悪魔の暴走。@4
「ナガレ♪ ナガレ♪ 早く♪ 早くなの♪」
「了解。ちょっと待て、もうすぐだから」
さて、何故にナガレ事、自分と由香里が二人で遊園地を楽しんでいるのかというと……犬塚をその場の怒り(ノリ)で置いていた。以上。
つまり今いるのは男女二人で遊園地。
……アレ!? これって夢にまでみたデートか!?
由香里の方を、ふと見る。
こちらに気が付いたのか笑顔になる。
どうやら、由香里はそんなこと微塵も感じてなさそうだ。
自分を兄のようにしか見てないんだよね。実際、これが……。
「~~♪♪」
てか、由香里はテンション高いな!? そんなに遊園地好きだったかな?
まぁ、楽しんでくれてなによりだね。
んじゃ、自分も楽しむとしますか!!
「ナガレ~遅いなの~」
と、少し膨れっ面ながらも怒ってはいなさそうだ。良かった。
「ごめん、ごめん。これ買ってきてたんだ。はい、これは由香里の分」
と、先程買ってきたチュロス2本のうち1本を由香里に渡す。
「ん!? ああ、ありがとうなの♪ 嬉しいなの♪」
一瞬驚いた顔をされたが、次には凄い嬉しそうに笑顔を振りまいていた。ちょっと癒されます。
全くもって先程の高速回転乗り物によってSAN値はピンチだったけど、少し元気になれる気がする。
由香里の少しづつチュロスを小さくかじって食べる姿は、まるでリスのようだ。
ほっぺ一杯にほうばってくれれば更に似合いそうだ。
そして由香里は幸せそうに食べている。
……自分の分もあげようかな?
「そういえば、次は何に乗るつもりだ!?」
「ん~、乗り物系はもういっかな~なの。そして、次はアレなの!!」
歩きながら聞いてみて、その答えとして由香里が指を指した先。
アトラクション名【ホラーランド】
まぁ、簡単にいえば幽霊屋敷。
外見は古びた洋館っぽく、至る所に血痕の跡が……。
そして、中から先客たちのリアル悲鳴が聞こえる。
しかも注意書きに、心臓に弱き人は立ち去るべし。
……自分の足は震えまくり。行きたくありません。
しかし、由香里はそんなことお構いなしに、自分の腕を引っ張り屋敷の中へ。
泣きたいな……。今、物凄く。
◇◆◇◆◇◆◇◆
――そして、屋敷内で
「ぎぃにゃあああぁ~~!!」
「なの~~~~♪♪」
「フシャ~~~~!!」
「なの♪ なの~~♪♪」
由香里様は、どうやらご機嫌のようで何よりですが……。
自分は余裕なのあるはずもなく、猫のような叫び声をあげながら、由香里の腕を引っ張り、ひたすら出口へと走る。
後ろを振り向くと危険生物が一匹。
「フシャ~~~~!!」
何故かアトラクション外のものがいる。
しかも、凶暴な魔界の悪魔の内の一つ、河童。
主食はキュウリではなく、骨だそうだ。
しかも、一番に人骨を好む……つまり……。
――全力で逃げろ!!
◇◆◇◆◇◆◇◆
そして死に物狂いで、お化け屋敷から脱出。
河童は、出口から出ることは無かったが、出口付近で、こちらがまた来るのを待つように見ている。
誰が食われにいくものか。
しかし、必死に走ったのだが、河童が早いのなんので、焦りました。お掛けで弱い精神すり減らし、瀕死ですよ、こっちは。
「はぁ、はぁ、あはは~。 ナガレったら、大袈裟なの~~」
ここに命の危険があったことにすら、気付かないのが1名。
思わず小さな溜め息が漏れる。
そして、そういえば、やけに由香里が疲れているように見えるが、やはり女の子何だよな。全力走りを付き合わせたし、そりゃあ疲れるよね。
抱っこ、もしくはおんぶしながら走れば良かったかな?
う~ん、いや難しいかな? 少し真剣に考えてみる。
これからはランニング始めてみようかな!? 続かないだろうけど。
「ナガレ、ちょっと飲み物買ってくるけど、ナガレは何が良いなの?」
「ん!? いや、自分は……」「遠慮は駄目なの」
「はい……」
ジュース代を自分の財布からだそうとしたら手で制止させられた。
「さっきのお礼なの。おごりなの」
どうやら、スタバのコーヒーとチュロスの事だろう。
とりあえず了解した。少し気が引けるのもあるけど。
由香里に何を言っても無駄だろう。経験則からくるものだ。
そこのベンチに座って待ってるよと由香里に伝えて、自分は近くのベンチで休む。
久しぶりに自分自身とても楽しんでる気がする。
正直、まだ興奮してる。河童のせいではないよ。
少し風に揺られる。
春の風は、やはり心地がよい。
ふふふ……。自然と一人、笑みを浮かべる。
これだけでも十分時間は潰せる。
…………。
あれ? う~ん、由香里はまだ帰ってきてないか。仕方ない、心配だし、迎えに行くか。
……あれ? 近くのタピオカ屋にもドリンク売り場にも、自販機にも由香里が居ない。
戻ってみても居ない……ベンチの下にも、ゴミ箱にも、何処にも居ない……。
あれから、連絡もしているが一向に繋がらない。
由香里の身に何かがあった。
そんな不安が自分を駆り立てる。
――由香里!!
どうか杞憂であってくれと望む。
そして、杞憂でなければ……。
俺はすぐにでも 壊 れ よ う。