シーン四[予兆]
シーン四-一[予兆]
溶明
山城家の屋敷。
成仁が上座、沙都が下座に座り、膳を並べて、夕食を食べている。
幸は、部屋の隅に控えており一緒に食事はとっていない。
沙都 ・・・父上。
成仁 ・・・・・・
沙都 父上?
幸 沙都さま、お食事中は、静かにしなければ。
沙都 ・・・はい。
沙都、急いで食事を終える。
父は少し先に食べ終えている。
沙都 父上。
成仁 ・・・なんだ。
沙都 昼間の・・・私のお友達のことなのですが・・・
成仁 聞くことはない。
沙都 父上・・・?
成仁 沙都、明日からは、庭に出ることも禁ずる。
沙都 え・・・?
幸 旦那さま?
成仁 わかったな。
沙都 父上?
成仁 返事をなさい。
沙都 私・・・いやです。沙都は、庭に出とうございます。
成仁 父の命令が聞けぬのか。
沙都 しかし、父上・・・
成仁 (さえぎって)わかったな。
沙都 ・・・・・・(頷こうとしない)
成仁 今のお前は、妖怪に謀られているだけだ。
沙都 そんなことはありませぬ。
成仁 お前のためを思って言っているのだ。
沙都 ならば、庭に出させてくださいまし。
成仁 だから・・・
沙都 私は、外の世界が見とうございます。
成仁 ・・・!
沙都 私は、父上の言いつけを守って、山城の地より外へは出たことがありませぬ。しかし・・・本当は、もっと広い世界を知りたいのでございます。
幸 沙都さま・・・
沙都 なのに・・・父上は、私から庭までも奪ってしまわれるのですか?
成仁 ・・・・・・
沙都 父上・・・
成仁 これが、お前のためなのだ。
成仁、立ち上がり部屋を去る。
沙都 父上・・・
幸、何かに気付き外に目を向ける。
幸 ・・・・・・沙都さま。
沙都 幸・・・、どうかしましたか?
幸 奥の間に行きましょう。
沙都 なぜ?
幸 ・・・・・・
沙都 幸まで、私を外から遠ざけようとするのですか?
幸 いいえ。そうではありませぬ。
沙都 ならばなぜ・・・
幸 ただ、その・・・胸騒ぎがするのです・・・
沙都 幸・・・?
沙都、幸を心配そうにうかがう。
幸、立ち上がり膳を持つ。
幸 さあ、沙都さま。ご一緒に。
沙都 ・・・・・・わかりました。
幸は部屋を出て、屋敷の奥へ行き、沙都もそれに続く。
シーン四‐二[計画開始]
照明暗くなる
秋伯、舞台中央へくる。視線はどこか遠くをいている。
秋伯を微かに照らす。
秋伯 あれが、山城の屋敷。・・・あそこで、春季は・・・。(雑念を払うように首を振る)
皆の者、よく聞け。これより山城に夜襲をかける。各自の役割を全うし、必ず今夜中に片を付けられるよう協力してくれ。・・・行くぞ。
秋伯を照らしていた光だけ消える。
薄暗い中、秋伯は下手(屋敷と反対側)へはける。
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