埼玉
川越にある菓子屋横丁を目指すことに決まった。
時刻は12時だ。
俺たちは来た道を引き返し、今度は中央環状線で、港区、渋谷区、板橋区を抜け、関越自動車道から練馬区、朝霞市、清瀬市、所沢市を得て、ようやく川越に到着した。
この一帯は、車は通れるものの、路肩に止めたらすぐに通報されそうだ。
俺たちはパーキングを探してそこに車を止めた。
「あー、ケツ痛ぇ……」
ここまで来るのに2時間半もかかった。
腹は減ってきたから良かったけど。
「どうする、観光でもしてくか?」
この辺は江戸の瓦屋根の建物が通りに残っていて、ノスタルジックな雰囲気がある。
「ああ、ちょっと見てくか」
ブラブラと通りを歩いていると、一際目につく建物があった。
「マルコ、あのでかいやぐらみたいな建物は何だ?」
「あれが、時の鐘だ。 確か、除夜の鐘はあそこで鳴らしているハズだ。 年が明けたら、つかせてもらえるんじゃなかったか?」
マジか!
……今度来てみようかな。
「っし、じゃあ、そろそろ何か食べようぜ!」
マルコがスマホを使ってこの一帯で有名な菓子を検索する。
「菓匠右門のいも恋、はどうだ? ここから南下して川越駅前まで行かないといけないが、有名らしい」
スマホの画面を見せてもらうと、饅頭みたいな見た目に、中は餡子と芋が半々になっている。
「もう少し歩いて気分転換したいと思ってたし、それうまそうじゃん」
俺たちは駅方面に向かって歩いて行き、菓匠右門までやって来た。
有名店というだけあり、カウンターの前は列をなしている。
10分ほど列に並び、いも恋を2つ購入、帰りがてらそれを頬張る。
味は想像したまんまというか、餡子と芋の味がする。
スマホで俺が食ってるところを写メして、車に戻る。
「ふう、まーた運転か」
「代わってもいいが、ナビできるか?」
……まあ、スマホで検索してその通りに進めばいいから、わざわざ俺がナビする必要もない気がするけど。
「オッケー、じゃあ次の目的地まで頼むわ」
席を交代し、今度は俺が次の目的地を決める。
「こっからなら、北上して栃木に向かうか。 栃木っつったら、やっぱ宇都宮餃子か、焼きそばか?」
俺が現在地から目的地を検索しようとした時、突然ラインが入った。
「……ヒロシだ。 なんか写メが送られてきたぜ」
そこには、ヒロシが焼きそばを食べてる写メと、宇都宮焼きそば、うまし、という文章が書かれていた。
「……なんだこりゃ」
更に、ピロリン、と追加でラインが入って来た。
「……どこかで合流しないか、だと?」