~side レンカ~ レンカから見た先生の背中
私は破壊王ゴルドンさんのステータスを聞いた時に、もしかしたら先生は負けるんじゃないかって思った。
だって、力と頑強さはS級で、苦手そうな素早さも魔力もA級だったんだ。
それに対して私の先生は、ステータスが全部最低のF。
私達人形使いにステータスは関係無いって言ってたけど、正直まだ信じられなかった。
でも、先生は自信満々に見てろ。って言ってくれる。
本当に勝つつもりでいる先生に、私はもし先生が勝ったら、私ももっと頑張ってみようと思った。
勇者のアルフレッドさんの合図で試合が始まる。
あ、いきなり先生が攻撃された!? ゴルドンさんあんな大きいのに、すごい速い!
って、先生が避けた!? あんなすごい攻撃を本当にステータスが最低の先生が避けた……。
もしかしたら、本当に人形使いも戦えるの? みんなにバカにされない強さを持ってるの?
先生お願いします。私にもほんの少しで良いから先生の強さと自信をください。
だから――
「先生! 負けないで!」
思わず大声で叫んじゃった。
「レンカ!」
先生が私の声に応えてくれる。うるさいとか、試合の邪魔をするなとか怒られるのかな……?
あー……失敗しちゃったなぁ。私は落ちこぼレンカなのに、こんなこと言って良い訳ないのに、夢見ちゃいけないのに。
「よく見とけ!」
先生はあんな攻撃を見たのに、まだ自信満々で、私に背中を見せてくれている。
すごいなぁ。先生の背中ってあんなに大きく見えるんだ。かっこいいなぁ。
「はい!」
見逃すもんか。先生の動きを全部私は見て覚えるんだ。
ゴルドンさんがすごいジャンプを見せて、先生が迷わずに真っ直ぐ飛び込んだ。
先生は真正面からゴルドンさんの必殺技を避け、剣を振り抜いてゴルドンさんを吹き飛ばす。
カッコイイ! 何であんなすごい動きが出来るんだろう!? 伝説の勇者みたい……。
見てろ。って言われたけど、もう目が離せない。
もっと先生を見ていたい。
「メテオインパクト!」
先生が空中から地面に落ちたゴルドンさんに向けて、強烈な一撃を打ち込んだ。
すごい! ゴルドンさんの技を一回みただけで盗めるんだ!
スキルなんて一つもないのに、魔法だってないのに、ステータスも私と同じ最低なのに、それなのに先生は別世界の英雄に勝った!
「見たかレンカ! 俺の勝ちだ!」
はい! 見てました! 一瞬も目を離さず見てました!
すごいです。先生は本当にすごいです! 本当に人形使いでも戦えるって教えてくれました!
「先生! すごいです先生! 勝っちゃいました! 本当に勝っちゃいました! すごいです! 人形使いが勝ちました!」
ビックリして嬉しくて自分でも何言ってるか良く分からなくなっちゃった。
「バカな!? あの動きFランクの動きじゃないぞ!?」
「あのスピードは素早さA以上ないと出来ないはず。それに空中で速度を緩めたり、早めたりしたあの動きは何だ!?」
「あの指導官本当に人形使いなのか!? もっと別の職業なんじゃ!? アサシンとかじゃないのか!?」
みんなが信じられないって言ってるけど、私の先生は私と同じ人形使いだ。
それで、誰よりも格好良くて、強い、すごい先生だ。
「レンカ、覚えたか?」
「はいっ! カッコ良かったです!」
とってもカッコ良くて、きっとこの日の試合は二度と忘れられない。
「ありがとう。って、いや、そうじゃなくて」
「はいっ! バッチリです! ちゃんと覚えました!」
「なら、身体を張ったかいがあったかな」
先生が照れたように笑っている。
先生は本当に格好良いなぁ……。
そう言えば、人形使いの力は最強の自分を妄想することだって先生は言ってたっけ?
どうしよう。私の最強の人はもう物語の勇者様じゃなくなっちゃった。
先生の姿が私の思う一番強い人になっちゃった。
先生みたいに強くなりたい。もう落ちこぼレンカは止めよう。
先生の弟子だって、胸を張って言えるほど強くなりたい。
先生、私を強くして下さい。先生の全部が欲しいです!