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おはようございます。作者です。
追加になった部分と自分で気付いた誤字などの訂正を加えてあります。
主人公同様、私は車オタクです。アニメはオタクと自称できるほどではなくせいぜい「アニメ好きなオッサン」程度の知識しか無いです。
物語の中で車両名称やメーカー名、地名、施設名称などはほぼ実名で使用させていただいておりますが、これは作者のこだわりなんです。物語とそれらは一切の関わりはございません。このお話は一部分で作者の実体験を加えておりますが、基本はフィクションです。
夜の街に色とりどりの光が煌めいている。基本的に黒で統一された内装は殺風景だが、カーロケーターとインパネイルミネーションや計器類の光とともに華を添えるようで眩い。
車の中にいるが、今は一時的に停車して外の様子を伺っている。視線は基本的に前だが周囲の車や路側帯に停車している他の車だけではなく、対向車やそのドライバー、果ては歩道を歩いている歩行者や枝分かれしている路地にも目を配る。それも俺たちの仕事だ。
俺たちというのは、俺はこの車に一人で乗車しているわけではなく、助手席にもう一名男がいる。個人的には男と二人きりでドライブを楽しむ趣味は持ち合わせていない。助手席に乗せるのはやはり好みのタイプの女性に限るよ。うん。それは間違いない!と力説させていただこう。
助手席の男は今朝からずっと、自分の嫁さんの話をしている。どっちかと言えば、惚気話ばかりだ。任務中は俺は運転しながら左側方、そいつは右側方を警戒するのがセオリーなのだが、この男は本当にちゃんと任務をこなしているのか?と問いたくなるのだが、一時間ほど前にこいつが飲酒運転のドライバーを検挙しているのだから、相棒は相棒で自分の職務は果たしているので文句は言えまい。口数は呆れるほど多いが、仕事は出来る男だ。
いい加減ウンザリしてきてはいるけれど、俺は親友でもあり仕事の相棒でもあるその男の話を無下にはしない。無下にはしないが、任務をこなして今日は運転係ではないからって職務中に嫁さんとLINEのやり取りをするな。というツッコミは入れたい。
俺がウンザリしているのと相棒にツッコミという名の説教をしないのには、理由がある。
俺たちが大事な任務を遂行中の今、俺が毎週楽しみにしているWebラジオの生放送の真っ最中であり、俺は個人所有のタブレットでその番組を視聴しながら任務をこなしているのだから、相方に偉そうなことを言えたご身分ではないんだよ。
この番組がうまい具合に非番や休日に当たってくれたら、そういう日は自宅でノンビリとリビングで寛ぎながらこの番組を楽しんでいる。今日はたまたま勤務だったの!当番日だったから仕方ないの!!
悩ましいことに俺の職業は散髪屋ではないので、そう上手いこと毎週月曜日に休めるわけではないんだよ。
十二時間後の明日の午前十時まで待てばリピート放送が有るのだが、これを待つことは出来ない。詳しい理由は後ほどお話することになるけど、ハッキリ言ってしまえば俺がこのWebラジオを視聴するために停車してるのだ。いや!ここで路上警戒をしているという大義名分は整えてある!心配ない!無問題だ!!
こう言ってしまうと俺が仕事に不真面目な男だと思われがちだと思うのだが、そうではない。これは歴としたした休憩を兼ねた路上警戒なんだよ?そこは勘違いしないでね?
真面目な話、一般のドライバーでも車の運転中は一時間もしくは二時間に一度は適度に休息を取らないと、集中力を欠いてしまう。俺たちのように運転しながら周囲に警戒のアンテナを張り巡らせている職業だと、いくら厳しい訓練を受けていても職務に影響が出てしまう。なので、俺たちは自分たちの判断で適度な休息を取ることが許されている。これも安全な車両運行とイザ!という時に俊敏に反応することが出来るように準備しておくためなので、この休息も立派な職務の一つなのだよ?
