当たりまで来たよ。こっちの突き当たりにも、部屋がある。

 ここに来るまでに新しく見つけたものは、物置きみたいな部屋が一つあったぐらい。

 ここはなんだろう?と思ったけど、特に何も無いっぽい?。というか、ここだけなんか、他と違う。ここまで、通路もどの部屋も、全部石でできてた。家具なんかはともかく、壁や床、天井は全部石だった。

 けどここは、壁は石だけど、床は土だし、天井も石は石でも、調えられた石板じゃなくてむき出しの岩盤だし。

 んー、まあわかんないし、今はいっか。

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