その序に加えて
初めまして。
この度小説家になろうで勝手にデビューさせ
て頂きます。杉野雄と申します。この作品は
異世界ファンタジー物好きの私が書いた、自
己満足度100°%の作品です。なるべく週一の
ぺースで投稿するので、よろしくお願いしま
す。
嘗て大陸中にその名を轟かせた不死鳥騎士団。何処の国にも属さず支配を受けず、唯弱気人々に対する支配と抑圧から、彼らを解放する自由な剣として自らを律し、その類稀なる力を行使してきた。
その不死鳥騎士団が力を貸した相手は決して民衆だけとは限らなかった。廷臣、重臣に裏切られ、暗殺されそうになった王族や帝族を助け、王位或いは帝位に就かせたり、国王や皇帝に妬まれて謀殺されそうになった忠臣や重臣を助け、然るべき王族や帝族に王位、帝位を継がせたりした事は、決して珍しい事では無かった。
唯、それは飽くまで民衆目線にたった考え方だった。民衆が生活に喘ぎ不当に搾取されていた時に、その原因が何処にあるのかを突き止め、それがその時々の権力者であった場合、その元を断つ手段として高貴なる者の命が助けられたのである。
そして、そんな不死鳥騎士団の団員らを律した、信念或いは矜持は常人を超越する程凄まじい物であったという。(己が剣を抜きし刻は、人を斬り殺す刻か、人に斬り殺される刻のみ。)つまり剣を抜く時は自分自身の生死を賭けろと言う訳である。
生半可な心での殺しを決して許さず、それを犯した者は厳罰を以って処せられたという。その為かくの如き愚挙を犯す不心得者を出さぬ為に、団員の獲得は厳正に行なわれ、どれほど台所事情が苦しかろうと一切の妥協を許さなかったそうだ。
この団自体や団員自身が自他共に律してきた飽くなき信念こそが、不死鳥騎士団三千年の歴史を支えたと言っても過言では無いだろう。
さてこの不死鳥騎士団を創設した人間は《双刀のシオン》と言う、一人の剣士であったと言われている。曖昧な表現になってしまうのは、余りに古い時代の為《始祖帝アルフレッド》同様、真面な資料に乏しい為である。一次資料は無く彼を扱っている資料は僅かに2典のみ、当時の吟遊詩人達が語り伝え、後に編纂された【創生双刀伝】と、不死鳥騎士団がその歴史を時代毎に綴った【不死の年代記】だけである。
しかも【創生双刀伝】はその内容が余りに講談染みていて、信憑性に欠け、【不死の年代記】は信憑性は高いのだが、描写されているのが僅かに『創世記1572年蒼乃月、東国より罷りしシオンなる剣士、ファレスタの地にて不死鳥騎士団を旗揚げす。』
だけである。その為古代史家の間では《双刀のシオン》を架空の人物とする説が圧倒的多いのである。
だが私はそうは思わない。確かに【創生双刀伝】は突拍子もない話ばかりである。空を飛ぶ事が出来たとか、水中を歩く事が出来たとか。一夜に千人の人を殺したとか、余りに荒唐無稽に過ぎる話ばかりである。だが、一方で【不死の年代記】は簡素で簡潔であり、当時と現在を決して美化する事なく客観的に捉えていて信頼性が高いのである。私はこの相対する2典の対比にこそ歴史的事実があると考えている。
そこで私は次の仮説を立てた。《双刀のシオン》は実在した。彼は恐らくきわめて無私無欲な人間だったはずである。そうでなければ、不死鳥騎士団のような弱き人々の為に闘うような組織を作る筈が無いからである。
彼が生きていた時代のヴェールデン大陸は混沌としていた。山賊が蔓延り、各国の王室の権威は失墜し、領主は領民を顧みず搾取し他領との戦に明け暮れ、領民は税を納められず、娘を身売りするような例は枚挙に暇がなかった。
彼はそんな惨状を見て義憤に駆られ、剣をとったに違いない。恐らく彼には最初から不死鳥騎士団を旗揚げしよう等という気持ちは無かった様に思う。
それは恐らく偶然だったのであろう。あるいは偶然という名の必然か、兎に角彼が各地で弱き人々の為に剣を振るっている内に、同じ様な思いを持っている人が集まってきて、何時の間にか不死鳥騎士団を旗揚げする様になったと言うのが、事実に近いのではないかと考える。
もちろん上記の仮説になんら実証出来る文献は無い。だが、私はこの辺りがより真相に近いのでは無いかと考えている。今後、この仮説を基に実証活動をしていくつもりだが、非常に難しいと言わざるを得ないであろう。今のところ参考文献は無いに等しいのだから、しかし、諦めるつもりはない。今後新たな文献が世に出て来る可能性は十分にある。それを見つける為の努力なら私は決して惜しみはしないであろう。
最後に不死鳥騎士団に伝わる誓いの言葉を紹介しよう。これは不死鳥騎士団に入団する際に新入団員が必ず言った言葉だそうだ。
我等不死鳥騎士団は常に自己の鍛錬と研鑽に努めその飽くなき探究心を自他共に役立てる為に日々を費やす
誓いの言葉は唯一に非ず
真実は其処には無く
唯事実のみが存在する
双刀佩く不死鳥の旗に誓い我等不死の騎士は唯あるがままを受け入れ其処に事実を見出し自らの枷と為す。
此の世に許せざる事は無く
自らの意思によって悪を成し
自らの意思によって自らを滅ぼす
歴史探検家バートランド・ディーン署
「不死の軌跡」より抜粋
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