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試合の後で

 私が着地しても、シエラちゃんは立ち上がる気配が無い。

 先生もしかして私勝てたんですか!? って、あれ? さっきまでいた場所に先生がいない?


「レンカ! よく頑張ったな!」

「あ……えへへ」


 先生がいつのまにか私の真横に立って、頭を撫でてくれている。


「勝者レンカ!」


 審判が私の名前を呼んでくれた。

 勝ったの? 私が?


「先生……私勝てたんですか?」

「あぁ、本当によく頑張ったな。レンカは強くなった」


 あれ? おかしいな。すごく嬉しいはずなのに、身体に力が入らない。

 人形操作の糸も切れちゃった。

 あ、ダメだ。倒れる。


「レンカ!?」

「ご、ごめんなさい。何かホッとしたら気が抜けちゃって……。身体動かなくて……」


「全力出し切ったんだな。本当によくやった」


 倒れそうになったら先生が支えてくれた。ちょっとラッキーかも。

 って、そういえばシエラちゃんも倒れてたけど、大丈夫かな?

 治癒魔法かけてもらってるけど、あ、起きた。


「いっつつ……あー、そっか。あたいは負けたのか」

「シエラァァァ!」


 あ、ゴルドンさんも降りてきた。相変わらず声も身体も大きい人だなぁ。

 笑顔なのに何か不思議と熱いというかやる気が感じられるというか、全力な人だ。


「ごめんなさいゴルドンの旦那。あたい負けちまった……。旦那の顔に泥を塗っちまったよ」

「シエラァァァァ! 歯ぁ食いしばれ! この大馬鹿モノがあああああ!」


「ぐはぁっ!?」


 シエラちゃんが殴られて飛んでる!?

 私が勝っちゃったから殴られちゃったの? あんなに全力で笑っていたのに何で!?


「シエラ! 何で殴られたか分かるかぁぁぁ!?」

「あ……あたいが無様な試合を見せたからか?」


「違あああああう! この大馬鹿モノがぁああああ!」

「ぐはぁっ!?」


 また殴られた!?

 回転してるよ!? ぐるぐる回ってるよシエラちゃん!?


 せっかく治療して貰ったのに傷だらけになっちゃうよ!?


「勝った負けたなど、どうでもいい! だがな、シエラ! てめぇは何よりも大事なことを忘れている!」

「だ、大事なこと?」


「全力で戦ってくれた相手への敬意だ! 試合が終わり真っ先に気にするのが我が輩の面子とは何事か! レンカはお前に本気で応えた! お前も本気で戦った! そして、この度はお前より強かった! そのレンカに対する敬意を真っ先に示さず、己に対しても敬意を払わず、面子ばかりを考えおって! 心の筋肉が足りんぞ!」


 相変わらず何を言っているか良く分からないけど、シエラちゃんが悔しそうな顔してる。

 そういえば、ゴルドンさんって先生との試合が終わった後、握手しようとしてたっけ。

 私も全力で戦ってくれたシエラちゃんに握手とかした方が良いのかな?


 そう思って先生を見てみると、引きつった笑顔をしていた。


「先生、握手してきて良いですか?」

「あぁ、うん、行ってこい」


 背中をポンと押されて、私は倒れたシエラちゃんの前に立った。


「シエラちゃん、本気で戦ってくれてありがとう。何というか、怖くて、痛かったのに、すっごく楽しかったです」

「おぉ、何という心の筋肉! レンカよ。お主はやはり強い! さすが宗一殿の弟子だ! 見てみよシエラ! これが心の筋肉の強さと輝きだ!」


 何か良く分からないけど、ゴルドンさんに褒められた。

 さすが先生の弟子かぁ。えへへ、やった。ちゃんと先生の言葉を証明出来た。


「レンカ……あたいの完敗だね。戦う強さも、心の筋肉もあんたにあたいは負けた。ゴルドンの旦那に殴られて、目が覚めた」

「そんなことないですよ。シエラちゃんだって強かったです。一回でも攻撃を受けたら私が負けていたでしょうし、ギリギリでした」


「よーっし! 決めた!」


 うひゃっ!? シエラちゃんが急に目の前で大声を上げたからビックリした。

 しかも、何故か自分の頬を叩いてるし、どうしちゃったんだろう?


「レンカ! あんたは今からあたいの親友だ!」

「へっ?」


 シエラちゃんがいきなりがっちり両手で私の手を握って、いきなり親友って言った。


 あまりにも唐突過ぎて、意味が分からなかった。

 親友ってなんだっけ? というか、私ここに来てから友達すらいなかった気がするけど、え!? シエラちゃんが友達じゃなくて親友!?


「これから毎日一緒に訓練しようぜ!」

「え!? えぇ!?」


 どうしよう戸惑っている間に話がどんどん大きくなってる!?


「落ちこぼレンカなんて言ってるバカがいたら教えろよ! あたいが全員ぶっ飛ばしてやる!」

「えぇぇぇ!?」


 どうしよう!? そんなことになったらシエラちゃんが一人で九十人くらいと戦うことになっちゃうよ!?

 あわわ。先生、どうしよう!? って、先生そんな嬉しそうに笑ってないで助けてください!


「えっと、その、あの!」

「おう! 何でも言ってくれ。レンカ!」


 分かんない。分かんないけど、すっごく嬉しい!

 だから――。


「よろしくお願いします!」

「おう! よろしく! レンカ」


 先生、私に初めて友達が出来ました。

 喜んでくれますか? 私に友達が出来てもいいんですか?


「うむ! そうだそれでこそ筋肉と筋肉がぶつかりあった試合後のあるべき姿だ! 良いぞシエラ! 心の筋肉をグッとつけたな!」


 って、ゴルドンさんのせいで、優しい顔した先生がまた微妙な笑顔に!?

 あぁ、もう! と思ったら――。


「良かったなレンカ。こればっかりは俺の姿じゃない。お前が自分でつかみ取った姿だ」

「あ……」


 先生が優しい声と一緒に頭を撫でてくれた。

 大きくて柔らかい手が頭の上を行ったり来たりする。

 この手なら、きっと喜んでくれている。


「はい。ありがとうございます。先生!」


 先生は俺の姿じゃないって言っているけど、先生が私を強くしてくれたおかげだ。

 嬉しくなって先生の方を見上げると、先生は優しく笑っていた。

 でも、残念ながら長続きはしなかった。


「宗一殿! 弟子の健闘をたたえて、師匠同士も筋肉による同盟を結ぼうではないか!」

「筋肉による同盟って何!?」


「ともに鍛錬し、弟子により強い筋肉をつける同盟だ! もちろん身体の筋肉だけではない! 心の筋肉も鍛えるぞ!」

「言っていること自体はマトモなのに、その響きだけはどうにかなりませんかね!? 後、顔近いです!」


 先生逃げちゃったよ!? って、ゴルドンさん追いかけ始めた!?

 もう、ゴルドンさんのバカァァァ!


「行こうぜレンカ。旦那達を追いかけないと!」

「そ、そうですね! 先生はゴルドンさんに渡しません!」


 全速力で逃げる先生を私はシエラちゃんと笑顔で追いかけた。

 ここに来てから、こんなにも身体が軽いのは初めてだった。

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