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「ほら、あまり固くなるな」

「あ、だめなの。もう少しゆっくり……」

「そんな事いってたら、うまく入らないだろう」

「でもそんな勢いつけたら」

「ほらほら、力をぬいて」

「ああ、もう、許して」

 穂乃が必死に守っているところへ、九頭竜が強引にねじ込もうとしている。

 二人はゲームセンターで、アイスホッケーに夢中だった。

 綺麗に攻撃と防御を同時にする九頭竜に対して、穂乃は防戦一方だ。

 結果当然のように、九頭竜が勝った。

「次はあれだ」

「ええ、恥ずかしいよ」

 九頭竜が指さしたのは、最新のダンスゲームだ。

「大丈夫大丈夫。それに、画面の通りに動くだけだから簡単だって」

「う、うん」

 とりあえずプレイしてみる穂乃。

 スコアは低いが、なんとか形にはなっていた。

「うまいっ。うますぎる。ブラボー」

 九頭竜は拍手喝采だ。

 それにより、必要以上に周りの目を集めていた。

 プレイが終わり、筐体から離れてしゃがみこむ穂乃。

「うう、だから恥ずかしいって言ったのに。もう見ないで、許して」

「ご、ごめんごめん。穂乃があまりにいい動きだったからさ。つい」

「うう」

「ほら、あそこにアイスあるぞ。食うか?」

「食べる」

 食べ物に弱い穂乃は、あっさり食いつき、立ち上がった。

 自販機でアイスを買う。

「美味しいの」

「身体を動かした後のアイスはいいもんだろう」

「うん」

 次に、クレーンゲーム。

「あれがいいな」

「あのたこ焼きのぬいぐるみか。よーし」

 パンチングマシン。

「どおおおらああ」

「わっ凄い」

 魔力供給の影響で、あっさりランキングに載ってしまった。

 他のゲームもいろいろと遊び、適当なところで、外へ出る。

「そろそろ昼飯だな。あそこにするか」

 適当なファミレスで飯を食う。

 穂乃は九頭竜よりも、沢山食べていた。

 いままで、よほど食べ物に困ったことがあったのだろう。

 細い体によく入るなあと思う九頭竜だった。

「美味いか? それは良かった。知ってるか? 人って、食べる姿が一番セクシーらしいぞ」

「えっ、そうなの。私せくしー?」

「ああ、せくしーだ。もうめろめろだ」

「そ、そんなに見ないで。さっき言ったことは取り消すから、許して」

 目を手でかくし、恥ずかしそうにする穂乃だった。

 それから、服屋に向かう。

 その途中、それは起きた。

「大丈夫ですか。おばあさん」

「いたた、足をくじいたみたいだわ」

 九頭竜達の目の前で、大きめの荷物をもった老人が転んだ。

 痛そうに足を抑えている。

「良かったら、送りましょうか?」

「いいのかい? 悪いねえ」

「いえいえ。穂乃、荷物持ってくれないか? 俺はこの人をおぶるから」

「わかったの」

「家はこの先よ」

 そうして、おばあさんの言うとおりに、道を進む。

