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マコトサイド

冬篠宮マコト側です。

 今、私は氷室ケイのいる山形県の大蔵村を北上した森を目指している。

人工衛星から受信した情報によれば、ケイは義勇軍の攻撃を受けて、後退を余儀なくされているらしい。

 ちなみに、移動には車を使っており、車種はロールスロイスの初期ファントムだ。


(……この辺りか)


 車を道の端に止めて、今度はスマートフォンを取り出し、画面を切り替える。

グラスの上に赤い斑点が浮かび、これがケイの現在地を表している。


(……あの岩か?)


 眼前には身長程の岩が置かれている。

こっそりと裏を覗き込んでみた。


(……!)


 カサカサッ、と赤いリザードマンが姿を表した。

私は咄嗟に、懐に忍ばせていた吹き矢を取り出し、トカゲに向かって吹いた。


「ゲ……」

 

 見事命中。

睡眠剤の作用で、ケイは瞬く間に眠りについた。


「上手くいったか」


 岩から剥がれ落ち、地面に仰向けに倒れた所に近づく。

今度は、マセキを粉末にしたものを取り出し、リザードマンの鼻腔に近づけた。

粉が吸引され、グタリ、と体が弛緩する。

すると、少しずつ変化が起きた。

ボロボロと、鱗が剥がれ始めたのだ。






「……ぐっ」


「……元に戻ったようだな」


 のそり、と起き上がったのは、50代前半の、やや小太りで頭の禿げ上がった男。

彼こそが、氷室ケイである。

一度あくびをした後、私の方に向き直った。


「お兄様じゃねーですか。 ワシは、何しとったんですか?」


 口から放たれる匂いに、思わず顔を背ける。

この男、年齢云々以前に、歯を磨く習慣が無いのであろう。


「……あなたは、好奇心から研究所のトカゲに手を出し、逆襲を受け、自分もトカゲになってしまったんです」 


 驚いたのはその後で、まさかトカゲの王になるべく奔走するとまでは思っていなかったが……


「……おお、そうじゃった!」


「今日からおよそ一週間後に、皇居内で結婚式があることを、お忘れではありませんよね?」


「もちろんですとも! マコを幸せに出来るのは、ワシしかおらんからのぅ」


 ケイは顎に手を当て、二枚目風のポーズを取った。


(マコはダンディーな色気にやられた、と言っていたが…… 私には理解できんな)


 ……それにこの男、目的が皇室の権力なのだ。


「……運転は私がします。 準備がありますので、すぐに向かいましょう」


(彼が来ることを祈って、な)

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