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マジックスクール  作者:
2・ティパール学園
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2-6 ティパールの伝統

「まぁお前らも知ってる通り、ティパール大戦は首都ティパールを中心に起こり、そこにティパール学院が設立された訳だが」


 完全に教師モードに入ってるコフィンは、まるで教科書を読み聞かせるかのように語っていく。


 ティパール大戦はコフィンの言う通り、首都ティパールを中心として巻き起こった。


 東西南北、各地の魔法賛成派達が、魔法反対派の温床であった中央に攻め込んだのである。


 戦火に見舞われたティパール、その中でも特に被害が甚大であった場所が現在のティパール学院が存在する地である。


 魔法賛成派、反対派の中で被害にあった者達に、大戦の惨劇を忘れさせないよう。また魔法使いの功績を称え、魔法を世に広めるためとして作られたのがティパール学院なのである。


「ティパールが設立した当初は、やはりまだ魔法への反感の感情は完全に消え去ってなかったんだ」


「そりゃ一回の戦いの勝ち負け位じゃ、人間の価値観は変わらないですよね」


「その通り」


 シンの指摘に満足そうに頷いたコフィンは、言葉を続ける。


「そうゆうわけで、設立直後にはティパール学院に対して、魔法反対派のゲリラから幾度と無く襲撃を受けた。その度に当時の教師人達は対抗したのだが」


「戦う術を確立していない生徒達を守りながら戦うのは、骨が折れる、と」


 納得のいったリョウが口を挟む。


「そんな所だそうだ。つまりそのゲリラに対抗するために、ある程度魔法を制御できるであろう三年生からは、学内での武器、魔法の使用許可が下りたというわけだ。まぁあくまでも状況に応じて、だがな」


 コフィンは一息つき、背もたれに大きく体重を乗せながら話し続ける。


「っと、ここまでがうちの伝統の背景なんだが、この背景自体も百年単位で昔の話。今となっちゃ三年以上生徒達が気にくわない下級生達に対して影で行使してるのが大半ってのが現状だ」


「それってひどい・・・先生達はそれを見過ごしてるの?」


「いやそんなことは無いぞアン。現に今日だってお父さんがお前を助けに出てったじゃないか。そもそも学内で訓練場以外のような、魔法を日常的に使わないような場所で魔法を使おうもんなら、私達教師陣にはすぐ分かる」


「魔動力素が乱れるからだな」


 リョウが冷静に、解答を述べる。


「魔動力素の乱れなんて、そんなに広い範囲で感じ取れるようなものなの?」


初等魔法学院では教わっていない内容に、アンは首をかしげる。


「訓練、というか理論をどこまで理解するか、だけどな。まぁ、詳しい内容は長くなるし授業で聞くことだ。さて今までの話の中で、現在私達を悩ませている要素があるのだが、わかるか?シン」


「っえ?んー、魔法の使用はすぐに感知できても、武器の使用に対しての感知ができないってことですか?」


「その通り。まぁこの点に関しては学内に存在するのは三年生までであるし、その程度の力量であれば相手に対して戦闘をする、という意思で武器を抜いた場合、無意識の内に漏れ出してしまう魔動力が多い。ということや、さすがに襲われた生徒が反撃のため魔法を使うんじゃないか?といったなんとも微妙な理由で現在まで見過ごされている」


「それってどうなんだ?なんとも曖昧と言うか・・・」


 困惑する表情のリョウに、コフィンも困ったように頭を掻く。


「なんといっても、学園長の方針でな。うちの生徒達は理性を持って、また助け合いの精神を持っているから問題になるような被害は出ないと信じておられる。まぁ実際現在に至るまで死傷事件は起きていないし、下級生に理不尽に暴力を振るうものはごく一部の生徒。それに発覚した際の罰則は厳重なものだ。今日お前達に絡んできた生徒達も、今後の武器使用や魔法使用には大きな制限がかかって来るだろう」


「つまり、教師陣達にも気付かれない程、漏れ出す魔動力を制御できる人間が一瞬で生徒を襲撃した場合は感知ができない、と」


「リョウ。お前はいつもそういう痛いところばかりを突いてくるよな。その点は私も危惧しているが、大多数の教師達が、うちを敵に回すという大それた行動を起こすような輩は居ないと信じて疑わない。現にここ100年学内に対してまでの襲撃は無かったわけだしな。なんにしろ制度の改革以前に、状況にそぐわない力を振るう者達を私達が取り締まうことが重要なわけだ」


 コフィンが言い終わると同時に、昼休み終了の予鈴がなる。


「っと、もうこんな時間か。ほらお前ら自分達の教室に行くんだ」


「っへ?俺達昼飯食べてないんですけど・・・」


 シンが、腹を抱えながらコフィンに請う。


「っま、せいぜい上級生達を恨め。どうせこの後のホームルームはすぐ終わる。我慢しろ。アンもすまないが我慢できるか?」


「まぁ私は朝ごはん食べてるから何とかなると思うけど・・・」


「俺もそれくらい大丈夫だ」


 朝食をしっかり食べてきたアンはもちろん。普段からあまり食事への欲求が薄いリョウは、すんなりとコフィンに従う。


「えっ!?俺今日遅刻しそうで朝飯抜きなんですよ!?もう我慢とか無理ですって!!」


「そうか。それなら、上級生以外に今朝の時分も恨む対象に加えとくんだな」


「そんな殺生なああああ」


 コフィンのなんとも冷たい対応に、育ち盛りの健全な男子生徒の悲鳴が、校舎に響き渡った。







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