異世界転生・初
また新しいのですね…すみません。書き続けたいよ…
雲一つない青空の下。悠々と歩道を歩く少年は口を開け、欠伸をする。
9月の中旬頃、月曜日。未だ暑さの残る時期。時刻はp.m.12:30、当たり前の様に学校で授業があるわけなのだが、寝坊した少年はもはや諦めたようにだらだらと道を行く。
「ねむ……」
前日から今日にかけて徹夜してゲームしたせいなのか、体が重い。
ドンッ
「っとあぶねえぞ兄ちゃん。」
前から来た人にぶつかり、バランスを崩した少年はそのまま歩道を外れ、車道へ飛び出していく。
「おい!」
ゴシャッ!!
運悪く車道に飛び出た少年を、トラックが轢き殺す。誰かの叫び声は大きな音に掻き消され、道路上に残されたのは胴体と足が潰れた死体と、バケツでぶちまけたような夥しい量の血液だけだった。
「……きろ………起きろ!」
「っ!?」
頭上から浴びせられる大声で意識が引き戻される。目を開けると、目の前には男の顔がどアップで映される。
「…誰?」
少年は起き上がり、その男を見る。黒いズボンに赤のタンクトップを着た、筋骨隆々の男はこちらを見ると、歯を見せてニカッと笑う。
「案外落ち着いているんだな。俺は戦神・ギルス。名前の通り、戦闘の神だ!」
ハッハッハと豪快笑う男、ギルスを尻目に少年は自分の身に起こった事を1から考え、整理する。
「確か、眠くてふらついてたら車に轢かれたんじゃ…トラックだっけか?それにしても何故生きてるんだ?」
フラッシュバックするのは、高速で自分に迫り来るトラック。あのスピードで巨大な鉄の塊に轢かれたらひとたまりもないはず…なのに今、自分は生きている。
「おーい!無視しないでくれー!」
何やら端の方でおっさんが騒いでいる…
「いや、ほんと誰ですか?」
「だから戦神だって!戦神・ギルス!」
おっさんは自分の筋肉を見せつけるようにポーズを決めると、歯を見せドヤ顔をしてくる。
「うわぁ…厨二病?…なんでもいいけど、これどういう状況なんですか?」
少年は若干引き気味の少年は、唯一この状況を把握してそうなギルスに尋ねる。
「いや、ほんとだからな!?…はぁ、まぁいい。それでお前の今の状況だけどな…簡単に言うと、お前は転生することになった。」
いいのかよ…と思っていると、ギルスはさりげなく超重要事項を口にした。
「…は?転生!?…それって異世界転生ってやつ?」
「あぁ。と言っても転生するのはお前の魂だけだけどな。」
「魂だけって…俺の肉体はどうなるんだ?」
魂が抜けた肉体。それはただの肉の塊にすぎない。17年間付き添った体はどうなるのかを知りたい。
「お前の体はもう使い物にならん。見るか?ぐちゃぐちゃだぞ。」
ほら、とギルスが空中に手をかざすと、その場にはスクリーンが現れる。映し出されたのは、トラックに轢かれたばかりの、生々しい自分の死体。
「うわっ確かにこれは無理だわ。」
あまりにも凄惨な光景に少年は思わず苦笑いを浮かべる。
「まぁ、心配はいらない。今頃お前の肉体はきちんと火葬されているだろう。」
「それは良かった。して、肉体はどうすれば?」
少年は1番の疑問であった事を尋ねる。既に自分の肉体はこの世に無い。であれば、まさか誰かの体に乗り移れと言うのだろうか?
