福島 後編
……経緯は分かったけど、ヒロシ、こいつ何者だ?
それに、目的が今一つはっきりしない。
「知り合いに合わせてあげるから、着いてきなよ」
ヒロシが歩を進めようとした時、俺は叫んだ。
「ちょっと待って下さいよ! 意味、わかんねっす。 俺たちをこのグループに入れるつもりっすか?」
ヒロシは振り向きもせず、こう言った。
「マルコ、君なら何か思うところがあるんじゃないかい?」
「……」
俺はマルコの方を一瞥した。
マルコはこの光景を見て、どう思ったんだ?
「……ここにいる人らは、利益のことを考えないで、俺たちのために準備してくれている。 それが当たり前、という風に考えるのは申し訳がない気はしますね」
「さすがマルコ、話分かるね」
……どうする気だよ。
ヒロシの後に続いて、宿舎の中に入ると、やけに筋肉質な大男が、椅子に座ってカップヌードルを食べていた。
「やあ、ラジオさん」
「……ん、ヒロシじゃねーか。 どうした?」
この二人は面識があるらしい。
ますます何者だよ、ヒロシ。
「後輩を連れてきたんだ。 社会見学のつもりでさ」
「は、始めまして……」
すげー厳ついおっさんだ。
俺は少し身構えてしまった。
だが、意外にも相手は礼儀正しかった。
「こちらこそ、初めまして。 義勇軍のリーダーのラジオです。 まさか、福島にこんな施設があるなんて思ってもみなかったでしょう?」
「そ、そっすね」
しばらく雑談して、宿舎から出ると、ヒロシがようやく目的を話始めた。
「彼らに何かしてあげたくてさ。 君ら、協力してくれない?」
……そういうことか。
ヒロシの目的は、義勇軍のために何か支援したい、ということらしい。
「……マルコ、どうする?」
「……」
マルコはしばらく顎に手を当てて考えていたが、そうだ、と指を鳴らした。
「義勇軍の人たちに、美味しいものをご馳走しよう。 メニューは、カップヌードルだ」
マルコは、今まで俺たちが食べてきた郷土料理をドライ加工して、カップヌードルの上に乗せてみたらどうか? と提案した。
「それ、いいね! 茨城の宇宙開発研究所なら、そういうことが出来る施設もありそうだし…… 早速、おじさん取りかかるから、君たちは戻って旅を続けてくれていいよ」
……協力しなくていいのかよ。
施設の中に、ソースカツ丼の店があったため、俺たちはそれを食べて、また地上に戻った。
あのタラップを登るのは骨が折れたけど……