岩手 前編
これ以上飯は食えないと判断した俺たちは、例のごとくスイーツの店を探した。
「丸中、という和菓子の店はどうだ?」
ここに売っている、東雲という菓子が有名らしい。
「んじゃ、そこにすっか」
東北自動車道を進んでいる道中、車内ではラジオが流れていた。
「……では、次のニュースです」
流れてくるのは、北朝鮮のミサイルの話か、皇族の結婚の話だ。
「ほとんど、交互に聞かされてるって感じだわ」
「……ああ、だが、少しは明るいニュースがあって良かったな」
確かに、ずっとミサイルの話を聞かされるのは色んな意味でキツい。
義勇軍の存在、アレは知らない方が良かったかも知れない。
「ヒカリ、次のインターを降りてくれ」
マルコの指示に従い、滝沢インターから奥州街道に合流、更に北上していく。
「……ん?」
その時、俺の視界に変なもんが入って来た。
何か、ニワトリみたいなやつが、ノートを掲げて道端に突っ立っている。
そこには、青森、と書かれていた。
「……ヒッチハイカーか?」
俺はスピードを緩め、路肩に車を寄せた。
「止まってくれるとは思わなかった! 助かったよ」
とさか頭で、髪の色は赤。
上下ジーンズ、というかなり目立つ格好をしている。
「……乗ってくか?」
「マジ!? すっげー嬉しいんだけどー!」
後ろの座席に男を乗せて、再度車を発進させる。
男の名前は、パンク、というらしい。
かなりおしゃべりな男で、乗せたのを少し後悔した。
「俺さー、全国をヒッチハイクで旅してて、写真とかとってるんだ。 こんなご時世じゃん? やりたいことはやっとかないとさ」
……少し意外だった。
こんなちゃらんぽらんな奴でも、ちゃんとニュース見てんだな。
「何かこれ、運命の出会いっぽくない? 目的地、青森だったんだけど、君らに同行してもいい?」
「えっ……」
マジかよ……
マルコと顔を見合わせる。
その時、ラジオが次の話題を告げた。
「えー、昨夜、岩手県内で、通り魔による殺人事件が発生しました。 殺されたのはトラックの運転手で、犯人はいまだ逃亡中とのことです」
「あー、ニュースって辛気臭いよね。 音楽流さない?」
「まさか、お前が通り魔だったりしてな」
……んなわけねーか。
ジョークだよ、と後ろを振り返ると、パンクがプルプル震えていた。
「……何で、バレたの?」
……えっ。
この後、パンクを交番に連れて行き、身柄を拘束した。
話によると、ヒッチハイクで乗せてもらったトラックの運転手がオネエで、襲われそうになったから後頭部を灰皿で殴打したとのことだ。
「……行くか」