 意外と遠かった。

 もう街のはずれに近い。

 そこに、大きい洋館があった。

 3階建てで、横にも広い。

「え? ここなんですか?」

「ええ。さ、どうぞ中へ」

 九頭竜は洋館を見上げる。

 その大きさに戸惑いつつ、玄関から中に入った。

 三階まで吹き抜けになっていた。

 おばあさんを部屋の椅子に座らせる。

「最近の若い人も、良い人はいるんだねえ。おーい」

 そう言うと、家政婦のような初老の女性が来た。

 おばあさんの指示で、茶菓子と紅茶を持ってくる。

「さ、どうぞ。お食べ。お礼にしては些細ですけれど」

「いえいえ、いただきます」

「いただくの。うん、美味しい」

 モリモリ食べる穂乃。

 九頭竜もつまむ。

「お嬢さん、可愛らしいわね。私の孫も、それくらいの年頃だわ。最近この街、なんだか騒がしいから、心配なのだけど。あなたたちも気をつけてね」

「そうですね。何かと」

 騒ぎのいくつかに関わってるとは、言えない。

 そのまま少しの間、洋館で談笑して休憩していると、異変がおきた。

 九頭竜と穂乃の身体がしびれ、重くなる。

 猛烈な眠気まできて、瞼が落ちそうだ。

「な、なにが」

 そのまま、意識が落ちる。

 最後に見えたのは、ぼうっとした、人形のような表情のおばあさんだった。

 平和な時間は幕を閉じる。


 九頭竜と穂乃は、三階の部屋の床に寝かされていた。

 手も軽く縛られている。

 そこに、ロングヘアでサイドを三つ編みにした少女が現れた。

 緑色の、柔らかそうな服。手には、ハートマークのついたスティック。

 魔法少女だ。

「随分あっさりつかまったなあ。私が直接会ってたら、バレバレだっただろうけど、ま、ただの人間を使えばこんなもんかな」

 二人をみながら、独り言をいう少女。

「街で偶然みつけたのがラッキーだったなあ。修行中の子、なかなかいないんだもの」

 特に、穂乃を見る。

 匂いがかげそうなくらい、近づく。

 どころか、しっかりと嗅いだようで、恍惚な表情の少女。

「うーんいい匂い。さあて、スティック探すかなあ。見たところ変身してないから、ちょこっと探すの大変そうだな」

 手をわきわきさせる。

 まず、靴を脱がした。

 変身する前のスティックは鍵くらいの小ささだ。

 何処に隠してあってもおかしくない。

 足の先を指でいじり、靴下の中に無いことを確認。

 スカートのポケットの中を確かめた後、めくって、中も見た。

「わっ。凄い下着」

 ボディチェックのように胴を触り、胸、腋、上着のポケット。

「うふふ、柔らかい」

 口の中や、髪の中まで探した。

「あっれー。ないなあ」

 首をかしげ、考える少女。

「こっちの人間のほうかな」

 おざなりに、九頭竜の体も探す。

「うーん。ないなあ。しょうがない、本人に聞くか。起きるまで遊んでよーっと」

 少女はそう言って、出ていく。

 先ほどの初老の女性が、部屋に入ってきて、監視を始めた。

 

