プロローグ
「……やっぱ、つれえわ」
俺の名前はヒカリ。(本名は山下卓)
新宿のナイトファンタジーっていうホストクラブで働いていて、大学在籍中にナンバー1を取ったんだけど、就職を機にやめることになった。
それで、最後の思い出にクラブのメンバーで日本一周、グルメツアーの旅に行こうと思い立って、店の更衣室に張り紙をしておいた。
以下、内容だ。
離島を除く、日本一周グルメツアーの旅をしませんか?
各都道府県の郷土料理を一品ずつ食べて、日本を回ります。
車の席の都合上、先着3名までとします。
決行日は8月の1日で、朝8時に俺の住んでる最寄り駅で待ってます!
そして今日がその当日なんだけど……
「誰も、来ねえ……」
改札からすぐ出た所の柱に背を持たせて、俺はスマホを見つめていた。
あと1分で8時だ。
1人で日本一周とか、めちゃくちゃ心細いじゃねーかよ……
電車が到着し、改札から人がたくさん降りてくる。
俺は、どうせ誰も来ねえ、と高をくくって自分の車に向かった。
その時だった。
「待たせたな」
「おまっ、マルコ!」
マルコ(22)は、俺の同期だ。
いつも知的な雰囲気を漂わせていて、クラブでも安定の人気を保っている。
「お前一人じゃ心細いだろ。 俺が付いて行ってやる」
……こいつ、頼りになるわ。
俺は内心マルコに感謝して、路肩に止めてある車に向かった。
駅から出て道路を渡ると、俺のEKワゴンの前に赤いベンツが止めてあった。
そして、そのベンツから見覚えのあるやつが出てきた。
ハットをかぶり、無精ひげを生やした男。
ナンバー2のヒロシ(30)だ。
俺は立ち止まって、ぶっきらぼうに言い放った。
「……何のつもりっすか」
「本当のナンバー1を決めようと思ってさ」
ヒロシは俺が在籍していなかった頃のナンバー1だ。
俺が入店して人気をさらうようになると、靴に画びょうが入ってたり、ロッカーの荷物が無くなったりしたことがあったが、多分こいつの仕業だ。
他のメンバーとはトラブったことはなかったし、こいつには動機がある。
「……邪魔しないで下さい」
だが、ヒロシは俺のセリフを無視して、車に近づいた。
「これ、中古車? 何でこれにしたの?」
……このEKワゴンは、ググったら10万以下で売ってたから買った。
特に深い理由はない。
「安かったからっすよ」
「ふうん。 まあ、いいけどさ」
ヒロシは前のベンツに乗り込むと、エンジンをふかして出ていった。
「……何だったんだ」
「急いだ方がいい。 あいつ、俺たちと張り合う気だ」
「……マジか!?」
急いで運転席に乗り込み、キーを回す。
こんなバタバタなスタートを切ることになるとは。
ヒカリ→ノク〇
マルコ→イグ〇ス
ヒロシ→アー〇ン
をイメージしてますw