岩手 中編
パンクを交番に届け、丸中に到着したのは3時だった。
「思ったより、時間食っちまったな」
車を脇道に止め、店内に入る。
店の中は、普通のケーキ屋のように、ガラスのショーケースが並べられており、そこにロールケーキ、お目当ての東雲が置かれていた。
東雲は、見た目は白い羊羹のような形をしており、中にくるみが入れられている。
バラで売っていなかったため、12個入りを一箱購入した。
「っし、車内で食うか」
店を出て、車に戻ろうとした時だった。
俺のEKワゴンの後ろに、何やらでかい車が止められている。
「……なんだありゃ?」
「ランボルギーニ、だな」
ランボルギーニ?
何か嫌な予感がするな……
ヒロシのベンツといい、高級車にはいい思い出がない。
案の定、そのオレンジの車体から一人の女性が出てきて、俺たちに向かって手を振って来た。
「やあ、待ってたよ!」
全く面識のない女だ。
女性は、金髪を肩になびかせ、体にフィットするTシャツとパンツを履いている。
スタイルがいいため、ちょっと目のやり場に困る。
「……誰でしたっけ?」
「私はニシノ。 義勇軍の創設メンバーの一人よ。 ヒロシにあなたたちの相手をするよう頼まれたのよ」
……義勇軍!?
ってか、またヒロシの野郎か!
「……無理して付き合わなくってもいいっすよ」
「面白そうだと思ってさ、私は迷惑じゃないから!」
……こっちが迷惑なんだが。
「とりあえず、勝負しようよ。 私に負けたら、義勇軍に入ってもらうから」
「な、何で入らないといけないんすか?」
「……だってほら、これからミサイルが落ちてきたら、私ら搾取されるわけでしょ? それに抵抗するのは若い君たちの仕事じゃない?」
搾取、というのは、ミサイルが落ちて日本の機能が麻痺した場合、待ってましたとアメリカがやって来て、日本を乗っ取ってしまう可能性があるらしい。
その時、各国に日本人は労働力として分配される、とニシノは語った。
かなり極端な話な気もするけど。
「それはいいんですけど、俺たちが勝ったら何してくれるんすか?」
「んー、そうね。 1日だけ旅に同行してあげよっかな!」
……微妙な条件だ。
「ちょっと待っててください」
俺はその場から少し離れ、マルコと相談した。
「ランボルギーニ相手じゃ無理だろ?」
「……いや、案外分からない。 もし相手がこっちの条件を飲めば、勝ち目はある」
条件?
「一般道での勝負なら、速度は60キロしか出せない。 そして、あの車体の性質上、俺たちに分がある」




