本性
俺たちは車まで戻ってきた。
トランクに剣をしまい、スマホで道を検索する。
「……しばらく山道だわ。 どっかに店がありゃいいけど」
しかし、夜も更けている。
たまたま店があったとしても、やっているか分からない。
(仕方ねーか。 山ン中だし、コンビニがありゃ幸いだわ)
「ねー、ヒカリ! こんな所に亀がいるよ!」
「……は?」
あいつ、何寝ぼけてんだ?
パンクが指差した先には、丸い石が落ちていた。
……あ、そうか。
マセキを粉にして飲まなきゃいけねーんだわ。
「そいつで砕いて飲むか」
俺が石に手を伸ばした、その時だった。
「……!?」
ゴッ、という音が耳の近くでしたかと思うと、次の瞬間には、パンクのつま先が視界に入った。
「えっ、えっ、どうしたの!? ヒカリ!」
(はあっ!? 何だ、何が起きた?)
ゴト、と目の前に、血の付いた石が置かれた。
「……なーんてね」
頭を起こそうとしたが、鈍痛が走り、起き上がれない。
誰かが遠くで笑っていやがる。
「あははっ、おっかしー! 亀なんてここにはいないよ。 ヒカリって、やっぱりバカなんだね!」
……パンク?
わっけ分かんねー……
「……ぐっ」
既に、夜は明けていた。
俺は頭を持ち上げ、どうにか立ち上がった。
「……畜生」
すぐに事情を理解した。
どうやら、パンクに裏切られたらしい。
車が無い。
「……!」
慌ててケツのポケットに手をやると、案の定、財布を取られていた。
「……くそが」
フラフラした足取りで、周りを見渡す。
木、しかねぇ。
(こっから歩いて下山しなきゃならねーのかよ……)
俺は、手元にあるアイテムを確認した。
スマホ、マセキ……
たったこれだけか。
マセキを取られなかったのは、恐らく、もう興味の対象じゃ無くなったからだろう。
「……」
頭に手をやると、何故か、傷が塞がっていた。
(……トカゲの再生能力のおかげか? とにかく……)
体がトカゲの内に下山して、少し栄えた所でマセキを飲むか。
血が抜けてクラクラしやがる……
3時間ほどかけて、ようやく住宅地の付近までやって来た。
このまま街に出たら騒ぎになる可能性がある。
実際、腕と足は鱗で覆われているし……
俺は、手頃な石を手に取り、マセキを砕いた。
何度か繰り返し、粉末になったマセキを鼻から吸引する。
「……っ!」
すぐに、全身を幸福感のようなものが包み込んだ。
(……なんか、温泉に浸かってるみてーだ)
しばらく休んでいると、腕に付いていた鱗がポロポロと剥がれ落ちた。
効果があったらしい。
倦怠感で体を動かすのがしんどいが、どうにか立ち上がって、道路の方へ向かった。
(つーか、腹減った……)




