序章 第9話死力
気付けばもう2月ですね。あっと言う間に今
年も一月経ってしまいました。
と言う訳で10話目です。よろしくお願いします。
シオンが鍛錬と読書に精を出している間、ディレクは刀と弓の製作に丹精を込めていた。
鍛冶族は読んで字の如く鍛冶に特化した種族である。人族や長耳族と比べると身長が低く全体的にずんぐりとしているが、力が強く手先が器用で全体的に鍛冶師としての天性の才能を持つ者が多いのである。ましてディレクは鍛冶族の長として長きに渡り鍛冶族を纏めて来た男である。その鍛冶師としての才能は推して測るべきであろう。
そのディレクにしても竜族の鱗を使っての製作は久々の大作となり、シオンに語った通り文字通り身命を賭しての大作となった。
只の剣ならディレクもそこまで拘りはしない。しかし、これから作ろうとしている刀には、亡き友の思いが詰まった竜の鱗が使われる、そしてその素材の力を最大限活かす為には、自らの生命力を掛ける必要がある。もっと若い頃ならばそれでも体力を限界近くまで削られるだけで、済んでいたが、現在の彼は死ぬ一歩手前と迄はいかないがかなりの老齢であり、一歩一歩完成に近づく度にゆっくりとしかし確実にその生気を奪われ、死への門を潜ろうとしているかの様に見えた。
しかしながら、彼は苦しそうな表情一つせず、むしろ嬉しそうですら
あった。彼は決して一人では無かったからである。
「待ってろよ!シリュウ!もうすぐ俺たちの夢が完成するぞ。」
「アマンダ!グレイグ!漸く俺にもその時が来たようだ。」
「心配するな!俺たちの想いはシオンの奴が必ずや、受け継いでくれるであろう。」
「もうすぐだ!もうすぐ出来上がる!俺たちの最高傑作が!」
「俺はもう自分でも覚えて無いくらいの年を重ねてしまった。最早我等が夢は叶うまいと思っていたが、最期の最期で神様が奇跡を起こしてくれた!」
それらはディレクだけで無く鍛冶族全員の総意であったかもしれない。実際ディレクの生命力があと少しでも足りなかったら、刀と弓を完成させる前に生き絶えていただろう。そう考えれば彼が奇跡と思うのも当然と言えた。
やがてディレクの生命力が尽きかけた刻、ついに至極の逸品が完成した。
「漸く出来た!我等が結晶が!」
それは美しくもまた儚い程に青白い表情をした逸品であると言えたであろう。
「銘は蒼竜双刀とでも名付けるか。」
光沢の表情を浮かべ、刀を鞘に納めながら、
「シオンを呼ばねばならんな。」
と呟いた。
奇しくも同じ頃シオンも又自らの鍛錬に終止符を打とうとしていた。
次話でいよいよ序章も終了となります。投稿
はまた一週間後です。
よろしくお願いします。