 夜、21時を過ぎた頃。

 九頭竜の妹は、夕方頃からずっと家にいた。

 しかし、九頭竜と穂乃は帰ってこない。

 携帯にも何の連絡もない。

 いつもはだいたい陽が暮れたら、一度は家に戻るのに。

 時間がたつにつれ、気が焦ってくる。

 一時間前からどんどん膨れ上がる不安に、耐え切れなくなり、羽加美に相談した。

 思いの外声が必死になっていたのか、羽加美の対応はかなり親切だった。

 すぐに来るという。

 少しして、呼び鈴がなった。

「やっほー。大丈夫?」

「あの、九頭竜君が帰らないってほんと?」

 羽加美と司だ。

「あ、羽加美さん。それに、司君」

「来る途中、もしかしたらいるかなって思って、司の家に寄ったんだけど、あいついなかったから、一緒に来たよ」

 部屋に移動しながら、話す。

「うん、お兄ちゃん。まだ帰ってないんだ。こんなこと、あんまりなくて」

「落ち着いて。ね? 何処行ったか聞いてない?」

「ううん。朝は私が先にでたから」

「そっか」

 羽加美は考える。

 空から探すべきだろうか、それとも。

「あ、穂乃ちゃんの服がかけてあったよ。たぶん、私の服を着ていったんだと思う」

「服を買いに行ったのかな」

 司が妹の話に乗る。

「ねえ、九頭竜って携帯もってるよね。GPS機能ある?」

「あっ、そういえば」

 さっそく携帯を取りに行き、試す。

「でた。なんだか遠いところにいるみたい。そうか。GPS、全然気づかなかった」

「ただの思いつきだよ。見せて」

 そう言って、場所を見る。

 そして、ちらりと司を見る。

 軽く頷く司。どうやら、同じ考えのようだ。

「いい、よく聞いて。私たちはこれからそこに行くけど、利衣子ちゃんは、ここで待っててほしいの。入れ違いになるかもしれないし、危ないかもしれないから」

「ええ、私も行きたい」

「駄目、もう夜も遅いし。ちょっと迎えにいくだけだから、ね?」

 真剣な表情だ。

「う、うん。でも、会えたらすぐ電話してね」

「勿論」

 笑顔でそう言った。

 そして、羽加美と司は玄関へ向かう。

 しかしふと、穂乃の服が気になった。

 なんとなく強い予感がしたのだ。

 その服をまさぐる羽加美。

「なんで、こんな大事なもの忘れてるのよ」

 そこには小さなスティックがあった。


 夜の洋館。

 ところどころランプが怪しく光っている。

 好き放題遊んできた緑色の少女は、やっと戻ってきた。

 まだ九頭竜達は寝ている。

 また穂乃にいたずらしようかと、よだれを垂らしながら少女が近づいた時、二人は目を覚ました。

 ちょうど薬が切れたようだ。

 もちろんそれを狙って部屋に来たはずだが、

「ちっ」

 何故か不服そうだった。

「ん、あ、ここはどこだ」

「んふう、もう食べられな……くないからもっともってきて」

「穂乃。そうだ、俺たち、お菓子を食べて、それから。おい、穂乃、起きろ」

「ふあい」

「どーもお二人さん。おめざめかなあ?」

「お前、その格好、魔法少女か。ってことは、狙いは穂乃か?」

「あ、うあ、許して」

 九頭竜の後ろに隠れようとする穂乃。

 しかし、手が縛られてうまく動けない。

「お前、あのおばあさんに何をした」

「普通に魔法をつかっただけさあ。ワード『支配』によってね」

「人を操って、やりたい放題してるわけだ」

 若干声のトーンが下がる九頭竜。

「そうさあ。異世界といっても、随分と住みやすいよ。ここは。それより、スティックを出してくれないかなあ」

「え? あっ」

 言われて、穂乃は家に忘れてきたことを今更ながら思い出す。

「渡すわけ無いだろう。自分で探すんだな」

 かぶせるように言う九頭竜の言い草に、少女は穂乃の反応には気づいていない。

「やだなあ自分でするなんて。何事も人にさせるのが一番さあ。君が探してよ、もしくは、この子に在り処を吐かせてよ」

 そう言って、九頭竜に近づく。

 膝をつき、女豹のように、じわじわ顔を接近させる。

「何をする気だ」

「キスさあ。男となんてしたくないけど、支配するには仕方がない。本当は、そっちの可愛い子を支配したいところだけど、魔法少女は操れないんだ」

「なんだキスか。もう体験済みだ」

「そうかあ。きっと私のほうが旨いよ。何度もしてるからなあ」

「ふん」

 最後まで余裕たっぷりな九頭竜は、唇を奪われた。

 あまり見たことがない光景に、穂乃は目を離せない。

 濃厚で、じっくりとしていて、焦らない、そんなキスだった。

 やっと少女は口を離すが、九頭竜に変化はない。

「あれ?」

「あいつのほうが万倍美味いな。比較してみるもんだ」

「な、なんで。あ、まさか魔力供給? それで、魔法少女と同じように……」

「もういいから、縄をとけ」

「何を言ってるのよお。まだ状況は、何も変わってないのに」

「今開放したら、そのスティック、折らないでおいてやるよ」

「な、な、もういい。こいつを黙らせてっ」

 少女が怒ったように言うと、中年女性が4人ほど部屋に入ってきた。

 その時、ピンポンと、平凡なチャイムが鳴った。

 どうやら誰か来たようだ。

「取引不成立だな」

 そう言って、にやりとする九頭竜。

 すぐに二人の口を塞ぎ、九頭竜達が助けたおばあさんに対応させる。


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