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シーン二[おともだち]

シーン二-一[ハルと沙都]


          桜の木の下にハルがいる

          明転

          上手袖より沙都が駆けてくる


沙都   ハルー。


          ハル、沙都に気付く


ハル   また来たのか。

沙都   はい。

ハル   毎日毎日・・・飽きないのか?

沙都   いいえ。全然。ハルといると楽しいですから。

ハル   そうか・・・

沙都   ハル、今日は、お花の勉強をしたのですよ。

ハル   へぇ。

沙都   以前より、上手になった、と。幸にもほめられました。

ハル   よかったな。

沙都   しかし、どれほど頑張っても、やはりこの桜の美しさにはかないませぬ。

ハル   そうか。

沙都   そうなのです。

ハル   ・・・・・・

沙都   ハルは・・・私といても、楽しくはありませぬか?

ハル   ・・・そんなことはない。

沙都   本当ですか?

ハル   嘘をつく理由はない。

沙都   そうですね。


          屋敷に、幸がやってくる。


幸    沙都さま、沙都さま。(屋敷内や庭を見まわしながら)

ハル   誰か呼んでいるぞ。

沙都   そうですね。

ハル   行かなくて良いのか?

沙都   私は、まだハルと話していたいです。

ハル   なぜ。

沙都   いけませぬか?

ハル   いや・・・。

沙都   なら、もっとお話ししましょう。



シーン二-二[父の心配]


          屋敷。幸はなおも沙都を探している。


幸    沙都さま、沙都さま。


          屋敷の奥(上手)から成仁が来る。


幸    沙都さま

成仁   また、沙都がおらぬのか。

幸    旦那さま・・・。はい、おられませぬ。

成仁   そうか。まさか、城の外に出ているのではあるまいな。

幸    それは大丈夫でございます。

成仁   以前、森に迷い込んだ時は肝を冷やしたからな。

幸    家中の者総出で探し回ったと聞いております。

成仁   ・・・・・・そうか、まだお前が入る前だったか。

幸    はい。・・・夜の山は危のうございますからね。

成仁   まったく、あの時は何も起こらずに済んだからよかったが・・・

幸    それ以来、言いつけは守っているようですよ。新緑のころからでしたか、お庭で遊んでいらっしゃる事も増えたようではありますが。

成仁   そうか。まぁ、庭くらいならば仕方あるまい。しかし・・・一人でか。

幸    わかりませぬ。沙都さまは、お友達ができたと大層喜んでいらっしゃるのですが、私はまだ見たことがありませぬゆえ…

成仁   友達?

幸    はい。もしかしたら、人ではなく動物かもわかりませぬが・・・

成仁   動物相手に、一人遊びか。

幸    決まったわけではありませぬが。

成仁   この山城(やまじろ)は、集落からは離れておる。農民が迷い込むということもあるまい。

幸    そうでございますか。

成仁   そもそも、見張りの者が入れるわけ無かろう。

幸    お仕えする者にも、近しい年の者はいませんしね・・・

成仁   ・・・・・・して、なぜ探しておった?

幸    まもなく食事のお時間になりますゆえ。

成仁   そうか。…ならば、わしももらおう。

幸    それでは、お部屋にお持ちするよう、伝えておきます。

成仁   頼んだぞ。


          成仁、屋敷の奥(上手)へはける

          幸はそれを見送り、また庭を向く


幸    沙都さま、沙都さま。



シーン二-三[おともだち]


          桜の木の下、二人は話していた


ハル   また、呼んでいるぞ。

沙都   まったく、諦めれば良いものを・・・

ハル   ・・・そうはいかないだろう。

幸    沙都さま、昼餉の時間にございます。聞こえていましたら、お屋敷にお戻りくださいませ。


          幸、屋敷の奥(上手)へはける


ハル   食事らしいぞ。

沙都   そういえば、少しおなかが空いてきたかもしれませぬ。

ハル   なら、行ってきたらどうだ?

沙都   食事が済みましたら、また話してくださいますか?

ハル   また来るつもりか。

沙都   待っていては下さりませぬか。

ハル   ・・・勝手にしろ。

沙都   ありがとうございます。


          沙都、屋敷へ戻り、畳に座る。

          ハルは、ボーっとしていたり、歩き回ったりしている。


幸    失礼いたします。


          幸が屋敷の部屋に入ってくる


幸    沙都さま。お戻りになられましたか。

沙都   遊びたくとも、お腹は空きますもの。仕方ありませぬ。

幸    本当に、沙都さまは外におられるのが好きなのですね。

沙都   はい。


          幸、話しながら沙都の食事をのせた膳を沙都の前に置く。


幸    今日も、「お友達」といらしたのですか。

沙都   はい。

幸    遊ぶのがいけないとは申しませんが、声をおかけしましたら、答えてくださいませ。お父上も心配されておりましたよ。

沙都   父上が?

幸    はい。

沙都   ・・・気をつけます。

幸    そうしてくださいまし。それでは、お食事をどうぞ。

沙都   ありがとうございます。


          沙都は食事を始める。


幸    それでは、私は失礼いたします。

沙都   どこへ?

幸    沙都さま、お食事は静かに素早く行うものです。

沙都   はい。しかし…今日は、部屋にはいないのですか?いつもは部屋に控えているではありませんか。

幸    今日は、用事がありますので。

沙都   そうですか。

幸    では、失礼いたします。


          幸、部屋を出て屋敷の奥(上手)へ。

          沙都、一人黙々と食事を再開する。



シーン二-四[桜海の男]


          照明暗くなる。

          舞台中央、もしくは他の空いたスペースに秋伯が立つ。

          秋伯のみ微かに照らす。


秋伯   くれは


          姿が見えない場所に、もしくは頭から布をかぶったくれはが横にくる。


くれは  はい。

秋伯   あれの証拠はつかめたか。

くれは  はい。秀の国と交わした密書はすでにつかんでおります。

秋伯   ・・・では、春季の行方は?

くれは  やはり、あの屋敷を訪れたことしか確認は取れませぬ。

秋伯   そうか。御苦労。調査を続けてくれ。

くれは  御意のままに。


          くれは、静かにはける。


秋伯   春季・・・一体、何があったのだ・・・


          秋伯、去る。



.

※明転⇒暗転の逆?パッと明るくなる

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