福島 前編
マルコは首にタオルをかけ、浴衣姿で部屋に戻ってきた。
「やっぱり風呂かよ。 これ、見てくれ」
「……ヒロシか。 福島の双葉町? 確か、帰還困難区域のハズだが……」
俺が意味を尋ねると、マルコが説明してくれた。
曰く、福島の原発の影響で住めなくなってしまった一帯のことをそういう風に呼ぶらしい。
「どうする? 面倒くせーけど」
「……一応、先輩だからな」
俺たちは仕方なく、双葉町に向かうことにした。
駐車場に向かい、常磐自動車道を北上、1時間程度で福島の目的地周辺までやって来た。
道路に立ち入り禁止、と書かれたバリケードが置かれている。
「ちょっとどかしてくるわ」
今日の運転はマルコのため、助手席に座っていた俺が車から降り、バリケードをどかす。
「……っし。 にしても、ほんとに閑散としてんな」
震災から約6年。
人の手の入っていない街はまさにゴーストタウンで、不気味な雰囲気を醸し出している。
車に乗り込み、しばらく進むと、路肩に赤のベンツが止まっていた。
その後ろにEKワゴンをつける。
「やあやあ、待ってたよ」
ヒロシが車から降り、俺たちも合流した。
「……今度は何すか?」
「とりあえず、着いてきてよ」
言われるがまま後に着いて行くと、ヒロシは古ぼけた飲食店の中に入っていった。
店の名前は、子豚ラーメンだ。
「あいつ、飯を奢るためにここに?」
「……まさかな。 そもそも無人だ」
ラーメン屋のカウンターから、厨房に入る。
ちょっと待ってて、と言われ待っていると、ヒロシが先端が爪になっている鉄の棒を持ってきた。
それを引っかけ、おもむろにマンホールを開けた。
「この下に、秘密のシェルターがあるんだ」
「……シェルター?」
ヒロシは俺たちをどこに連れて行くつもりだ……?
見通しのきかない穴の中を、タラップを伝い降りていく。
かなり深い。
地面に降り立つと、ヒロシがスマホのライトで正面の扉を照らした。
「この先にある施設は、これから起こることに備えるために作られたものなんだけど、政府は干渉していない」
「……勿体ぶってないで、何があるのか教えて下さいよ」
「……義勇軍宿舎、さ」
扉を開けると、先には予想外の光景が広がっていた。
「な、何だよ、コレ……」
巨大な空間だ。
まるで東京ドームを地下にそのまま収納したかのような、そんな感じか。
俺たちはその空間を上から見下ろす形の位置にいる。
宿舎の様な建物もあるし、中央の広場には人がいて、何かの訓練をしている。
「何なんっすか、コレ!?」
すると、ヒロシが手すりに手をかけながら、こちらに向き直った。
「君たち、ニュース見る? 今、北朝鮮がミサイルを飛ばしてきてるよね。 あれがほんとに日本の国土に落ちてきたら、戦争になるかも知れない。 そんな時、君ら守るのが彼らでさ。 彼らの大半は、40才以上の無職の人間で構成されている」
ヒロシは更に語り始めた。
「もともとは日本の将来に危機感を持った人らによる、小さな集まりだったんだけど、ここ数年でここまで大きくなったんだ」




