逃亡 後編
「ちょっと待ってくださいって!」
俺はスマホに向かってそう叫んだ。
くっそ、どうする?
ここは山道だ。
パンクの言った通り、ハンドルを一気に左に切れば、あの世に行ける。
(どっちについたら助かる!?)
俺は、まるで走馬燈を見るかの如く、目くるめく速さで頭を働かせた。
そして、一つの結論に達した。
「……すぐに折り返すんで!」
俺は一旦携帯を切った。
「パンク、車を路肩に止めろ。 ここで銃撃戦になったら、マジで命の保証はねーぞ」
「……車を止めた瞬間、俺を羽交い絞めにする気じゃないの?」
スマホがまた鳴り始める。
ちょっと待てっつの!
「お前を売ったりはしない。 路肩に止めてくれ!」
「……止めて、どうするの!?」
ゴクリ、と唾を飲み込んだ後、俺は答えた。
「……ヒロシを、殺す」
「……えっ!」
俺が考えた、一番犠牲を抑える解決法。
それは、ヒロシを射殺することだ。
銃撃戦になれば、俺たち3人の命が危険にさらされる。
それに、誰かを犠牲にするなら、ヒロシしかいない。
「先輩の務め、果たしてもらうぜ……」
俺はヒロシのスマホに出た。
「やあ、結局どうするの?」
「……結論、出ました。 パンクを渡すんで、車、止めます」
パンクが少しずつ車のスピードを緩め、路肩に止める。
そのすぐ後ろに続いて、ベンツも止まった。
「っし、降りろ。 お前が前を歩いて、死角から俺が銃でヒロシを狙う」
「……信じてるよ」
俺は後ろに手を伸ばし、床に転がっているサブマシンガンを手に取った。
ついでに、眠ったまま起きようとしないマルコを見やる。
(こういう時こそ、お前の知恵が必要だってのに……)
パンクが運転席から降り、こっち側に回り込んだのを見計らい、扉を開け、外に出る。
俺の銃が見えないよう、パンクのすぐ後ろに立つ。
ヒロシも車から降りた。
「良かったよ。 君たちを殺さないで済んだ」
ヒロシの片手にはハンドガンが握られている。
「さあ、こっちに来るんだっ!」
ヒロシがそう叫んだ瞬間、俺はサブマシンガンを構え、トリガーを引いた。
ガガガ、ガガガ、という銃声が森に響き渡る。
「……がはっ」
血を吐いて、ヒロシはその場に倒れた。
「はあっ、はあっ……」
こんな簡単に、人を殺せるとは……
胃酸が逆流してきそうになるのをこらえ、パンクに指示を出す。
「ヒロシを、森の中に隠すんだ」
ここは死体を隠すのには都合がいい。
車も通る気配は一切ない。
人に見つかる可能性は低いだろう。
「く、車は?」
「……ベンツに乗り換える。 お前の乗って来たやつじゃ、すぐ足がついちまうだろ」




