決戦 前編
結婚式当日。
俺は今、ある格好をして、テーブルの上に隠れている。
「さあ、続きまして、メインディッシュの七面鳥の丸焼きです!」
ゴロゴロと移動するのが振動で伝わる。
シルバーの蓋を被せてあるせいで、外の状況は分からないが、恐らく会場の定位置に着いたはずだ。
(蓋がどいたら、まず氷室ケイを確認。 剣を抜いて、俺と勝負しろ! って叫べばいい。 一瞬会場が騒然となるだろうが、マコトがフォローしてくれるハズだ)
この状況になる数日前、俺はニシノと合流していた。
その日、都内でニシノと待ち合わせをし、下克上の剣を受け取った。
場所は都内のつけ麺屋だ。
席に着くと、魚介類系の、ドロリとしたスープのつけ麺が運ばれてきた。
「ズズッ、あの赤いトカゲが、ズズッ、氷室ケイだったなんて、ね」
「そうなんす、ズズッ、マコトさんから、氷室ケイが婿に、ズズッ、なるくらいなら、ズズッ、俺になってほしいって、ズズッ、頼まれて」
「ズズッ、なるほど、ね」
「あ、ニシノさん、ズズッ、ちょっといいすか? ズズッ」
「ズズッ、何? ズズッ」
「店、一回出ましょう」
ズルズルうっとおしい為、カフェに移動する。
皇居内に入るためにいくつか案が出されたが、結局、メインディッシュになりすまして登場するのが、安全で簡単だという結論になり、今に至るって訳だ。
「七面鳥の丸焼き、ご開帳です!」
シルバーの蓋が外され、俺は立ち上がった。
「氷室ケイ、俺と勝負…… っ!?」
会場は、いくつか円卓が設けられているが、そこに座っているメンツを見て、こっちが逆に驚いた。
なんせ、どの面も一度はテレビで見たことのあるような、超大物ばかりだったからだ。
(す、すげぇっ、目の前に矢部首相がいるぜ……)
「めちゃ驚いたわ~、これ、出し物か? お堅い席のわりに、イケとるやん」
首相は感心している様子だが、他はそれどころではない。
すぐさまパニックの波が押し寄せ、悲鳴が辺りを包む。
会場を見渡すと、奧の長机にケイとマコが並んでいるのを発見した。
俺はそちらに向き直ると、腰の剣を抜いて、叫んだ。
「これは下克上の剣だ。 氷室ケイ、俺と勝負しろ!」
ところが、氷室ケイは耳をほじって聞こえないふりを決め込んでいる。
(野郎っ!)
司会者のマイクを奪って宣言するしかない。
七面鳥の衣裳を脱ぎ捨て、テーブルから飛び降りるも、既に警察の包囲の中だ。
「手を上げろっ!」
(くそっ……)




