青森 前編
「……!?」
ガアン! という衝撃音。
EKワゴンの扉が吹き飛ばされた。
「嘘だろっ……」
普通、目の前を走っている車が扉を開けたら、反射的にブレーキを踏むはずだ。
それなのに、あの女、アクセルをふかして加速しやがった!
結局、ゴールを制したのはランボルギーニだった。
「……」
俺は車から降りると、黙ってEKワゴンにケリを入れた。
「……クソッ」
「残念だったね。 まあ、惜しかったとは思うよ」
ニシノは車から降りるなり、俺に向かってそう言った。
マルコは、吹き飛んだ扉を掴み、それを引きずっている。
「……これじゃ、修理に出さないと車は運転できないな」
「……わりい、マルコ」
すると、ニシノがスマホを取り出し、どこかに連絡を入れた。
どうやら、連絡先はJAFのようだ。
電話を終えると、ポケットにスマホをしまう。
「レッカー頼んどいたからさ。 で、約束通り義勇軍に入ってもらおうと思うんだけど…… あなたたち、銃って使える?」
……銃?
「……無理っす」
「だよねー。 まあいいわ、とりあえず乗って」
ニシノがクイ、と親指でランボルギーニの後部座席を示したが、ちょっと待て。
「……俺たちを、どこに連れていくつもりっすか?」
「青森にある、西ノ森、って所。 詳しいことは移動しながら話すわ」
どうする? とマルコの方を見る。
さっき、銃って話が出て来た。
危険匂いもするけど……
「……負けた以上、仕方がない」
「……分かったよ」
東北自動車道を北上。
車は森の中を走っていた。
「……で、俺たちは何を協力したらいいんすか?」
俺が質問すると、ニシノは少し間を置いた後、話始めた。
話の発端は3,11の震災に遡る。
その時、原発の事故によって放射能がまき散らされ、近隣に住んでいた生物に異変が起きたらしい。
凶暴化、だ。
義勇軍のメンバーに、DNAの研究をしている者がいて、そいつが凶暴化した生物を回収した。
理由は、この生物を研究し、生産にこぎつけ、北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるためだ。
ところが最近、青森の研究施設から、その生物が逃げ出したとの報告を受け、ただちに始末しなければならなくなった、というのが話の全容だった。
「……尻ぬぐい、っすか」
「そういうこと」
……かなり間抜けな話だ。
「これ終わったら、とりあえずは開放してあげるから」
森の中を散策するのに、人手がいるって訳か。
森の中を当てもなく散策するなんて、相当面倒に違いない。
「これ、ターゲットの姿ね」
ニシノがスマホを寄こしてきた。




