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その4

 押し込められたバスルームは先ほどの部屋よりも大きかった。

 

 体を洗いながら考える。ここはどこなんだ。どうやら誘拐?されたらしいけど。相手は私をまだ巫女だと思って誘拐したようね。巫女の力なんてもってないのに。どうしよう。巫女じゃないってばれたら殺されるのかなぁ。痛いのは嫌なんですけど。両手の傷を撫でる。痛かったもんなぁ。あの痛みですぐに気絶しなかった自分が憎い。殺されるとなったらなるべく痛くしないでって頼んでみよう。誘拐だとして私を誘拐してメリットのある人って誰だろ?うーん城の中の人間関係とか把握してなかったしさっぱり見当もつかないわ。ほんと自分逆ハーレムで浮かれすぎてたわよねー。自虐に笑いながら湯船につかった。このときまさか自分が外国にいるなんて一ミリも思いつかなかった。


「わたくしはルークと申します」


 風呂からあがった私をさっきの青年は直立不動の姿勢で待ち構えていた。


「では説明に移らせてもらいます。ここは貴女様のいらっしゃった国からみて東に位置する帝国ノースランドでございます。こたびは無礼な招待になってしまったことをお詫びいたします」


「はぁ」


 気の抜けた返事しかでてこない。


「貴女様をお迎えいたしました理由を単刀直入に申しますと少しばかり血を分けていただきたいのです」


「は!?」


「貴女様の血は血清になります。それもとても優秀な」


 さらりと青年は言う。血清ってあれでしょ血から抗体物質をつくるっていう。


「いやいやいや!だからといってほいほいと血を渡せるか!っていうかいきなりさらって血をよこせって?訳がわからないわ!」


「我が皇帝の命を救っていただきたいのです」


 あいもかわらず青年は無表情で言い切った。皇帝ですって?


「では、よい返事を期待しております」


 青年は部屋を出て行った。いったいなんなわけ?血をよこせって?それで皇帝を助けたいですって?ふざけるなといいたいどころだけど断ったところで無理やり取られるだけだろうしここはおとなしく血を渡して皇帝とやらに恩を売っといたほうがいいかもしれない。


 それにしても私はあの東の帝国にいるのか。東の帝国といえば戦で負けなしで大陸中を制覇するであろうとまで言われていたがある日突然他国への侵攻をやめたと本にはかかれていた国だ。主に農業が盛んでこの国の食材は大陸中の食を支えているといっていいほどだったはず。そして軍には‘呪われ子’といわれる人を採用している国家として有名だ。通称‘呪われ子’と呼ばれる彼らは異端児とされ、生まれるときに自身の母親を食いながら生まれてくる子供のことをいう。そして彼らは総じて身体能力が高い。だがその異端さからかこの国以外では生まれるとすぐに殺してしまうらしい。しかしこの国では彼らを軍で採用し教育していることから周囲の国々からは忌み嫌われている。そのうえそれが戦で負けなしの理由でもあるから余計に他国はこの国を嫌っている。けれど食料に関してはこの国を頼らざるおえないからさらに他国との軋轢を生じる一方なのだという。


「そんな国家間の問題なんて私にはどうでもいいけど」


 本音をいえばもう王族関係のひとと関係を持つことは嫌だ。またそれで今度は両足なんかが飛んだ日には私はどうにかなってしまいそうだから。


 逃走しようかとおもうがそれは無謀すぎる。巫女の力を使える状態だったならいくらでも逃げられたであろうがその力は今はない。ベットの上でうなっていたらいつの間にか眠ってしまった。



++++++++++++++++



 あ、また夢だとわかった。



「私、ミッシェルって言うの。今日から貴女のお世話することになったのよ。よろしくね?」


 なんて女言葉が似合わないんだというのが第一印象だった。でもやさしい目に私は思わず泣いてしまった。とにかくあの冷たい視線に私はまいっていたのだ。ミッシェルの目はここにいてもいいのだといってくれるようでどうにもうれしかった。


「あらあら、泣いちゃったわね」


 仕方ない子ねと背中をさすってくれる大きな手。さらに泣きじゃくる私をずっとあやしてくれた。ゆっくりゆっくりと背中をさする手に安堵してその日は眠ってしまったんだっけ。



 私がさらわれてミッシェル心配してくれてるかな?

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