秋田 前編
店から出ると、ちょっといいか、とマルコを引き留めた。
「コンビニで金おろしてくわ」
「……ああ、喫煙スペースにいとくぞ」
俺はセブンに入り、ATМで5万をおろした。
残高はあと15万だが、無くなったら借りるか、最悪ホストをして稼げばいい。
外にある喫煙スペースに向かうと、マルコが缶コーヒーを渡してきた。
「おっ、サンキュー」
「次の目的地だが、秋田の男鹿ってとこに行ってみないか?」
男鹿は秋田の港街で、この時期花火大会が行われれるらしい。
「花火か、思い出作りにいいかもな。 でもそうなると、結構時間つぶさないとダメじゃねーか?」
現在時刻は1時だ。
秋田に入るまで3時間ちょいかかるにしても、花火までは全然時間がある。
「ああ、だから道中、寄り道をしてこうと思う。 十和田湖で時間を潰して、7時ごろ旅館に到着するようにすれば丁度いいだろう。 次は俺が運転するから、キーを貸してくれ」
「了解」
キーをマルコに渡して、コーヒーを飲み干した。
駐車スペースに戻ると、助手席に座る。
車を走らせ、現在地から国道102号線に乗り入れ、十和田自動車道に合流。
2時間ほど進むと、湖が見えて来た。
この道沿いに車を止めるスペースがあり、一旦降りる。
「……へえ~、でかいな」
湖は青森と秋田にまたがっており、ここら辺にある湖の中じゃ一番でかいらしい。
湖では、遊覧船以外にも、スワンボート、カヌーなんかをして楽しんでいる客がいる。
「きりたんぽを売ってる店があるぞ」
マルコにそう呼びかけられたが、まだそんなに腹は減ってない。
「旅館についたらでいいわ。 そういや、まだ予約してないよな?」
「いや、もう入れてある。 カッパ旅館、という所だ」
……カッパ?
「なまはげじゃねーの?」
「カッパ、だそうだ」
マルコが意地の悪い笑みを浮かべる。
……まあ、どこでもいいけど。
ここで1時間ほど休憩して、時刻は4時。
俺たちは再度車を走らせた。
車はずっと山道で、途中、樹海ラインなる道に入り、東北自動車道、秋田自動車道を通過。
気づいたら俺はうたた寝をしていた。
「……カリ。 ……ヒカリ」
誰かにゆすられている。
「……ンだよ」
俺が目をこすって周りを見渡すと、正面には海が見えていた。
「……おわっ! ついたのかよ!」
「ああ、とりあえずチェックインしよう」
車から降りて、古ぼけた旅館の中に入る。
「予約を入れておいた井口です」
「井口様、確認を取りました。 どうぞ、おあがり下さい」




