逃亡 前編
どうにかマルコを担いで車に入れるも、意識が戻らない。
パンクが車を発進させ、国道458号を南下する。
「マルコはダイジョブなの!?」
「わっかんねぇ…… 最悪、目を覚まさなかったら病院に行った方がいいかも知れない」
だが、こんな山道の途中にタイミング良く病院があるとは思えない。
道中で目を覚ましてくれることを俺は願った。
(全部、あのヒロシの野郎のせいだ……)
あいつが、俺たちを義勇軍なんかと引き合わせたから、こんな事になったんだ。
畜生……
その時、スマホに着信が入った。
「……」
噂をすればだ。
相手は、ヒロシ。
コールを無視し続けたが、一向に切れる気配がなかったため、仕方なく出る。
「……何すか」
あからさまに不機嫌なトーンで答える。
「任務、失敗しちゃったみたいだね。 今、どこ走ってるの?」
「……国道の458号線っすよ。 関係ないでしょ」
ヒロシは、いつもの間延びしたしゃべり方で続けた。
「パンクって子、そこにいるよね。 彼を刑務所に連れ戻さないといけなくてさ。 道中、どこか適当な所で引き渡して欲しいんだ」
「……」
俺は運転席の方を見た。
「……? どうしたの」
「……お前を釈放する条件あったろ。 それが達成できなかったから、義勇軍がこっちに来る」
「えっ! う、嘘でしょ!?」
……別に、俺にパンクを守る義務はないし、これ以上面倒事を増やしたくなかった。
内心、さっさと引き渡して旅の続きをやりたい。
マルコが無事だったら、な。
「わりぃ、パンク。 コンビニかどっかで止まってくねーか?」
「……嫌だ」
マジかこいつ……
このまま、この車で逃げるつもりか?
「おい、ふざけたこと言ってんじゃねえぞ!」
俺はパンクの肩を掴んで、強めの口調で答えた。
しかし、スピードは緩むどころか、加速し始める。
「てめっ……」
ブブブ、とまたしてもスマホが鳴った。
キレ気味に通話に出る。
「……今度は何っすか!」
「ごめんごめん、今、国道を走ってるんだけど…… あ、いたいた」
俺がバックミラーを見ると、後ろから見覚えのある車が追いかけてきていた。
赤のベンツ。
失敗した時のことも考えて、初めから近くで待機してたのか?
「止まった方がいいよ。 パンク君をかばうんだったら、遠慮なく銃を撃つ」
スマホから物騒なセリフが聞こえて来やがった。
こんな所で銃撃戦とか、冗談じゃねえぞ……
その時、
「嫌でも、協力してもらうから」
突然、パンクがそんなことを言った。
「もし、義勇軍に俺の身柄を渡すって言うんなら、ハンドルを思いっきり切って道ずれにしてやる……」
はあっ!?