…うん。まぁ…個人所有のタブレットを持ち込んでのWebラジオの視聴は俺の個人的趣味であり「適度な休息」の範疇から逸脱していることは自覚してるよ…。
「今日もユミカちゃんは元気ええね」
相棒は先ほどコンビニで買ってきたやきそばパンを頬張りながら言う。
「そうやな…」
俺も同じくコンビニで買ってきた100円のアイスコーヒーをストローで飲みながら答える。
野間口裕美香。通称ゆみっち。超が付くほどの売れっ子アニメ声優である。最近は声優歌手ユニットでもソロでもアーティストとして歌手活動もしている。歌うだけではなく、一部ではあるが作曲や作詞も手掛けている。まさに才女だ。
そして何より、美しい。
このWebラジオは動画も同時に配信されている。なので、俺のタブレットの画面では「ゆみっち」が笑顔で最近あった面白かった事を話している。
『この一時間だけは、事件は発生しないでくれよな』
俺が毎週この時間に思うことだが、この時も残り少なくなったコーヒーを啜りながら思っていた。
ゆみっちが話題を変え、来週の放送に向けたメールテーマの発表を始めたその瞬間…。
『司令部より遊撃隊移動各局。本部より出動要請入電中』
この無線が俺の淡い願いを無残にも打ち砕いた。
相棒は口の中に押し込んだやきそばパンを噛み砕きながら、通信マイクを手に取る。半ば強引にミルクティーで喉を鳴らしながらやきそばパンを飲み込み、応答する。
「こちら遊撃隊移動一号。詳細を送れ」
さっきまでノホホンのやきそばパンを食っていたのにいきなり仕事モードにスイッチを切り替える。この切り替えの素早さ。流石は俺の親友兼相棒だ。こいつのこういう一面はガキの頃から大好きだ。
あ…。違うよ?親友として、そして頼れる相棒としてだからね?俺はホモでもゲイでもないよ?そういう恋愛をする人たちを否定はしないけれど、俺は違うからね?マジで誤解しないでね?このままオネエキャラとかが定着しようものなら…。俺、マジで泣くよ?てか、ここから先の物語が進行しなくなるからね?
『あべのハルカス十八階金融フロアより侵入者警報及び火災警報入電。警備会社よりも応援要請あり』
「おうおう。よりにもよってハルカスかいな」マイクを握ったまま相棒は呟く。
「十八階なだけええわ。ハルカス300なんかやったら、泣くに泣けんぞ」
あべのハルカスは大阪に出来た新名所とも言えるビルで、その高さは日本一を誇る。「ハルカス300」はその最上階の展望フロアの部分に当たる。ちなみにだが…五十九階とか、シャレにならない標高に位置する。
正直なところ根っからの「浪花っ子」である俺はこのビルには少々の違和感を感じている。あべのハルカスの名前の由来にもなっている『大阪市阿倍野区』は俺の出身地だ。生まれてすぐに大阪府内の別の都市に引っ越してしまったのだが、祖父母がずっと住んでいたので月に一度は必ず来ていたから、ハルカスのある天王寺区界隈ではよく遊んでいた。我が家の菩提寺もお墓もハルカスの近所なので目にする機会は多いが、ハルカスの建設とともに周辺が再開発されて高層ビルが林立し、昔のような良き下町の風情が失われてしまったように感じてしまうのだ。
司令部からの通信はさらに続ける。
『なお、現場の警備員にあってはホテルフロアの宿泊客の避難誘導を優先中』
そこまで聞いて、思わず相棒から通信マイクをひったくってしまった。
『金融フロアからの人の出入りはどうなってる!?送れ!」
警報が鳴った金融フロアは、ホテルフロアよりも下の階層だ。
宿泊客の避難誘導に紛れて被疑者が逃走してしまう恐れがある。
『現在のところ出入りは確認されていない模様。送れ』
何を呑気な…!
