栃木
「あいつ、ただのかまってちゃんだろ?」
「……とはいえ、一応先輩だ。 顔だけは出しといたほうがいいんじゃないか?」
……わざわざあんな奴に会いに行くのは気が進まないが、偶然にも俺たちがこれから向かう先にいる。
「分かったよ」
俺は、ヒロシのいる石田屋焼きそば店を検索した。
ここから首都圏中央自動車道を進み、東北自動車道に合流、1時間半かけて宇都宮市内に着く予定だ。
「……俺、ちょっと仮眠とるわ」
「ああ」
マルコに起こされ、気が付くと宇都宮市内に到着していた。
時刻は6時だ。
車をパーキングに止め、細い道を進むと、黄色い看板が目に付いた。
「石田屋焼きそば店、あれだ」
店は大して広くない。
店の外に置かれているテーブルに、ヒロシがふんぞり返っていた。
「やあ、待ってたよ。 これ、君たちの分」
ヒロシに手渡されたのは、透明な容器に入った焼きそばだ。
「これ、ここのっすか?」
「いや、パーキングに売ってたやつ」
……喧嘩売ってんのか?
だが、こんな子供のイタズラみたいなことに付き合ってやるほど、ガキじゃない。
「……あざっす。 で、俺たちに何の用があったんすか?」
「ここの焼きそばさあ、目玉焼きとハムが乗ってておいしかったよ。 あと、宇都宮焼きそばって、麺太いんだね」
……無視してんじゃねー。
「……すいません。 要件、教えてもらっていいっすか?」
俺が乱暴にそう聞くと、やれやれ、と手を広げるジェスチャーをした後、答えた。
「……勝負、しようよ。 一人旅って、結構さみしくてさ。 茨木方面に向かう北関東自動車道に壬生パーキングってのがあるから、そこをスタート地点にして、次の笠間パーキングまでどっちが先に着くかさ。 もし勝てたら、おじさんのベンツ、貸してあげるから」
……やっぱりただの構ってちゃんじゃねーか!
しかも、EKワゴンとベンツじゃ勝負にならない。
こいつ、それを分かってて見せつけたいだけに違いない。
「……その勝負、面白そうですね」
当然、マルコが割って入って来た。
「おまっ、分かってて言ってんのか? 勝てるわけねーだろ!」
すると、マルコは俺の肩を抱いて、小声でこう言った。
「俺に考えがある。 もしベンツが手に入れば、道中かなりの時間短縮になるはずだ」
「……どんな考えだよ?」
「後で教える」
マルコは、ヒロシに向き直ってある要求をした。
「……1分、ハンデをくれませんか?」
「たった1分でいいのかい? 全然オッケーだけど」
こうして、俺たちはヒロシと勝負することとなった。




