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全人類に絶望を! 第一回人類絶望会議 軍略編

注意1:中二的ルビがありますので、ルビが表示される環境でごらんください。

注意2:ノリで生きてます。

「第一回人類絶望かいぎ! 開催します!

 いえーどんどんぱふぱふ!」

「ぱふぱふー」


 長い歴史を持つ神秘の国、ニャーパン。

 本土の更に東方に所在する、ローゼンブルグ伯国の片田舎で、人類を絶望のどん底に叩きいれる、重大な会議が開催されようとしていた。


「司会はこのわたくし、自称最強魔王がお送りします」

「自称なのですか?」

「むむ! 質疑ある場合は、所属を名乗りながら挙手してください!」

「そうでした! まおー陸軍極東制圧師団第63機甲兵隊所属のミコであります!

 位階は機甲兵団副長付少尉級従卒(メイド)、特技はお茶くみです!

 スキル【(淹れたての)(お茶を熱さのあまり)(こぼして目の前の)(相手にぶちまける)】レベル2を習得しています!」

レベル2(Zwei)!?

 魔族や亜人が、どれほど努力してもスキルレベルは4か3にしか届かぬというのに……。

 通常であれば発言を許しませんが、非常時です、質疑を述べよミコ!」


 自称最強魔王とやらの物々しい発言を受け、ミコはかつてないほど猫尻尾と猫耳をぴーんと伸ばす。


「ありがとうです、まおー様!

 ぶしつけな疑問ですが、なぜ自称なのでしょうか。まおー様は自他共に認める、この世界最強の厄災であったと思うです。

 歴代の魔王職においても、まおー様の功績は、開けたての猫缶のごとく輝いておられますです!

「むむ。なるほど、普段であればそれは正しい。いや、正しかった。

 今となっては、そのような評価は恥辱(ちじょく)に過ぎません。恥らうべき過去であり、忌々しい呪いであり、暗黒微笑的中二思想であり、洗い立ての尻尾でしかないのです」


 自称最強魔王は、窓のはるか遠くに浮かぶ入道雲に視線を移し、思い出すように語った。


「我々は……いえ、わたくしは、ですね。

 人類に敗退しました。完膚なきまで叩きのめされ、あらゆる手段はことごとく打ちのめされ、自負を粉みじんに砕かれました。

 わたくしは、人類を食料としか思っていませんでした。目の前の猫缶のごとき食料を、どうやれば美味しくいただけるかしか考えていませんでした。もてあそばれた猫缶が、ふちで指を切り裂くことに、思い至りませんでした……」

「まおー様……」

「良いのです。

 人類は我々にとっての食料。恐怖心を得るための家畜。いかに害さずに恐怖心(ミルク)を頂くかは考えていても、屠殺(Spiel)だなど、だれも考えが及ぶわけがなかったのです!

 最強魔王を名乗るのであれば! 人類(Essen)を、対等の相手として見据えるべきであった!

 ……だからこその戒めなのです。お分かりになりましたか?」

「そこまでの……覚悟をお持ちでしたのですね。わかりました!

 この不肖ミコ、どこまでもまおー様について行きます!」


 自称最強魔王の独白に感極まったミコは、猫耳と猫尻尾をふるふると震わせた。


「さて、では書記ミコ。

 本日の議題です、黒板に書いてください」

「はーい」


 ミコは部屋の一角から、小さな黒板を引っ張りだす。


「えとえと、日直:まおー様、と。掃除当番:ミコ、と。出席者:まおー様、ミコ、の二人、です。

 魔族ふっこう会議の第……じゃないや、第一回……人類ぜつぼう……会議、です!」

「魔族復興会議は二人で話し合っても結局大した結論も出ませんでしたからね、それを踏まえての絶望かいぎです。

 ああミコ、そこは【絶望かいぎ】、絶望が漢字で会議はひらがなです。びみょーなニュアンスですが訂正お願いしますね」


 似たようなことを今まで何回も繰り返していたようだ。


「そもそもよく考えたら、別に魔族とか復興させる必要などありませんし」

「まおー様、もうちょっとがんばりましょうよう!」

「いいのですミコ。マナー()の行き届いた上位魔族ほど、食事で遊ぶことは出来ないのです。たとい復興を果たしたとしても、今の人類相手には何も出来ないだけでしょうから。

 と、言うわけで、今まで封印してきたわたくしのスキルの一つを使用し、人類に絶望を与えようと思います!」

「封印されたスキル……ですかっ!」

「ミコ、あなたはこの世界以外にも、無数の世界があることを知っていますか?

 このスキルは異世界の力を召還し、使役する! わたくしですら制御できないほどの、凶悪なスキルなのです!」


 かつて最強の魔王の名を継いだ者が、自ら封印したというスキルに、ミコは身構える。猫耳をぺたりとお辞儀させ、尻尾を逆立てるほどの畏怖を以ったのであった。


「スキル【言霊(誰かが呟いた妄想を)召還(啓示として得る)】……レベルゼロ(Null)

「……!!」

「ふふふ、言葉にならないようですね……ですが、わたくしのスキルは、あなたの内心の驚愕(びっくりおもちゃ)ぶりを切実に訴えていますよ」

「な、な、なんですとう……!」

「わたくしが(たわむ)れに覗いたある世界では、あらゆる人間が恐ろしい陰謀を妄想しておりました。

 その世界では彼らの思想を統括し有効活用する体制が取られています。網、と呼ばれるそれらには、過去につぶやかれたあらゆる言霊(妄想)が収められているようです。

 アカシャかまたはアガスティアか、そのような物なのでしょう。その世界にアクセスし、この世界の人間を絶望させる手段を得る……それが、今回の目的です!」

「恐ろしい、なんて恐ろしいのです!」


 あまりの恐怖に、猫耳をぞわぞわと震わせるミコに、自称最強魔王は優しく語り掛ける。


「安心しなさい、ミコ。必要なのは、人類の恐怖であり、人類の絶望です。

 異世界の根源たる英知に触れるとしても、わたくし達が畏怖(びっくりおもちゃ)を感じるような内容は採用しません。そうですね、たとえば……」

「た、たとえば……?」

「ふむ。こういうのはどうでしょう。

 いくつか読み上げますので、記録してください」


 猫耳を張り詰めながら、恐る恐る書き終えたミコを眺め、自称最強魔王は。


「では、第一回人類絶望かいぎの結果を受け、絶望を実行する!」


 堂々と宣言した。


 **** **** ****


日直

・まおー様


掃除当番

・ミコ


出席者

・まおー様

・ミコ   の二人


第一回人類絶望かいぎ

・まおー様のスキル【言霊召還】を使うです


結果

・ケモノミミ怖い

・ネコミミに囲まれたらどうしよう、死ねる

・ネコっ娘、萌エー

まおー様は犬耳です。

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