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トレジャー・イン・ミラー  作者: 月川 来瀬
第1章 夢と現実と異世界と
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第6話 鏡地の歴史 〜上〜

ーー大昔の"鏡地"フラジールの話。


フラジールには、1人の女神がいた。名はピュティア。

彼女は人々から敬わられ、崇め奉られていた。


そして、ピュティアを敬う人々の宗教的信仰は2つの派閥にわかれていた。


1つは穏健派。ソロン、タレス、キロン、ビアス、クレオ、ピタ、ミュソンの7人がその代表であった。彼らは知識を豊富に備えた賢人、7賢人として世界の発展、先進に務めた。


2つ目は過激派。ケキル、アメディ、エレフィ、リクトー、カニディ、ホラティの6人が代表者であった。彼女らは魔力が一般人と比べて格段高く、その過激的な性格の影響もあり、魔女と周りから呼ばれていた。


穏健派はプトラ派、過激派はミトラ派として、この世界の均衡を保っていた。


ピュティアを慕う心は同じで、その派閥間での抗争や戦争などは起きなかったが、やはり両派の間には常に見えない壁があった。


ある日、プトラ派の七賢人の1人、タレスはふとこんな事を思った。


「この世界の神ピュティア様の頭の中はどうなっているのだろう」


当然下界の人間をはるかに超える知識量で、全知全能であろう、と。


七賢人は、彼らの間でも常に自分が最も賢いと思い、過ごしていた。そして、新しいことを学ぶにつれて、また1歩神の領域に近づいたと思うようになっていった。


そんな心境から、彼、タレスは神の考えること、知識、知恵を手に入れたくなっていった。


そしてしばらくして、彼はこう決断した。


ーー魔女にピュティアを殺させて、その知識を頂こう、と。


早速タレスはミトラ派の魔女の1人、ケキルに言った。


「魔女よ、ピュティア様を殺して知識の聖書を手に入れてこい」


ーーケキルは、すれ違う人々の目を釘付けにするほどの美貌の持ち主で、あらゆる男性を虜にした。タレスも例外ではなかった。


しかし、その美貌とは裏腹に、残酷な、冷酷な、そして残虐な性格の持ち主でもあった。


そんな残虐な美女は、妖しげな笑みと共に頷いた。


そして数日後、まだかまだかとケキルからの報告を待っていたタレスは、1通の手紙を受け取った。その内容はーー、


ーーピュティアを殺し、聖書を手に入れたので、アイセデュオのネイビス島で待ち合わせを。


というものだった。


彼はようやくこの時が来たと思い、急いで待ち合わせの島へ向かった。


待ち合わせのネイビス島につくと、そこには2人の魔女がいた。


ケキルと、リクトーであった。


タレスはなぜリクトーもいるのか不思議に思ったが、今彼の頭の中を支配しているのは、ピュティアを殺したという事実と、彼女が持っていた知識の聖書の存在だけだった。


彼は彼女の元へ行き、こう尋ねた。


「ピュティアは殺したのか? 聖書を渡せ」


するとケキルはこういった。


「タレス、私は考えたのです、ピュティア様はは神様であり、この世界はあの女神によって支えられている、しかしタレスはその女神を殺し、自分の欲望のままに私に暗殺するよう申し出た」


彼女は神に対する反逆だ、そういう趣旨の話をしだした。

確かに、神を殺すという意味では反逆、やってはならない事。しかし、あれはただ天空で伸び伸びと暮らす一人の人間ではないのか。


ただの人間が、我々賢人を差し置いて聖書を手にしただけで神だと崇められる、そんなふざけたことあってはならない。殺せ。殺すべきだ。殺すべきなんだと。


「ーーそれってとても、悪い事だと思うんです、そしてそんな悪いことをしようとした穏健派のあなた、タレスはーー」


こうケキルが言ったあとでようやく理解した。


ーーこの状況を。死ぬ。殺される。もう終わりだ。魔女に、殺される。


「せーいかいっ!死ぬべきだと思うよー、きゃははっ!」


リクトーは残酷な笑みで右手に黒い光を放つ、水晶のような透き通った刃をタレスの首目がけて振り下ろした。


タレスの首は上から斜めにどす黒い血飛沫を上げて彼の足元に転がった。


神に対する反逆者を1人抹殺した彼女は、黒光りしている刃を赤い舌で舐めながらこう言った。


「楽しいことが起こりそう!きゃはっ!」


そして、無残にも切断された首の、髪の毛を掴み持ち上げて、それを見ながらーー、


「よし、へーんしんっ!」


そう言った次の瞬間、彼女の体を音も立てず、霧のようなものが覆った。そしてすぐその霧は薄くなってゆき、リクトーが現れーー、


「おっほん、私はタレス、プトラ派の賢人だ、こーんな感じ?」


そこから現れたのは、先程首を鮮やかに切断された賢人、タレスーー否、タレスの姿をした、リクトーだった。


「うん、いいんじゃないですか?」


その姿を見て驚きもせずケキルはその変身っぷりにそう感想を述べた。


「じゃあ、暴れてくるっ! きゃっははは!!」


リクトーはその姿のまま、ネイビス島から姿を消した。


そして数日後ーー、


「おい、ピタとミュソンを見かけたか?」


彼、クレオはいつもピタとミュソンと一緒にアニロビ王国で占星術を学んでいたので、異変にいち早く気づいた。そして、すぐに残りの賢人を呼び出して話を持ちかけた。


「見てねェなァ俺ァ、なんか知ってっか? おめェら」


「知らん」


「しらんでロン」


「しらんでロン」


ビアス、タレス、兄弟のソロンとキロンはそれぞれそう言った。


「なにか起きてるはずだ、異変を感じたらすぐに教えてくれ」


結局有力な情報を手に入れられなかったクレオは、アニロビ王国で、人々から情報を収集しようと努めた。


しかし、何も得られなかった彼は、また明日情報集めをしようと心に決め、その日は休もうとーー、


「ねぇねぇ、知りたい? ピタとミュソンがいなくなった理由」


寝床に入り、まさに眠りにつこうとした時、開けていた窓から銀色の髪の毛の可愛らしい女の子が1人、そこに立っていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



翌朝目を覚ましたクレオは、昨日と同じように賢人達を呼び集め、話し合いを始めた。


そして、最初に彼はこう言った。


「なぜピタとミュソンが消えたのか、理由が分かった」


一同は驚いた様子で、クレオの方を見ている。


ーータレスとビアスを除いて。


それに気づいていない彼は、当然だろうとわかった上で、次のように述べた。


「結果でいうと、彼らは死んだ、殺された」


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