日記
俺はヒロシの日記の一文を読んで、立ちくらみがした。
あいつ、俺らに好意を抱いてやがったのか……?
俺は更にページを読み進めた。
途中現れたパンクという男。
麻薬の密売に通じている悪党らしいが、この麻薬、マセキという名で、トカゲ化した人間を元に戻す作用もあるらしい。
義勇軍でも現在、マセキを採掘できる場所を探しているが、彼なら……
ここで日記は途絶えている。
俺は日記を車のダッシュボードに戻し、パンクを見下ろした。
ヨダレを垂らして、寝息を立てている。
(麻薬を売ってやがった上に、殺人まで…… こんな野郎はここに捨てて、やっぱりマルコを拾いに戻ろう)
俺は喉元にせり上がってくるムカムカを抑えるため、一旦自販機に向かった。
今、期間限定で売っているエーテル(桃風味)を150円で購入し、その場でがぶ飲みする。
「グビッ、グビッ……」
喉を一気にエーテルが駆け抜ける。
枯渇した大地に、100年振りに川が流れたみたいだ。
ところが……
「……桃が、流れてこねぇ」
慌ててもう一度飲むが、ピーチを感じられない。
ストレスで味覚が鈍っている?
(んだよっ、くそ!)
思い切りペットボトルを投げつけると、地面に跳ね返って俺の顔面に直撃した。
「ぐあっ!?」
俺はびっくりして、床に仰向けに倒れた。
遠くから、何あれ、だっさ、という声が聞こえた。
(……くそ)
ヨタヨタと車に戻る。
……落ち着け、と自分に言い聞かせ、運転席のドアを開ける。
「おっかえりー!」
何故かパンクのやつは助手席に座り込んで、ハイテンションで俺を出迎えた。
「……降りろ」
「えっ? なになに、聞こえないよー」
「降りろっつってんだ!」
胸ぐらを掴んだ、その時だった。
「ななな、何その腕っ!」
「……!」
俺自身も驚いた。
腕に、鱗みたいなもんがびっしりついていたからだ。
「はあっ、何だこれっ!」
俺はその鱗を払い落とそうとしたが、腕に張り付いている。
というより、俺の体の一部になってる?
「まさか……」
赤いトカゲの攻撃を食らった覚えはねー。
これは断言できる。
ってことは、緑の方か?
そっちなら、西の森で揉み合った時、かすり傷を受けた記憶ならある。
「……緑の方にも、感染力があるのか」
ある事実を知らなければ、俺は発狂していただろう。
そして、この助手席のトサカ野郎、つくづく悪運が強い。
「……マセキを、よこせ」
「ま、マセキ? もうないよ!」
「どこに行けば取れるか、教えろっ!」