「ならば金融フロアの出入り口全てを緊急封鎖!エレベーターも止めろ!焼け死のうが十八階から誰も出すな!!」
相方の手にマイクを放り投げ、赤色灯とサイレンのスイッチをパパッと操作する。
ルーフの一部が開き、反転式の赤色灯が姿を現して発光を開始すると同時に電子サイレンがけたたましく鳴る。
「遊撃隊移動一号より司令部!聞いての通りや!これより緊急走行にて現場に臨場する!以上!!」
相棒は通信マイクにそう告げると同時に、左手で外部スピーカーマイクを掴む。
「緊急車両が発進いたします。周囲のお車は道をお譲りください」
相棒が全部言い終わる前にギアをドライブにシフトして、同時にマニュアルモードに切り替える。パトロール中は通常のオートマチックモードで走行している方がラクなのでそうしているが、緊急走行中は頻繁にエンジンブレーキを使用するのでパドルシフトでギアチェンジが可能なマニュアルモードを多用している。
…まぁ、わざわざマニュアルモードにしなくてもドライブのままでもパドルシフトは使えるんだけどね…。
あれだ!そう!気分の問題!!
…そういうことにしといてください。
俺たちの愛車…というか、こいつも俺たちの大事な相棒なのだけど…。
見た目は普通のトヨタマークXだが、実はスーパーチャージャーで武装してある。
以前にもスーパーチャージャー付きの「+M」というグレードが市販されていたが、俺たちの相棒は別物。『遊撃隊』専用に開発された特殊車両だ。流石はV6ツインカム3.5リットルスーパーチャージャーだ。今日もすこぶる調子が良いね。『キューン!』というスーパーチャージャー特有の金属音を奏でながら俺のペダルワークに機敏に、食らいつくように反応してくる。やっぱり、車も女もレスポンスが命だな。感度が良いに限るよ。うん!ここも力説しとく!!
話が逸れた…。
このマークXに付けられた名前は『POLICE INTERCEPTOR』だ。つまりは、メーカーと警察の手によって遊撃隊のために創られた特別な車両となるが、特にグレードを示すエンブレムは装着されていない。内装や装備は軽量化やコスト削減のために市販のマークXよりも若干安っぽいのは否めないが、パトカーとして使用するには必要にして十分な装備だ。交通機動隊が使用してるクラウンアスリートのパトカーは、この車に比べたら贅沢品とも言える。
だがしかし!
間違いなくこっちの車の方が速い。同じエンジンと同じトランスミッションを搭載しているとはいえ、こちらはスーパーチャージャー搭載だ。加速力が違うよ。でも、俺はクラウンのパトカーを否定はしない。あれはあれで、とても愛していたりもするのだ。どうあってもクラウンはクラウン。やっぱり良いよね…。
また話が逸れた。俺はアニメと車に関してはオタクを自認しているので、その手の話を語り出したらかなり熱くなる。ガマンしてお付き合いいただきたい。
さてさて…
ここまで話が進んでいて、今更なのでもう良いかな?とも思っていたんだが…。
俺と相棒の職業はもうご理解いただけているだろうか。さっき乗っている車が「POLICE INTERCEPTOR」と呼ばれるマークXだと語った時点でお解りだろうが、ズバリ俺たちの職業は警察官だ。
これもここまで来たら最終回まで『相棒』と『俺』で通してしまっても面白いのかもしれないが、やはりストーリーの進行上それでは具合が悪いと作者が狼狽し始めたので、簡単に自己紹介をさせていただこう。
ただし…。ご存知の通り、俺は事件の現場に急行するために緊急走行中だ。現場に臨場して話が途中で終わったらごめんなさいよ!と、先に謝っておく。
先ほどから助手席で右手に通信マイク、左手に外部スピーカーマイクを掴み、「移動一号より遊撃隊移動各局へ…!」と遊撃隊の他の隊員たちに指示を出しながら「緊急車両が交差点に侵入します!道を譲ってください!」と器用に使い分けているのが、俺の相棒。谷口芳樹。三十四歳。巡査部長。妻帯者。結婚四年目で、まだ子供はいない。俺は昔から「ヨシキ」と呼んでいるが、奥さんからは「ヨシちゃん」と呼ばれていることは遊撃隊の後輩たちには秘密にするよう言われている。いつバラすかは、俺の気分?
