第8話 ユグドラシルの首都・アスガルド
偶然通りかかった馬車に乗せてもらってから、数日くらい経った。
俺は馬車からなるリズムを聞きながらパンと燻製した肉をかじる。
うん、馬車から鳴るリズムを聞きながら、パンと燻製した肉を食べるのは中々良いな。
俺はそう思いながら朝食を済ませる。
すると徐々に人の数が多くなり、俺は馬車を動かしている商人に質問する。
「なぁ、なんか人の数が徐々に増えてないか?」
「あぁ、それはユグドラシルにある虹之防壁が近くなったな」
俺の質問に商人はそう答えるが、俺は商人が言う言葉に首を傾げる。
ビフレストというのは北欧神話に出てくる地上とアースガルズをつなげる虹の橋だが、この世界にあるのはあまり分からない。
そもそも、俺みたいな異世界に来た人間を知っているのだろうか?
一人で旅しているときに寄った村に異世界に来た人間について聞いたが、あまり知らなさそうにしていた。
多分あまり異世界に来た人間がおらず、いたとしても両手で数えるぐらいだろう。
そう思っていると商人は何かが入った袋を俺に渡してくる。
俺は商人から渡された袋を受け取り、何が入っているのだろうか中身を確認する。
渡された袋に入っていたのは、ざっと十五枚の銀貨であった。
どうして俺に銀貨十五枚が入った袋を渡したのかわからないが、俺は首を傾げながら聞く。
「えっと、何で銀貨を俺にくれるんだ?」
「あぁ、それは門税の銀貨三枚と冒険者試験に参加するための銀貨四枚を払うために渡したんだよ」
俺はそれを聞いて頷く。
なるほど、確か元居た世界には入国税と呼ばれるものがあったが、門税と呼ばれる税金を支払う必要があるんだな。
俺はそう思いながら銀貨が入った袋を閉じ、俺は頭を下げてお礼を言う。
「ココまで連れてきた上に銀貨を与えてありがとうございます!」
「いえいえ、途中で話してくれたあいすやとんかつというものを聞かせてもらったお礼です」
俺のお礼に商人はそう言いながら頭を掻く。
しかし数日でユグドラシルに着けたのは商人の馬車に乗せてもらえたから、短く着く事が出来た。
俺はありがたく思いながら馬車を降り、虹之防壁に向かって並ぶ列に入る。
ざっと距離は中々長く、自分の番になるのは十分くらい経ちそうだ。
このまま並んでも暇だし、冒険者試験で行われそうな試験内容を予想していくか。
そう思いながら考える。
よくあるのは〈ギルドから指定されたクエストをクリア〉・〈指定の魔物を一定数討伐する〉・〈ダンジョンを最深部に到達する〉の三つだが、予想外の内容かもしれないからな。
そう思っていると俺の番となり、俺は虹之防壁の門番と向き合って言う。
「これ、門税の銀貨三枚です」
「そうか、それとお前冒険者志望だろう? 最近各国のお上様がとんでもない事になっているぞ?」
門番は銀貨三枚を受け取りながら不穏な事を言う。
うん? 各国のお上様がとんでもない事になっているって、いったいどういう意味で言ったのだろうか?
俺は疑問を感じるが後ろから「さっさと早くしろ」とじっと睨まれ、背中がむずがゆくなってしまう。
ウッ、なんか視線を感じてむずかゆいな。
俺はそう思いながら虹之防壁の門を通る。
虹之防壁の門を通ると、視界に移ったのはにぎやかに笑う人達だった。
とんがり耳がある者やケモミミがある者、鋭い牙がある者や龍の翼を持つ者、俺と同じ人間が分け隔てなく生きて笑っていた。
なんて言うか、人種差別がなさそうな雰囲気があるな。
元居た世界はいじめだのネットによる暴言だのなんだのあったから、目の前に移る景色に呆気にとられる。
もしも元居た世界がユグドラシルと同じだったら、いじめや暴言の自殺者がなくなりそうだな。
そう思いながら歩み、近くにいた老人に声をかける。
「あの、ココって確かユグドラシルでしたよね? この国にある冒険者ギルドはどこにあるんですか?」
俺の質問に老人は指をさして説明する。
「冒険者ギルドならしばらく真っ直ぐ行って、武器屋のところで右に曲がっていけば着きますぞ」
「ありがとうございます。それと各国の王様が大変なことって聞きましたが、何があったのですか?」
俺はさっき門番が言った言葉の意味について老人に聞くと、老人はあごに手を当てて言う。
「ウ~ム、それについてはあまり知らなくて……」
「そうですか、ありがとうございます」
俺は老人の言葉を聞いて頭を下げながらお礼を言い、冒険者ギルドに向かって歩む。
う~ん、さっき門番が言った言葉の意味はどういう意味で言ったのだろうか?
何かしら騒ぎになっていると思うが、具体的にどういうのか未知数なんだよなぁ。
さっき門番が言った言葉の意味を考えながら歩くと、少し大きめな建物が映り出す。
それは紫色の屋根で出来た三階建ての建物で、ドアは西部劇にあるこげ茶のスイングドア、壁はミルク色で出来ていた。
ココが冒険者ギルドか……ゲームだとクエストやイベントを受ける場所だけど、この世界だと依頼や報酬を受け取る場所だろうな。
そう思いながらスイングドアの前で立ち止まる。
ウゥ、ゲームだと鼻歌を歌いながら入っていたけど、現実になるとなんか緊張するな……。
俺は緊張を感じてしまうが、ココは勢いよく行こう。
そう思いながらスイングドアを蹴り開けて叫ぶ。
「た、たのもー!」
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