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マジックスクール  作者:
2・ティパール学園
5/7

2-4 上級生と雷撃

「リョウ!」


 中庭に駆けつけたリョウを発見したアンが声を上げる。


 アンを囲むのは数人の男子生徒。校章が青い糸で刺繍されている事から見て三年生の先輩だろう。


「なんだお前」


 お決まりのセリフとともに、リーダー格の男子生徒がこちらを向く。金髪の目つきの悪い生徒だ。アンの片手を握り上げつつリョウに顔を向ける。


「お前こそなんなんだ?一年生の女生徒に寄ってたかって」


 これまたお約束の台詞で返答をするリョウ。


 下級生に生意気な口を利かれた三年生徒達は、明らかに怒気を孕んでいる様子だ。


「俺達はな、新入生のお嬢ちゃんに学校の案内をしてあげようとしてるとこなの。邪魔しないでくれるかな」


 リーダー格の男がへらへらと笑いながら言うと、取り巻きの男達もそれに続いて意地の悪い笑みを顔に浮かべる。


「アンの手を離せよ」


 リョウは上級生の目を睨みながらじりじりと近寄っていく。


「おっおいリョウ!」


 シンが声を上げる。


 それもそのはず、ティパール学院の校舎に存在する生徒は一から三年生のみ、四、五年生は各々が望む進路に順じて国内の各組織に配属されている。


 そのため校内に残された生徒のうち三年生は、下級生に対する威厳の誇示、及び治安維持の名目のため、各々の武器の携帯、状況に応じた魔法の発動が許可されているのだ。


 今リョウと相対している生徒も、素行こそ悪いものの紛れも無い三年生。各々の武器である刀剣や槍も腰や背中から覗いているし、奥に居る男子生徒は魔法発動の準備をしているように見える。


「あーらら、こりゃ風紀の乱れだわ。こうゆう時三年生は君達下級生にこーんなこともできるんだよ?」


 リーダー格の男はアンの手を乱暴に離すと、腰に下げた両刃の剣をゆっくり抜き、リョウに見せ付けるように中段に構える。


「知らなかったじゃすまねぇんだよぉ!」


「リョウ!!」


 大きく振りかぶり、リョウの肩目掛けてその剣を振り下ろそうとするリーダー格の生徒に対して、アンが悲鳴じみた声を上げる。


「雷よ、我に集いて盾を成せ。彼の者の刃を防ぎたまえ」


 リョウの肩に刃が喰い込むその直前、男の声とともにバチッと静電気の音を何倍にも大きくしたような音が中庭に響き渡った。


「なんだぁ!?」


 リーダー格の男が振り下ろした刃はリョウの目の前で止まっていた。


 正確にはリョウの目の前に現れた、雷の盾によって止められていた。


「三年のルイ=シンクだな。不適切な場による武器の使用、これはどれだけの厳罰に処せられるか知らなかったか?」


「コッココ、コフィン!?」


 リーダー格の男は振り返った先に立っていた銀髪の教師を見て、ようやく自体を把握したようだった。


 アンに良く似た淡く青色が混じった銀髪を後ろに撫で付け、白に緑色のラインが入ったローブを身に纏った男。


 学内でも随一の雷魔法使い。不正を瞬時に見つけ、正してくる速度を揶揄し生徒達から『雷撃』と呼ばれる教師。


 アンの実父、コフィン=ティアスがそこには立っていた。


「うちで大切に預かってるクレセッド家のご子息に、アルフォル家のご子息、そしてよくもまぁ私の娘に手を出したもんだ」


 コフィンの告げる言葉とともに、彼の体から漏れ出した魔動力素達が、辺りで静電気のような音を鳴らし続ける。


「えっこれはその・・・お嬢さんにですね!学校の案内をしようと思っていましてですね!」


 先まで横柄な態度を取っていた三年生徒達も、学内随一の実力者を前に縮こまって弁明をしようと必死だ。


「その大切なお嬢さんを案内するのに、何で武器と魔法が必要なんだ?」


「そっそれは・・・」


 痛いとこを疲れた上級生達は皆が言葉に詰まってしまう。


「もういい、お前達には後日処遇を伝える。速やかに各自の寮に戻れ」


「はっ・・・はい・・・」


 コフィンの指示に三年生徒達は、しぶしぶと各々の寮に向かって去っていった。


「えーさてアン、リョウ。ついでにシン。生徒指導室についてきなさい」


 コフィンは冷静にそう告げると、踵を返して校舎へと向かって行った。

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