そして、パトカーを運転している俺…。保寺英之。三十五歳。同じく巡査部長。四年前に離婚。「バツイチ」とか言うな。そういうネガティブな呼び方はダメだ。『Re:独身貴族』と華麗に呼んでいただきたい。調停と裁判で親権を争ったが、負けてしまったので現在は自由気ままな一人暮らしを謳歌している。訳あって彼女募集中ではない。ヨシキや先輩、上司からは「やっさん」と呼ばれている。
こんなもんで良いかな?自分の事を語るのって苦手なんだけど…。
まだ現場には到着しないので、俺とヨシキについてお話ししておこう。
俺とヨシキは実家が近所というより、同じマンションであったために幼稚園に入園する前からの親友だ。「幼馴染」と言う名の「腐れ縁」と言い換えても良いな。
幼稚園から高校までずっと同じ学校だった。クラスが違うことは何度もあったが離れることなくずっと一緒にいる。今でも親同士も仲が良い。
小学何年生の頃だったか、正義の味方を気取っていた俺たちは
「将来は絶対警察官になって、二人で悪いヤツを捕まえまくろう」
なんて約束をして、現在に至っている。
俺たちが進路を違えたのは、高校を卒業した後だ。高校在学中に二人して大阪府警の「高卒警察官」の採用試験を受験したのだが、仲良く不合格。ヨシキはそのまま高校を卒業してフリーターをしながら高卒のまま警察官を目指し、フリーター生活三年目にして大阪府警巡査を拝命した。
俺はと言うと、「大阪府警の試験に落ちたら大学に行く」と言う両親との約束があったので、推薦入試で合格していた大阪府内の私立大学の法学部に入学。もちろん警察官になるために法律を学ぶためだ。大学は無事に四年で卒業できたのだが、残念ながら大阪府警の採用試験には二次試験で不合格。念のために通常の就職活動もしていたので、内定を貰っていた地元の自動車ディーラーに営業マンとして入社した。入社はしたが、警察官になることは諦めていなかった。滑り止めとは言え入社させてもらったのだし警察官になるまでは飯も食わなければならない。なので、死に物狂いで営業活動に精を出した。おかげさまで新人賞を貰うなど順風満帆な社会人ライフを送っていたが、昼は営業マン、夜は警察官になるための勉強という日々はキツかった。でも、営業マンという仕事をしていたおかげで、礼節を重んじるということについては他の仕事を知らない警察官よりは身に付けることが出来たし、これは今でも俺の武器の一つになっている。
死に物狂いで働いていたのにはもう一つ理由がある。俺は大学卒業と同時に、大学で知り合った二つ年上の先輩であった元嫁と結婚していたからだ。これについては後々にも語ることが出てくるだろうし、胸くそ悪くなって運転が荒くなりかねないから、今は詳しくは話さないが俺は今でも「騙された」と思っている。
話を戻そう。営業マンとして入社して二年目。上の娘である侑莉が生まれた直後の秋の採用試験で、ようやく合格。翌年の四月、俺は三年間勤務したディーラーを退職し念願の大阪府警巡査を拝命した。
だから、ヨシキは厳密には俺の先輩になる。上下関係の厳しい警察という組織に於いて拝命年度というのはその初歩に当たるが、ヨシキと俺はそんなことはお構い無しに通常運行の間柄だった。しかし、ヨシキが先に拝命してくれていたことと、ヨシキの親父さんが同じ大阪府警の警察官であったために教えてもらって得ていた知識は、拝命間もない警察学校時代の俺には本当に有り難いものだった。この時に得た上司や同期との関係や信頼は今でも俺の大切な財産の一つと言っても過言ではない。
ヨシキと俺は常に一緒にいるようなイメージを植え付けてしまったかも知れないが、卒配された警察署は別々だった。でも、何故か同じ東大阪市内で、別々の警察署とは言え同じ地域課警察官で、違う駅だが同じ沿線で三つしか離れていない駅の駅前の交番配属だったので、顔を合わせる機会は多かったな。
