説得
「またそれかよっ! いい加減にしやがれっ」
だが、パンクはマセキを強く握ったまま離さない。
目には、強い意志が宿っていた。
「俺は、ずっと自分に自信が持てなかった。 だから、小中高とずっといじめられてたんだ……」
お、おいおい……
こんなとこで自分語りしてんじゃねーよ。
「このマセキは、そんな俺に勇気をくれるんだっ! これのおかげで、初めて自分から人に話しかけることが出来たんだっ」
「あー、うるせーっ!」
俺はとうとう怒鳴り声をあげた。
知らねーよ、自信がねーとか、人見知りがどうとか……
「そのマセキがねーと、俺とマコトさんが困るんだよ! それに、お前にとっても悪い話じゃねぇ」
俺は、パンクに殺人が帳消しに出来るかも知れない旨を説明した。
一瞬、パンクの瞳の色が揺らぐ。
「人生をやり直せるんだぞ?」
「……」
俺はマコトの方に向き直った。
「なあ、マコトさん、それくらいあんたなら出来るよな?」
「……」
ところが、期待した返事は帰ってこなかった。
「……私は国民の象徴で無ければならない。 権限は関係ないんだ」
「……!」
ばっ……
嘘でも帳消しにするっつっとけよ……
石頭か、こいつ。
「……それよりも」
少し溜めた後、マコトは言い放った。
「君が親王になればいい」
思わぬ返答に、俺はずっこけそうになった。
やっぱ世間と感覚ずれてるっぽいわ。
明らかに、ジョークを入れるタイミングじゃない。
俺が返答に窮していると、マコトは続けた。
「これから一週間後、皇居内で結婚式が行われるが、それに乱入するんだ。 正直、ケイが婿になるくらいなら、他の一般人の方がマシだと私は思っている」
「……は?」
「これは、私の忘れ物だ。 届けに来て欲しい」
マコトは、腰に携えていた剣を地面に置いた。
「下克上の剣。 これで勝負を挑まれたら、受けねばならないしきたりだ」
……!
本気か?
(もう、選択の余地はねーぞ。 パンクからマセキを取り返さないと、俺はトカゲになっちまう。 パンクを説得するには、俺が王様になって、その権限で罪を無効にするって言うしかねー)
「……その話、間違いないんだろーな?」
「ああ」
「……パンク、結婚式に乗り込むぞ」




