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プロローグ

はじめまして。

作者の水科と申します。

今回が初めての投稿です。

出来るだけ定期的に更新したいと思っていますが、本業の仕事もありますので、少々遅れることもあるかと思います。

文章を書くのが好きで、学生時代は某出版社主催の読書感想文コンクールに学校代表で応募させていただいたこともありました。(結果は佳作賞でしたけど) 小説は過去に趣味で書いていた時期もあったのですが、誰の目にも家族の目にも触れることなく全て廃棄してしまいました。インターネット全盛の時代になり、仕事も生活も落ち着いて、もう一度リベンジしたくなったので、この場をお借りして書いてみます。

小説を書くと云うより恥を掻くだけかもしれません。

拙い文章ですが、お付き合いいただければ幸いです。

誤字脱字や文章が解りづらいこともあるかと思います。

そんな時は生暖かい目で、そっと指摘してあげていただけたらと思います。

どうぞよろしくお願い致します。


プロローグは人によってはちょっとグロいかも知れません。

ですが、主人公の陰の部分を構成する大事な部分となると思います。

そう言うのがお好きではない方は、飛ばしてお読みください。

 少年は教室の真ん中で立ち尽くしていた。

 周囲ではクラスメイトたちが騒いでいる。

 教室の外の廊下や中庭に面したベランダには

 別のクラスの児童たちも集まって騒いでいた。

『黒山の人だかりって、こんなのかな?』

 心の片隅で、そんなことを考えていた。

 周囲のクラスメイトや児童は口々にこう言っていた。

「悪魔!」

「人殺し!!」

少年は左手に愛用しているランドセルを携えていた。

小学校の入学祝いに、祖父母からプレゼントしてもらった。

小学校に入学してまだ一年。とても大切に扱っていた。

大好きな祖父母から贈られた入学祝い。

雨が降ればカバーを被せて登校し

毎週末は隅々まで綺麗に掃除していた。

「いっぱい勉強して、立派な人になるんやで」

祖父母はそう言って、少年にランドセルを手渡した。

「うん!」

少年は満面の笑顔でピカピカのランドセルを抱きしめ、祖父母と両親に誓った。

なのに、少年が愛用していたランドセルは十年以上使っているのではないかと思えてしまうほど、ボロボロだった。

ポケットと呼ばれる部分は悉く切り裂かれ、本来なら真っ黒い革が張られた表面には「アホ」という文字がデカデカと切り刻まれていた。

犯人はわかっている。

今、少年の足下に転がっている。

正確には、足下で顔面を押さえて泣きながらもがき苦しんでいる。

クラスメイトの山田だ。

入学してすぐ、気弱で温和な性格の少年に目を付け虐めの対象にした。そのせいで少年はクラスメイトだけではなく顔も知らない他クラスの児童や他学年の生徒にまで謂われの無い虐めを受けていた。

