序章 第3話急転
気が付いてみると、今年も残すところあと僅
かとなりました。
あっと言う間の1年!
時間は誰にも平等だが、意識する時間はそう
では無いと言います。
子供の頃の1年と、現在の1年は何故こんなに
も違うのでしょうか?
と言う訳で4話目です。
嘗てこの地上には、神族、竜族、妖精族、鍛冶族、長耳族、そして人族が在り、各種族は互いに深い交流は無かったが、その分棲み分けが出来ており、多少の諍いはあっても神族の仲介等で深刻な問題にならず、概ね平和に暮らしていた。
そんな中、ある時竜族の若竜と人族の若者が、些細な諍いから決闘騒ぎを起こした。
勝負の初めは若竜の方が部が良かったのだが、若者が若竜の身体を傷つけ、その時吹き出た生き血を呑んだ事により、状況が一変する。
竜の生き血には不思議な力があり、その竜の力を手に入れた若者は、元々持っていた彼自身の力に上乗せされた力を持って若竜を圧倒し、遂には若竜を倒してしまった。
この事実を知った人族の支配者達は色めき立った。今迄絶対に歯が立たないと思っていた竜族に、対抗出来る手段を知ってしまったからである。
人族の支配者達は狡猾だった。表向きは竜族に阿り、若竜を倒した若者を罰したが、その実彼を匿いその多大なる戦力の温存を謀った。そして人族の間にある噂を流した。
曰く『竜の血を呑む事により、竜の力を手に入れる事が出来る。』
この噂に多くの人族が惑わさられ、竜族狩りが開始された。
始めは竜族狩りを嗜める立場を取っていた人族の支配者も、徐々に戦力が溢れて来るに従い好戦的な立場を取り始め、遂には戦争に発展した。
その過程で、配下の者達に竜の血を持って来させた人族の支配者はしかし、その血を呑んでも何の変化も無かった。
調べていく過程で解ったのは、必要なのは竜の生き血で、それも竜の身体から取り出して2.3分以内の物で無ければ、効果は表れないと言う事実だった。
この為戦争が始まると、人族の支配者達は盛んに戦場に出て竜の生き血を求めたと言う。そしてその姿は余りに浅ましく醜悪で、事の次第を知った神族でさえ辟易し、本来なら人族の愚考を嗜める筈なのに、それをせず、何処かに姿を消してしまった程であったと言うのである。
神族の居なくなった世界での、人族のその後の勢いそして欲望はもはや留まる処を知らず、竜族を滅ぼした後は、その余波をかって鍛冶族、妖精族、長耳族とを立て続けに滅ぼし、遂には人族同士で争うに至ったと言う。正に人族の愚かさ此処に極まれりであった。
閑話休題
青竜の生き血を呑んだ事により、彼は嘗ての人族同様、劇的な変化を遂げようとしていた。
「ガァ!」
彼が竜の生き血を呑むと直ぐに、全身の筋肉が硬直したかの様に、彼自身の身体を抱え苦悶の表情を浮かべた。
しかし実際は筋肉の硬直では無く、活性化だった。竜の力は余りに強大であるが故に、その生き血を呑むことによって、竜の力を手に入れようとする時に、徐々にでは無く一気にその力が入って来る為、途轍も無い苦痛が伴うのである。その時、
ズシン
彼の目の前から重い音が聞こえて来た。
青竜が暴れまわっているのである。青竜は先程受けた傷で予期せぬ苦しみに我を忘れていたのである。
只の生物では無い至上最強の青竜が暴れまわっているのである、その破壊力や周囲に及ぼす影響は並大抵の物では無かった。周辺一帯に地鳴りが轟き、青竜が踏んだ足跡や振り下ろされた尾の先では、地割れも起きていた。
さらにその青竜の無作為に振り回されていた尾が、苦悶する彼目掛けて襲いかかって来たのである。
危うし!
されど、先程迄眼にも止まらぬ速さで繰り出され、感覚だけで避けていたために、今またしかも無作為であるが故に、先程以上の速さで迫る尾を、あろうことかまるで見えているかの様に、素早く迫る尾を眼で追い、さらに紙一重で躱しきった。
竜の力を手に入れた今の彼には、全てがまるでスローモーションの様に見えているのである。
今度は竜の爪が彼に迫って来た。それを難なく躱しつつ、竜の腕を足場に一気に胴体に辿り着くと、先程差した脇差を抜き反対側の地面に着地する。
グキャアアアアアアアアアアアア
僅かに理性を復活させた青竜は、3度目の炎を彼に向かって吐こうとしていた。
しかし、それよりも速く彼は竜の顔前に跳躍しつつ腕を振り上げると、鼻先に向かって肘打ちを喰らわせた。
ボォン
グギャビャア
炎を吐こうとしていた青竜の口が閉じられた事により、口内で炎が爆発し青竜が情けない声を上げる。
彼が腕を放すと青竜の口が無様に開かれた。
彼は刀を抜きまず正眼に構えると、そのまま前屈姿勢になり刀を水平に構え直した。
「さらばだ!気高き《古の叡智》よ!」
そう静かに叫ぶと、彼は消えた。いや消えた様に見えて、次の瞬間には
青竜の頭部が内部から破壊され、そこから彼が突き出て来たのである。
そのまま青竜の尾の先に着地した彼が刀の鋒を確認すると、団子程の大きさの肉の塊が引っ付いているのが解った。
彼は知らなかったが、それは青竜の脳髄の核だった。
暫し不思議そうに眺めていたが、不意に彼がそれを口にした。
彼が竜に見出され、竜に選ばれた瞬間であった。
次回も一週間後以内です。よろしくお願いし
ます。