ある日の帰り道、偶然にも難波の駅でバッタリと会った。その時にヨシキから「機動隊に行かへんか?」と提案された。俺もちょうど機動隊から異動の打診を受けていたから、その申し出に即決で応じた。
実際のところヨシキと俺が異動した機動隊は通常の機動隊ではない。『大阪府警 特殊部隊』通称S.A.Tと呼ばれる部隊だった。ヨシキも俺も警察学校時代から射撃でかなりの成績を収めていたし、二人揃って大阪府警の代表に選ばれ警察庁の射撃コンクールで入賞した経験もあった。それに逮捕術も上級。こちらでもコンクールで優勝したこともあった。それがS.A.Tの隊長の目に留まり、スカウトを受けた。というのが実情だ。
つまり、二人とも同じ時期にスカウトを受けていたのだ。でも、俺は家庭があり子供もいる。もうすぐ下の娘の藍実が生まれようとしているところだったので、危険の多い特殊部隊に行くべきかどうか悩んでいた。ヨシキもそんな俺の状況を知っていたので誘っていいものか思案してくれていたようだ。しかし、ヨシキの「また一緒に守ろうぜ」という一言で悩みは吹き飛び、二人同時に特殊部隊に飛び込んだ。
流石に特殊部隊だけあって、その名は伊達ではなく正式配属の前の選抜試験で一瞬後悔したほどだ。でも元々身体能力にはヨシキも俺も自信があったので、一発クリア。正式配属の辞令を本部で受け取った時には飛び上がって喜びそうになったが、配属後の訓練は…
マジ地獄だったよ。
それから五年間。同じ班に配属されて、部隊では「大阪府警の最後の砦」と呼ばれて持て囃された。そろそろ特殊部隊も卒業やね。という時期に、また二人揃って異動の打診を受けた。それが『成田空港警備部隊』。ご存知の通り千葉県成田市にある国際空港だ。そこの警備部隊への異動だった。ここへの異動は栄転を意味する。つまり、エリートコース。晴れて大阪府警に凱旋すれば「出世街道まっしぐら」。将来の幹部は約束されたようなものだ。
が、ヨシキも俺も、その異動を断った。
特に出世に興味がないわけではないが、そこまでの野心も持ち合わせていない。本部で偉そうに指示を飛ばすより現場で働きたい。それが本音だった。それに、二人とも巡査部長に昇任したばかりだったので、そこまで焦ってもいなかったのだ。
うん?そうだよ。今も巡査部長だよ。警部補への道はまだまだ遠いよ。
その後、ヨシキと俺は揃って交通機動隊への異動願いを提出した。その希望は通り二人とも警備部機動隊から交通部交通機動隊へと異動になった。俺は子供の頃から車が好きで、大学時代にはドリフトコンテストで全国優勝した経験もあったし、ヨシキはバイクが好きで高校時代に50ccクラスで全国チャンピオンになった経験があるほどだった。なので、俺はパトカー乗りに。ヨシキは白バイ乗りに。またそれぞれ別の道を歩むことになった。俺は高槻分駐配属。ヨシキは高石分駐。別々の分駐所へ配属されたのは、きっと成田への異動を断った制裁なんだろうな。被害者妄想かも知れないけど。
ーそれから二年後の現在。
今また、こうしてヨシキとタッグを組んで仕事をしている。
俺たちの今の配属は、大阪府警警備部特務課 特殊機動遊撃隊。
この春に新設されたばかりの新しい部隊だ。
続発する凶悪事件やテロに業を煮やした警察庁が、警視庁と大阪府警に先発して新設させた部隊。
他のどの隊よりも、素早く、正確、強力に。
通常は専用のパトカーで街を彷徨い…もとい、巡回し、事件が起こればすぐさま参上、特殊な武器と作戦を用いて被疑者または現行犯を確保或いは制圧し、人質がいるならば、その生命、身体、財産を害そうとする者は全力を以ってこれを排除し、必ず救出する。
それが、特殊機動遊撃隊だ。
「遊撃隊移動一号より司令部へ。現場に臨場。2302時より着手する。以上」
ヨシキが司令部に現場に到着したことを報せている。
ヨシキのことを口数が多いと言ったけど、俺も運転しながらいつになく饒舌になってたみたいやね。
語ってる間に、ハルカスに着いちゃった。
さてさて、お仕事を始めますか!