マセキ採掘 前編
「お、教えるから、落ち着いてよ!」
ふうっ、と息を吐き出し、俺はシートにもたれ掛かった。
「長野の和田峠。 そこに、マセキの採掘場があるんだけど…… 少し前に、地盤沈下が起きたって聞いてる」
「長野!? こっから目と鼻の先じゃねーか!」
だが、喜ぶのは早い。
「……今は、その採掘場はどうなってんだ?」
「分からない。 でも、日本でマセキが採掘できるのはそこだけだったと思う」
マセキを買うって方法もあるが、パンク曰く、知り合いのバイヤーはこの辺りにはいないらしく、しかも、かなりの高価って話だ。
採掘できる保障もないが……
「……行ってみっか」
現在地から国道113号線を南下。
長野自動車道に入り、山道を進むと、ようやく目的の鉱山周辺に到着した。
時刻は夜中の10時だ。
採掘現場駐車場、と書かれた看板が立っていた為、そこに停車し、降りる。
「っし、行くか」
道中、コンビニで買ったLEDのライトで足元を照らし、斜面を登る。
「な、なんか出そうだよね……」
こんな人気の無い山道だ。
パンクじゃなくても不安になる。
(採掘場までの道が舗装されてんのが、唯一の救いだわ)
しばらく歩くと、鉱山の入り口らしき所に到着したが、予想通り瓦礫の山で塞がれている。
「……こりゃ、無理だわ」
隙間がないか、辺りをくまなく照らしてみたが、人が入れる隙間はない。
諦めかけた時、遠くからパンクの声が聞こえた。
「こっちに来て!」
「……勝手に歩き回ってんじゃねーよ」
小言を呟きながらパンクの方に向かう。
「見てよ、これ!」
「……!」
ゴンドラだ。
廃材をかき出すためのゴンドラがある。
仕組みはどうなってるか分からないが、恐らく電動だ。
横にレバーの様な物がついている。
「こいつを下げたら、電源が入って、ゴンドラが動くのか……」
「遊園地の観覧車みたいだね」
レバーを下げると、ガコン、という音がしたものの、ゴンドラはびくともしない。
「……壊れてんのか?」
「……ブレーカーが落ちてるんじゃ無い?」
パンクの言うとおり、近くに動力盤があり、そこのブレーカーが落ちていた。
盤のフタを開けて、スイッチを上げると、ゴンドラが動き出した。
(スイッチがグラグラだ。 地震か何かで、勝手に落ちたのかもな)
俺たちは、ゴンドラに乗り込んで鉱山内へと降りて行った。




