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トレジャー・イン・ミラー  作者: 月川 来瀬
第1章 夢と現実と異世界と
1/22

プロローグ 終わりの始まり

人間の心理的描写多めです。

グロテスクな表現があります。

ジャンルはハイファンタジーですが、恋愛、友情、謎解きなどの要素を多く取り入れています。


時間がある時に投稿して行きますので、基本的にマイペースでやっていこうと思います。

耳を、鼓膜を、脳を引き裂くような不快な音が、爆音が聞こえる。

タイヤとアスファルトが擦れて奏でられる不協和音。

危険を知らせながら、"それ"は迫ってくる。


「マジかよ」


それに気づいた瞬間、今にも飛び立たんとする小鳥が、歩道を歩く人が、風になびく花壇の花が、視界にあるもの全てがゆっくりと動いているように見えた。


ーーああ、人って死ぬ時こんな風に感じるのか。


今までにも何度か時間がゆっくり進んでいると思ったことはある。退屈な授業を受けている時。何かに集中している時。まぁ俺の場合集中している時なんてのは極わずかな時間の間であったが。

しかし今の状況のそれは、経験した時より遥かに遅く感じる。


人は死ぬ時、走馬灯をみるなんて話を漫画やドラマでよく見る。

しかし今、おそらく死ぬであろうこの状況で、それらしきものはみえてこない。

なぜなのか。多分今まで何もしてこなかったからだろう。


漫画やドラマで走馬灯を見る人物は大体壮絶な人生を歩んだ。いろんな経験をした。そうしたものが映像化され、脳裏に浮かぶのだろう。

俺にはそんな経験がない。だからだ。


「ってよくこの状況でそんなこと考えられんなぁ、俺」


しかし、こんな事以外考える事がない。常人ならば、どうにか死なないように体を捻ったりするのか。頭を守ったりするのか。


そんなことをしても、どうせ直撃するだろう。無駄だ。無駄なことだ。なら別のことを考えた方がよほど効率的だろう。何に対して効率的なのかと言われれば、残りわずかの余命宣告を受けたも同然のこの状況に対してである。


あと数秒であの世に行くのになぜ生き延びようとするのか。潔く死期を待つ方が清々しいではないか。


やり残したことはあるか、いや、ない。悔いも、ない。


ーー悔いか。


大人はよく言う。悔いを残すなと。慎重に、正確に、最適な選択をしろと。


ーー無理だ。必ず悔いは残る。どんなに悩んで苦しんで出した結論でも、必ず後で後悔する。だったらーー、


なにもやらなければいい。


なにもやらなければ、選択を強いられる場面に遭遇するはずがない。怠惰を貪っていればいいではないか。


今までそうやって生きてきたからこそ、死ぬ寸前にこんなことを考えられる。それなら当然、走馬灯もみれるはずがないか。


ゆっくりと目を閉じ、その瞬間、死の瞬間まで待つことを決めーー、


「死んだらあいつに会えるかな」


この言葉を最後に、この青年ーーレイの意識は暗転した。

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