表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

「進展すればいいとは言ったけど、豪く早いな」

 いつもの喫茶店で、いつものエスプレッソを飲みながら、高科は素直に驚いたように言った。香織さんからは話が行っていないようで、目を丸くしている。

「本当にね。僕もそう思わないでもないよ。人生ってこんなにうまく行くものだっけって思ってる」

「やめてくれよ、幸せオーラ出すの」

「出ちゃってる? ごめんごめん」

「気持ち悪いな、キャラクタが違いすぎる」仰々しく顔をしかめると、「まあ頼んだのは俺だし、そうなってもいいんじゃないかとは思ったけどさ。どこか違和感があるのは俺だけか?」

「違和感?」真面目な声音で問われるので、こちらもふざけるのはやめる。「まあ、ないことはないよ。やっぱり、うまく行き過ぎているような気はする。だって香織さん、失恋したばかりなんだろ?」

「うん。立ち直れないくらいにズタボロだったはずなんだけど。まあ、お前がそれくらい魅力的だったのかもしれない、姉ちゃんにとっては。何はともあれ、良かったよ」

 釈然としないが、僕にしてみたって美奈子やミナコからの復帰は早かった。ほかに何かを見つけられればそういうものだと思う。それに僕以外にも、姉だって正孝さんに振られて、それでもそこまで落ち込んでいるようにも見えなかった。何かが欠けた分、補ってくれる何かがあれば、案外元気で居られるものだ。姉にとってそれは多分仕事で、香織さんにとっては望み通り僕がその立場に収まれたということなのだろう。

「深く詮索するのはやめておくよ。彼女が本当に僕を好きで居てくれるのかはわからないけど、そう言ってくれたことは嬉しいし、結局、やることは変わらないからね」

「まあ、女心はなんとやらって言うしな」

「そうそう。もしまだ本心から忘れられていないんだとしても、僕がそれを忘れさせればいいだけの話で、大した問題じゃない」

「今回はやけに自信家だな」高科はそう言って笑ってから、ひとつ頭を下げた。「どうか姉ちゃんのこと頼むよ。今度また大きく落ち込むようなことがあったら、見ていられない。引き受けて、その立場になったのならば、姉ちゃんにそういう思いはさせないでくれよ。親友と言えど、もしそうなったら俺はお前のこと一生恨むよ」

 高科がそこまで香織さんのことを気に掛けている理由はわからない。家のこととなると、いくら付き合いが長かろうと、なかなか立ち入りにくい部分である。事実僕は自分のことはともかく、家族のことを余り高科に話していない。お互い様だ。

「大丈夫だよ」それは少し、自分に言い聞かせている言葉でもあった。「任せてくれ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