『そんな下らない連中を相手にする必要はない。そいつらはそうすることでしか自己主張できない可哀想な連中なんだ』

少年は父からそう教えられていた。

だから少年は特に相手にもせず、恨んでもいなかった。

しかし、祖父母からプレゼントしてもらった大切なランドセル。

それをボロボロにされた。

トイレから戻った少年が教室に入って目にしたのは、その日の図工の授業で使用したカッターナイフで少年の大切なランドセルに文字を刻む山田の下品に歪んだ笑顔。

それを見て下劣な笑い声を上げるクラスメイトたち。

「やめろって言うてるやろ!」

と山田を止める、少年の数少ない親友の谷口の泣き声にも近い必死の叫び。

その谷口を羽交い締めにする、山田の腰巾着たち。

少年の中で何かが音を立てて弾けた。

山田の背後に歩み寄り、少年の席の横に落ちていた30㎝のものさしを手に取った。

少年の父が仕事で使っている物をこの日の図工の授業のために貸してくれたものさしだ。厚みは5㎜ある。かなりしっかりした作りで硬い。

このものさしにも「アホ」とマジックで書かれていた。

それを右手に握りしめ、少年は山田からランドセルを無言で奪い取った。

振り返って少年の顔を見た山田はヘラヘラと笑いながら鼻が当たりそうな位置まで少年の顔面に自分の顔面を押し付けて言った。

「なんか文句あ…」

言ったのではない。

正確には、「言おうとした」だ。

山田が言い終わる前に少年は半歩後退し、ものさしの一番硬い角の部分を山田の顎にめり込ませていた。

『ゴリ』っとした何かが砕ける感触。

山田の顎の骨が砕けたことを、少年はその感触で確信していた。

「へぶぅ」という変な声を上げる山田。

少年は怒り狂っていた。父が貸してくれた大事なものさしを粗末に扱い、祖父母がくれた大切なランドセルを使い物にならなくした山田と、その卑劣な行いを止めもしないクラスメイトに。そして親友をも傷付けようとする卑怯者に。

怒り狂っていながらも、冷静だった。

続けざまに山田の顔面にものさしの一番硬い角を何度も叩き付ける。

そして一言放つ。

「息が臭え。近寄んなや」

山田の顔面は一瞬でボロボロになった。

山田の周囲には欠けた歯が転がり、口や鼻から吹き出した血が床一面を染めている。


ここまでが、冒頭の顛末だ。


少年の周囲にいるクラスメイトたちは

「人殺し!!」

と叫び続けている。

少年は思った。

『いや、こいつまだ生きてるし』

思いつつ、横に視線を移すと親友の谷口がまだ羽交い締めにされている。

自分でも驚くほどのスピードでその羽交い締めにしている近藤の間合いに入り込み、脳天にものさしの角を叩き込む。

頭を押さえて蹲り泣き叫ぶ近藤。少年は気にすることもなく近藤の顔面を下からサッカーボールの如く蹴り飛ばした。

つい一週間前、少年は近藤に同じことをされた。昼休み後の掃除中にぞうきんがけをしてる最中に何の理由もなくだ。

尤も、ものさしでの一撃は少年のオリジナルだが。

その復讐であり、親友を一秒でも早く解放したかった。それが本音だ。それに近藤は学年で一番のモテ男だったので、無様に泣き叫ぶ姿を女子連中に見せつけたかった。

『虐めなんて惨めなことをするアホの腰巾着が、なんでモテモテなんや?この学校の女子は粒揃いのアホなのか?』

と、少年は常々思っていたので『これは良い機会を得たり』と行動に移した。


一頻り暴れまくり、少年を虐めていたクラスメイトたちを全員叩きのめした。不思議と気分はスッキリしていた。

が…

周囲のクラスメイト女子たちは相変わらず少年を「人殺し!!」と蔑み、他クラスの少年を虐めていた男子児童たちは離れた場所から少年を挑発してくる。

少年の足下では少年に頭を踏みつけられている近藤が泣きながら命乞いをしている。

『お前なんか殺す価値もないわ』と考えつつ、少年は思った。


俺を虐める連中をこの場で叩き潰せば、もういじめられなくなるのでは?


「うひ」

少年の口元がぐにゃりと歪む。笑っているのだ。


そうや!やっと気付いたか!潰しちまえ!!


少年の心の中で何者かが爆笑しながら誘惑の声を上げた。

その声に少年は反応してしまったのだ。

傍らに転がっていた児童用の椅子を掴む。

それを携えて、少年は廊下にいる他クラスの虐めの犯人たちに制裁を加えた。


その後のことは、覚えていない。

しかし、その時の「少年」こと俺は虐められなくなった。

中学を卒業するその日まで、地元では「帝王」と呼ばれる存在になった。

他人を無意味に虐めることはしない、無意味な暴力も振るわないが、見える場所で虐めを発見したり、その情報を聞きつけると制裁を加えて回わる。それが当時の俺たちのジャスティス。


制裁を加える「帝王」は、俺と谷口の二人。

俺たちは完全に正義の味方を気取っていた。

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