カーチェイス
俺たちは来た道を少し引き返し、北関東自動車道に乗り入れ、壬生パーキングで車を止めた。
駐車場でヒロシと合流し、再度勝負の方法を確認する。
「今から15分後の7時ちょうどに俺たちが車をスタートさせる。 で、ヒロシさんがその1分後にスタートする、それでいいっすよね?」
「ああ、それでいいよ」
ヒロシが車に乗ったのを確認すると、さっそくマルコが動いた。
「今から適当な運転手に話をつけてくる」
「ああ」
さっきマルコの言っていた作戦。
それは、このパーキングにいる運転手を買収して、壁になってもらうって方法だ。
この高速は2車線(向かいを合わせれば4車線)しかない為、車が2台並走して走っていた場合、後ろの車は前を通過することができなくなる。
かなり迷惑だが、必勝の手だ。
しばらくして、マルコが戻って来た。
「オッケーだ。 3万で手を打ってきた」
「ナイスマルコ!」
運転席には俺が座った。
緊張のせいか、ステアリングを握る手に汗が滲んでいる。
「いくぜ……」
スタートの時間が迫る。
あと、8秒、7、6、5、4、3、2、1……
「ゴーーーーッ!」
俺はアクセルを踏み込んで、駐車場から飛び出した。
それと同時に、後ろから黒のワゴンRが飛び出した。
マルコの買収した壁だ。
高速に出てすぐに、後ろの車が抜けないようフォーメーションを作った。
「笠間パーキングまで57キロだ。 クラクションを鳴らされても無視しろよ」
「分かってるって!」
数分後、即座に赤のベンツが迫って来た。
クラクションでかなり煽ってくるが、無視だ。
壁ができている以上、絶対に追い抜くことはできない。
「楽勝だぜ!」
その時、ピロン、と俺のスマホが鳴った。
「……ラインか?」
マルコが俺のスマホをポケットから抜いて、確認する。
「……マズい!」
マルコが叫んだのと同時だった。
先にある、車が故障した時に止める膨らんだ路側帯に、赤のベンツが突っ込んだ。
グオン、というエンジン音と共に、ベンツがワゴンRを抜き去った。
「なっ!?」
「しまった…… 路側帯で抜き去る、とラインで……」
だが、たったあれだけのスペースで抜き去って来るとは、尋常なテクじゃない。
「クソッ!」
俺はハンドルに拳を叩きつけた。
俺たちはヒロシを無視し、そのまま茨木に突入した。
わざわざあいつのドヤ顔を拝んでやる必要はない。
「茨木って結構有名なもん多い気がするけどな。 何がある?」
「そうだな…… 個人的にはアンコウ鍋を食べたいが、せっかくだ。 近くの旅館に泊まって、酒でも飲むか?」
「そうだな! 今日は疲れたし」
マルコが旅館を予約。
場所は、北茨木市にある、うぐいす谷温泉、竹の葉だ。