「それも心配するな!肉体は私達が責任を持って作らせてもらった!ハッハッハ!神々の特注品だぞ!受け取れ!」
ギルスは自慢げな笑みを浮かべ、右手を横にかざすとその先に赤い魔法陣が現れる。そしてその中から何かを引きずり出すと、少年の目の前に置いた。
夜に溶けるような黒い髪に真紅の眼。整った顔立ちに質のいい筋肉。目の間に出されたのほ紛れもない人間の肉体だった。
「これが神々が、総力を挙げて作った最高傑作。コードネーム:神!これがお前の新しい肉体だ!どうだ気に入ったか!」
ギルスの言った言葉全てに驚いた少年は、一時停止した思考を元に戻し、考える。
「見た目は元の自分とほぼ一緒、眼の色以外は鏡で見た時と同じようだった…だが、コードネーム:神って…まんまじゃねぇか!」
「ん?名前が気に食わないのか…フッフッフ!俺もこの名前には反論したくてな!実はこの名前ともうひとつ俺が考えたやつの二択から決めることになったんだ。やっぱりそっちにするか?」
「おぉ!ギルス!お前が神か!!」
少年は期待を胸にギルスの言葉を待つ。なんだやれば出来るなギルス。少しは見直し…
「俺は神だ!…それで俺が考えた名前は…コードネーム:ゴッドマンだ「やっぱりシンでいいです。はい。」
即答した少年は足早に肉体の方へと向かい、自分の魂を収めた。
期待した俺が馬鹿だったと、本気でそう思った。
「…さて、転生の準備に移るか。」
先程の一件の悲しみから立ち直った戦神は、次の段階に話を移行する。
「まず、転生する先は…えっーとアルシエントという世界だ。この世界には当然の様に魔物が存在している。それから…」
グダグダだ…それもそのはず、ギルスは先程から手に持った本を見ながら説明をしている。おそらくカンペか何かなのだろう。
「ギルス、説明はもういいからその本をくれないか?自分で読んで理解するよ。」
「ん?あぁ、いいぞ!ほれっ。」
ギルスはカンペ本をシンに投げ渡す。受け取った本は見た目は辞書の様な本なのだが、シンが知っている辞書よりも圧倒的に軽い。
「じゃあ最後に転生する際に付与する能力についてだな!」
ぴくり…とシンの眉毛が動く。読もうと思っていたカンペ本を小脇に抱え、まさに子供がおやつを待つ時の様なキラキラした眼でギルスを見る。
「転生特典が貰える…これは期待だな。」
「じゃあ付与するぞ!なんの能力が付くのかは神にも分からない。その人物に見合った能力が付くのだ。……良し、"ステータス"と念じてみろ。」
言われた通りに頭の中で念じてみる。
ステータス
名:シン
種:人間
Lv.1
攻撃:200
防御:200
魔力:200
魔防:200
敏捷:200
スキル
転生・10
「スキルはなんだった?」
「転生・10…ってやつだった。」
「ん?そんなスキル聞いたことないが…詳細を見てみろ。見たいと強く念じれば見れるはずだ。」
ギルスに言われた通り、転生・10というスキルの詳細を見たいと、強く念じる。すると頭の中に文字列が浮かび上がる。
転生・10
10回生き返れます。
「これは、いいスキル…なのか?」
端的に見れば、命が10個あるのと同じこと。かなりの
ものだとは思うのだが、シン的にはもっと派手なものを期待していたため、反応に困る。
「10回生き返れるか、俺は攻撃スキルを期待していたのだが…まぁ悪くはないだろ!ハッハッハ!」
まったくもって同感のシンは少し項垂れながらも、10個の命を手に入れたことにひとまず感謝しする。
「よし!これで転生の準備は完了だ!後は転生の門をくぐるだけ。少しの間だったが楽しかったぞ!」
「まぁ確かに悪くは無かったな…」
2人は笑いあって、別れの握手をすると転生の門へと向かう。
「じゃあなギルス。」
「達者でな!!」
門を開きシンは前へと進む。振り返ることなく手を挙げ、ギルスに手を振る。門はシンが入ったのを確認し、静かに閉じると音もなく消え去った。
割と本気で1分後…
ドサッ!
「……は?」
先に声を発したのはどちらだろうか。筋肉マッチョのおっさんか、黒髪に真紅の瞳を持つ少年か。
「…転生の門ってどこに飛ばすか決めてあんのか?」
黒髪の少年は尋ねる。
「…どっかの森の中だった気がするな。」
筋肉が答える。
「あぁ、確かに森の中だった…どデカいドラゴンが住んでるな!!…いや、一瞬だったんだけど何あれ?強すぎでしょハッハッハ…」
真紅の瞳の少年はその場に寝転び乾いた笑いを零す。
「ドラゴンがいたのか!?…そりゃ無理だわ。神々の作った肉体だからって、Lv.1でドラゴンは無理だわ。」
「リスキルの予感がする…一撃で即死だもんな。」
少年とおっさんのため息だけが部屋の中に響いた。
残りライフ9
頑張りますよ。