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 映画館近くの集合場所に着く。

 噴水があり広場になっていて、同じように待ち合わせしている者が多い。

 羽加美は既に来ていた。

 赤いチェックのスカートに白いシャツ、さらに薄ピンクの上着だ。髪留めは今日は注射器の形をしたもの。

 九頭竜達に顔を向け、驚く。

「な、なんで司がいるのよ」

 驚いた原因は、九頭竜の隣にいた司のようだ。またもや恥ずかしいのか変身済みで、ピンクの目立つ服がひと目を買っている。

 羽加美のそんな様子に、司は恐縮してしまう。

「いやさっき来る途中で会ったんだが。何をそんな驚いているんだ」

「だ、だって」

「映画は皆で見たほうが面白いぞ。いろんな意見が聞けるからな。それに、司もちょっとは怖いものに慣れておいたほうがいいはずだ。今後の戦いのためにもな。それには今日のホラーはうってつけだ」

「う、うん」

 怖いのか若干引きつつも、司は頷く。

「怖いもの? ホラー? あんた何言ってんのよ」

「違うのか? 最近話題の、『怪奇図書館二十四時間営業』を見るんじゃないのか?」

「な、なにそれ。どこの世界で話題になってるのよ。もう、ちょっと来なさい」

 そう言って、羽加美は二人を引き連れて映画館に向かった。

 色々な映画の看板写真が飾られている。

「私が言ったのはこれよ、これ」

 びしっと羽加美が指し示したのは、一つの映画の写真だ。なにやら格好いい男子と可愛い女子が顔を近付けているもの。タイトルは、

「あいしまいたい……? なんだラヴか」

「ウに点々をつけるな」

 あてが外れ呆れたように言う九頭竜に、羽加美はツッコミを入れた。やや顔が赤い。

「でもまあ、これが見たかったんだろ?」

「う、うん」

 そこにどんな思惑があるのかは、九頭竜は知らない。

「だったら見ようじゃないか。不思議なものは出てこなさそうだけど、こういうのも後学のためだよな。しっかり見とけよ司。これがこの世界の恋愛だ。もしかしたら、目録に載るかもな」

「わかった。ちゃんと見るね」

 そうして三人はチケットを買い、中に入っていく。司の格好を見て周りの人が、「あれ、コスプレ?」などと話している。

 そんな声に紛れて、

「どうしてこうなっちゃったのよ」

 という羽加美の小さいつぶやきも流れていった。


 映画の内容は、とある姉妹の妹が、突然男の子になってしまったというもの。

 しかも、その妹だか弟だかは姉に恋をしてしまう。

 しかし、幾多の苦難やイベントや世間の荒波を乗り越え、ついに姉妹は結ばれる。

 映画の上映が終わった時、司はほろりと一粒涙を流していた。

 スタッフロールも流れ終え、三人は映画館を出た。

「愛姉妹たい、なかなかいい映画だったな。うん」

 九頭竜はしきりに頷いている。

「僕、感動しちゃった」

 司はそう言って、目元をぬぐう。

「こういうのが、この世界の恋愛なんだね」

 先ほどの九頭竜の言葉をうけての感想である。

「ち、違うのよ? もっと普通の男女が普通にくっつくのが普通で。ああもう、友達から純愛物だって聞いてたのに。こんな変則的なのが話題になってるなんて、大丈夫なのかしら、この世界」

「でも面白かったろ?」

「確かに面白かったけども……」

 頭の中がもやもやとしているかのように、羽加美は唸ってしまう。

「大丈夫か? あ、もしかして」

「え……?」

 まさか思惑がばれたのかと、羽加美は不安そうな表情を浮かべる。

「あの男子役の人、お前の好きな俳優だったのか? だからあんなラブシーンはつらかったとか」

「違うわよ、バカ」

 羽加美のボディブローが見事に九頭竜に刺さった。

「うぐっ。なにをする」

「ふざけたこというからでしょーが」

「はっは、蹴りじゃなくぱんちでくるとはな」

 魔力強化のおかげか、九頭竜はあっさり立ち直った。

「もう、この後どうする?」

「じゃあ飯でも行くか。適当に歩いてどこにするか決めよう」

「そうね、そうしましょ」


 某メイドカフェ。

 璃子はここで働いている。

 璃子は普段、特に不都合もないので変身した状態で行動している。それは秋夜も同じだ。

 汚れず能力もあがり、便利なのだ。

 そうしていたら、スカウトされ、メイドカフェでバイトを始めた。

 年齢や住所に問題があったため、スカウトしておきながら断られそうになったのだが、頼み込んでなんとか雇ってもらえた。

 根無し草で弟もいることを伝えたら、女性の店長にうちにこないかと誘われもしたが、それは悪いので丁重に断った。

 その代わり、お給料を週に一度に分けてもらうことにした。銀行口座もないので、そのほうがなにかと都合がいい。

 これも修行のうちだと精を出すが、弟の方はまだ働いていない。

 そうそう雇ってもらえる場所がないのも勿論だが、他の魔法使い見習いを探したり、食べ物を探したり、能力の修行や練習などもしていない。

 端的に言えば、遊びほうけている。

「璃子ちゃん、これ、あちらのお客さんにね」

「はい」

 店長からオムライスを受け取り、運んでいく。この店の人気メニューだ。

 ビルの一角、こじんまりとした店にしては、お客がよく来る。

 店員もそれなりにいて、皆同じメイド服を着ているが、璃子はこっちの方がかわいいわ、と店長に言われて、そのままの服。

 体格、服装ともに、なんだかとても浮いている気がする。しかしそんな事は言ってられない。この世界で生きるためには、お金が必要なのだ。

 来たばかりの頃は随分と失敗を繰り返した。

「こちら、萌えライスになります」

 料理をお客に出すがすぐには去れない。お客は期待を込めた目で璃子を見ている。

「萌え萌えぱわー溢れるくらい注いであげる」

 璃子が普段通りの落ち着いたトーンで、腕をふりふりと決められた動きをしつつ言う。

 この店のサービスの一環である。勿論本当は可愛らしく言わなければいけないのだが、

「うおークーデレきたー」

 この通り、お客に受けている。事を成し遂げて、璃子は別のお客の方へと動いた。

 手を上げているお客の元へいき、注文をとる。

「はい、萌えパフェと、萌えティーですね」

 そして厨房に行こうと振り返ったところで、お客がお尻に手を伸ばした。

 瞬間、璃子は見えない速度で振り返り、右手をお客の頭に。

 その手にはいつの間にか銃が握られていて、つきつけている。

「ひっ」

 ニキビ面のお客がその銃を見て怯えたような声をあげた。

「そ、それ本物?」

「試します?」

 撃鉄を引く。その音が耳元で聞こえたことだろう。

「や、やめ」

「こら、璃子」

 店長の声で、理子はとっさに銃を消した。

「何してるの、お客さんを怯えさせちゃ駄目でしょ」

「すみません」

 幸い、影になって銃自体は見えていなかったようだ。出現させたり消したり出来る、ワードで生まれた銃はこういう時便利である。

 お客はそのまま、パフェを食べておとなしく帰っていった。

(ふう、今日も忙しいです)

 こんなことがありながらも尚、璃子は集客率の向上に一役買っている。

 本人はまだ気づいていないのだが。

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