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その1


異世界トリップとかよく聞く話で


その世界では平凡な女の子もなんやかんやで気に入られ最後はイケメンとハッピーエンド。




 かくゆう私もそんなトリッパー!もう毎日毎日逆ハーレム生活よ!!もうっ!私は一人しかいないんだからね!昨日は危うく陛下に押し倒されちゃって貞操の危機!!どーしようっな状況だったし、一昨日は敵国の王子が私に一目ぼれをしたとかで求婚にやってきちゃうし!ほんと困っちゃう。




「バカだわ。バカまるだしだわ!!」


 過去の自分の日記を読み返しながら私は悶絶した。なんて恥ずかしいんだ!!どうしてこんなものが残っているのか不思議だ。


「姫ったらかわいいわね」


 私は悶絶もののこの日記を目の前のおかま野郎に投げつける。


「うるさい!どうしてこんなもんをあんたがもってるわけ!」


「姫ったら短気ねぇー。せっかく思い出の品を私が大切に管理してあげてたっていうのにぃー」


 ぷんぷん(壮絶に気持ち悪い)といいながら投げられた日記を拾うと懐にしまう目の前のオカマ。名前はミッシェルというらしいが偽名であることは間違いない。幅の広い肩に、短く刈り上げられたこげ茶色の髪と女言葉ははっきり言って不気味だ。そしてミッシェルは私の世話係である。主に三食を運んできてくれる。どうやら今日の昼ごはんはパンと少しの牛乳であった。え?モテモテ主人公の食事にしてはおかしいって?そりゃ、私はもうモテモテ(笑)の状態じゃなくなったからね。今も王宮中の地下のようなじめっとしたところで毎日を過ごしている。ようは軟禁状態。でも少ないとはいえ三食食べられるし多少衛生面は悪いけれどそこまで暮らしにくくもないので別に不満はない。


「陛下ったら今日から北の国へ攻め入るらしいわよ」


「ふぅーん」


 軟禁状態にあるので外の世界の情報についてはミッシェルをあてにするしかない。もう外の世界とかどうでもいいのだけれどね。それでも私の唯一のしゃべり相手はこのミッシェルしかいないので流しながらも相づちは忘れない。


「あいかわらずねー。あなたが原因となった戦でしょうに」


「知らないわよ、そんなこと」


 今から五年前私は16歳でこの世界にトリップした。そりゃあさっきの日記にも書いてたように私はウハウハな生活を送っていた。巫女さま巫女さまとあがめられ周りのイケメンどもはみんな私に惚れた。それがきっかけで殺傷事件も起きてしまったほどだ。そんななか私が選んだのはこの国の王だった。いかにも白馬に乗った王子さまで私はすぐに恋に落ちた。それからの生活は本当に素晴らしいものだった。周りのイケメンの王に向ける嫉妬のまなざしに酔いしれる日々に王との甘い生活。本当に本当に幸せだった。


「ねぇミッシェル。私って不幸なのかな?」


「さあ?どうかしらね?私にはわからないわよ」


 他人の幸、不幸なんてものわかるわけないじゃない。ミッシェルは笑った。


「そうよねぇ」


 私は左手をかざした。


「あ、そうそう。この前街におりたときこんなものみつけてきたのよ~」


 ミッシェルはどこにもっていたのか紙袋をひっぱり出してきた。中からはなにやらかぐわしい香りがする。こ、これはもしかして!


「もう!顔が近いわよ!そんなに子犬のような目をしなくてもあげるから」


 紙袋の中には思ったとおりクッキーがぎっしりと詰まっていた。


「あ!こら全部をあげるとはいってないわよ!私のぶんも入ってるんだからね!!」




 もふもふとクッキーをかじりながら思う。私はどうやら幸せ者である




「ああ、おいしかったぁー」


「朝からならんだのに。朝から、それも雪が降る中でならんでようやく買ったのに……」


 めそめそとなくミッシェルをよそに読書タイムに入ることにした。この軟禁生活で私はすっかり活字中毒になってしまった。元の世界では読書感想文を書くために本を読むのが嫌で友人に代読してもらったのはいい思い出である。読む本はてんでばらばらで今日は『あなたも今日から有能士官』を読んでいる。内容は……主に家事のことばかりである。おいしいだしのとり方とか洗濯する際の効率の良い洗い方だとか。有能士官とは大変そうである。


 家事紹介ばかりが書かれていたが意外にもおもしろくつい夢中に読んでたらあっというまに夕方になっていた。気づいた時には今度は夕食を持ったミッシェルが立っていたのだ。夕食はやはりミネストローネのみのようだ。

私の夕食は決まってミネストローネのみだった。どうして毎日ミネストローネなのかミッシェルに文句を言ったこともあったがそれがこの国の風習だと教えられた。まあ日本人も味噌汁を毎日飲むしね。


「うげぇ、またピーマン入ってるじゃない」


「お子様なんだから!だからいつまでたっても出るところがでてこないのよ」


「なによ!お子様体系のなにが悪いってんのよ!!」


「べっつにぃ~?よくそれで殿方たちを誘惑できたわよねぇ~」


「だってあれは……。もういいわよ、食べればいいんでしょ?食べればさ!」


 お利口さんねーと頭をなでてくるこの人をひっぱたいてもいいだろうか。どうせ三倍返しで嫌味攻撃が降ってくるけどさ。


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